第一話 お話聞かせて
この拙作を見つけて下さり、ありがとうございます!
初投稿です!
自分のやりたいことを伝えきる文章力は、あいにく、持ち合わせていませんが
温かい目で見て頂ければ幸いです。
夢を、見ていた。
幼い日の自分。本を読むのに夢中になり、ふと時計を見ると夜の八時半。
辺りはおそらく真っ暗だろう。
というのも、今居るこの部屋は母が自身の風の魔法と、錬金術を応用して作った
異空間であり、時計の存在がなければ、時間の経過が分からないのである。
少年、フライハイトは周囲を見渡してみる。
そびえ立つ本棚の森。
しかし、その中身はスカスカとは言わないまでも、
空白が目立っていた。別に本が少ない訳ではなく、
…平積みされた本が本棚の前に山を作っていた。
フライハイトが作った山もあるのだが、およそこの惨状(?)を作った人を
探す。
本棚の奥へしばらく進むと…いた。
ひときわ高い二つの山の谷に仰向けに寝そべり、宙に浮いた脚を
前後に揺らしながら本を読んでいる。
こちらの視線に気が付いたのか、その人…俺の母フィーネは
読んでいた本を閉じて顔を上げる。
「あれ?どうしたの、フライ…って! 嘘ぉ!? もうこんな時間じゃない!!
ごめんね!今、お布団の準備するか…ら…っへぶ!?」
予想外の時間に慌てふためいた母は両側の山を揺らして雪崩にあう。
すかさずフライハイトが本に埋まった母の救出に向かう。
「うぅ…私、お母さんなのに。情けない…」
エメラルドグリーンの瞳に少し涙を浮かべながら母がつぶやく。
綺麗なライトゴールドの長髪から覗く長い耳も申し訳なさげに萎れている。
そう、母はエルフである。
「大丈夫、おかあさん?痛くない? あ、メガネ割れなくて良かったね。」
崩れた本を整えながら母の様子を伺う。
母が読書用に使う鼻載せメガネも無事なようだ。
「大丈夫。それより、そろそろ寝ないとね。」
案外すぐに立ち直った母はフライハイトの手を取り、
ベッドがある部屋の中央に向かう。
「ねえ、おかあさん。寝る前にお話聞かせて!いいでしょう?」
「…!! あぁ、我が子がかわいすぎてつらい。」
母が何やら悶絶している。さっきの雪崩のダメージだろうか。
「じゃあ、お母さんの大好きな、神様の冒険のお話をしようか。」
「おかあさんのその話、好き!」
父を含めた三人で寝ても余裕のある大きなベッドの前に到着し、
真ん中のいつもの定位置に飛び込みながら母の話を急かす。
すると今来た方向とは逆、つまり入り口の方から声がした。
「こーら、フライ。そんな乱暴にベッドに突っ込むんじゃねえって言ったろうが。
つうか、その話好きだな二人とも。何回目だよ。」
やや粗暴な言動は父、アルである。
辺りを見渡し、散らかった部屋を見ても動じない。基本的に
ここの整理をするのは実は父であり、流石の余裕である。
父は人間であり、フライハイトも父に似て人間である。
が、母の長い耳を羨ましく思っていることは内緒だ。
「んで?フィー、その神様は何て言うんだっけ?」
と、父が口元を緩めながら母に問う。
「むぅ。その聞き方はなんかズルいですよぉ?
神様は神様なので、名前は無いんです。」
「うん。知ってた。俺は神とか信じないから特に文句言わねえけど
<名無しの神>なんて締まらねえな。
忘れたんだろ?大丈夫。そんなお前が俺は大好きだぞ?」
「サラッと文句言ってます…あと、エルフの森で<知識の宝庫>と
謳われた私が忘れるなんてないですから!それと…私も大好きです。」
仲良し夫婦である。
エルフの森…実は俺はまだそこに行ったことが無い。というのも、
父は旅をしていた道中エルフの森に立ち寄り、
母が父の旅への同行を強く望んだそうだ。
で、旅の最中に俺が生まれたらしい。現在も旅の最中である。
「茶々は無視です。
むか~し、むかし。あるところにおじいさんとおばあさんが居ました。」
◇
「テンプレ!」
しまった…。あまりに型に嵌った語り出しが衝撃的で目が覚めてしまった。
子供の頃はむしろそれが心地よかったんだろうなあ…。
フライハイトは成人の歳、15歳の誕生日の朝を迎えた。
母のおとぎ話の方は久しぶりに聞きたかったのに…もったいない。
記念すべき日なのだから、もう少し良いところまで見ていたかった。
母は今はもう…。
「おう。起きたか。」
父が俺が起きたのを見計らったように入ってきた。
「誕生日おめでとう。もう立派な成人だな。」
「うん。ありがとう。」
そして、父はなんでもないことの様に続けた。
「今日から、一人で旅をしろ。」
…どうやら、まだ夢を見ているらしい。
どう、なるやら…。
読むに耐えるものではない、とも思うのですが。
(投稿段階では、読んでいただけるかも分からず 悶々としていますw)
評価・コメントして頂けると大変うれしいです。