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魔物が溢れる世界で、ぼっち亜人に出会いました。  作者: 黒猫
第零章 プロローグ
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第二話 放浪の旅をする人生は嫌か? 

 成人の朝、目覚めると父、アルから唐突に


「今日から、一人で旅をしろ。」


 と、告げられた。


 俺たち人間が一人で旅をする、それはリスクばかりが高すぎる。


 この世界には魔法があり、生きていくうえで欠かせないものとなっている。

 魔法には自然の魔力を活用する四大属性、地・水・火・風があり、

 それに対応する四人の神々がおり、いずれかの神から加護を受けるのが

 ()()()()()

 加護を受けた者は亜人と呼ばれる。

 夢に出てきた俺のエルフの母、フィーネもそうだ。

 では、現在あまりの事態に困惑している青年、フライハイトと父、アルはというと

 …何の加護も無い、ただの人間である。神様この野郎!


 亜人は受けた加護で得意な魔法属性というものが発現し、

 同じ神の加護を受けた者同士でコミュニティを作る。


 加護を受けられなかった俺たち人間はどこのコミュニティにも所属せず

(所属出来ないと言った方が正しいが)旅をしているわけだ。

 で、一人で旅をするリスクに戻るわけだが…単純な話だ。人間は弱いのである。


 自然の魔力が溢れるこの世界では、動物が魔力を吸収することで魔物となる。

 亜人が一人で倒せるであろう魔物を、人間は二、三人で倒す。

 それくらいの力量差があるのだ。

 まあ、亜人も加護を受けていない属性の魔法の適正が著しく低い。

 しかし、加護を受けた属性に関してはそれを補って余りある効果があるのだ。


 とにかく、人間の一人旅では魔物と遭遇しても倒せないというのが常識。


「意味が分からない。二人で旅をするからこそ今まで生きて来れただろ?

 わざわざ一人旅するなんて馬鹿げている!」


 それを聞いた父は何故か、とても嬉しそうだ。


「俺が、お前の母さんと出会う前、何人で旅をしていたと思う?」

「え?母さんが居ないんだから、一人に決まって…って っ!?」


 なんて危ないことしてんだ、この人!!


「あぁ。分かるぞ、その気持ち!息子とこの感覚を共有出来て

 父さん、幸せだ。」


 …うん?うまく、話が飲み込めないんだが。


「俺もお前の歳の頃、母さん…お前にとってはばあちゃんだな。

 ばあちゃんに一人旅の刑を言い渡されて、馬鹿じゃねーかと思ったもんだ。

 それ以来、自分に子供が出来て成人したら、言ってやろうと思ってた!」


 とても充実した、良い笑顔をしながら父が言う。

 あぁ…これ、マジの話だ。ていうか、()()()()()って。


「心配だろうが、まあ大丈夫だろ。俺が出来たんだし。

 お前にもやらせるつもりだったから、教えられるものは教えたしな。」


 父が、指で外に出るぞと合図する。

 こ、心の準備が…。


 ◇


 異空間を出る。

 と、そこは草原である。頬に当たる風が心地よい。

 ちなみに、異空間の出入り口はというと、父のアタッシュケースだ。

 父が母に出会う前から使っていた物だと聞いたことがある。

 もっとも、その頃は母の魔法はかかっておらず、ただの鞄だっただろうが。

 そんなもん、有って無いようなもんじゃないか…すごいな、父さん。


 俺はそれを持ち上げ、父に渡そうとする。

 しかし、父は手を突き出し、それを制した。


「いや、それはお前にやるよ。必要だろ?」

「いや、元々父さんのだろ?」

「いや、良いから。」

「いや、思い入れとかあるだろ。」


 そんな感じで何か押し付け合いをしていると

 父が困ったように頭の後ろを掻きながら、


「あぁ…その、なんだ。一人旅をさせたいのは俺のわがままでよ、

 あんま不便な思いをさせっと、母さんに怒られるだろうが。

 受け取ってくれや。」

「…分かったけど。じゃあ父さんはこれからどうするのさ?」


 すると、今度は少し真剣な顔をして


「俺にも目的地がある。旅の仲間と合流すんのさ。」


 …そんな人、一人しか居ない。母のことだ。


 ◇ ◇


 母は数年前著しく体調を崩した。

 父は、エルフの森に行けば幾ばくか改善するのではと考えたが

 母は


「旅を続けて欲しい。」


 と、それはもう譲らなかった。

 しかし、母の身を案じた父は一刻も早く母をエルフの森に

 届けるため、俺と母ををアタッシュケースの異空間に入れた状態で

 鬼気迫る速さで駆け抜け、エルフの森に到達。(見ていたわけではないが)

 母への言い訳には、


()()旅を続けるか、までは約束してないだろ?」


 と、こじつけてきたらしい。

 父は口ではヘラヘラとしていたが、目が全く笑っておらず

 母の意思をギリギリ尊重した上での、苦渋の決断だったことが窺えた。


 ◇ ◇ ◇


 俺が成人して、一人旅が出来ると判断した今、

 父は母の元へ行ってやりたいのだろう。


「あぁ、それとな? なんか連絡とるときはこいつを使え。」


 そういうと父は荷物の中から何やら紙束を取り出した。


「これは、触れた者の魔力を記憶して引き寄せられる

 まあ、方位磁針のようなもんだ。一度記憶しちまうと

 他には塗り替えられん。あと、意識して魔力を送りこまなきゃ

 記憶しねえから、気づいたら自分にばっかくっつくなんてこともねえ。

 こいつに用件書いて、紙飛行機でも作りゃ目的のやつに届く。

 彼女とか出来たら連絡寄こせ。詳しく頼む。」


 真面目な顔で何てこと言うんだ…


「そうだな、五枚くらいは俺の魔力で作って…あとは必要な時に作ればいい。」


 あぁ…着々と旅支度が進んでいく…。


「な~に不安そうにしてんだ。俺たちには<知識の宝庫>と謳われたらしい

 母さんから教わった錬金術があるじゃねえか。

 お前は俺よりも母さんに似て、読書家だからもっと出来るだろうが?」


 俺、自分は父さんに似ていると思ってたんだが…。

 人が受ける印象というものはそれぞれ違うらしい。

 父は少し考えるそぶりを見せてから、言った。


「最後だ。放浪の旅をする人生は嫌か?」


「いや、そんなこと、考えたことも無いね。」


「…よく言った! そこは俺に似たな!」

「いや? 母さんに似たんだと思うよ?」

「お、お前…。父さん悲し…くもないな。

 俺なんざに似るよか、母さんに似た方が良い!…達者でな。」


 そう言い残すと、父は風の様に去っていった。


 取り残された俺は独り、


「どんだけ母さんに会いたかったんだよ…」


 と、つぶやくのだった。

どう、なるやら…。

読むに耐えるものではない、とも思うのですが

(読んでいただけるかも分かりませんが)

コメント頂けると幸いです。

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