Study ―勉強―
今までの話に関しては、少しずつ修正していこうかなと考えてます。
あとTwitter始めました。
私の名前は【 神木 紫苑 】、どこにでもいる普通の高校生。
ある日私は、殺人犯で最低な性格だった父親を殺そうとした。その父親と同じところまで堕ちてしまった自分自身や、自分を追い込んだ世界に失望した末に、学校の屋上から投身自殺を図った。
ところが気付くと、そこは地面じゃなくて湖の中。溺れていた私は、不思議な少年【 マオ 】に助けられる、
そこからはもう大変。実は私が今いるこの世界は、私が今までいた世界とは別の世界――すなわち異世界だってことが分かってしまった。
しかも魔法とかスキルとか、意味わからない単語が出てきたと思ったら森の中からワイバーンなんて生き物が出てくるし……。
挙げ句の果てには、世界の自然に溶けていたって言う神が敵になって出現するし、実はマオはかつてこの世界を侵略した魔王の息子だって判明。
村人はみんなこぞってマオを責めた。けど私は、マオを信じたいと思ったから彼について行くことにした。村の人たちに失望したっていうのもあるけど……。
そして唐突だけど、勉強は大事だと私は思う。
私がこの世界に来る前から、不登校が問題になっていた。私のようにイジメを受けていたのは勿論、勉強が苦手だから、友達関係がうまくいかないから……色々理由があると思う。
自殺をはかった結果、この世界に来た――言ってしまえば逃げてきた私が言うのもなんだけど、仮に不登校でも本当に勉強した方がいい。小学生の頃は特に。
単純なものをとにかく片っ端から覚えるのは、子供の頃が一番いいらしい。具体的に説明できるわけではないけど、大人になってからだとそういうものを記憶する力が低下する……とかなんとか。
故に、言葉とかをとにかく覚えたいってときは幼い頃が効率がいい……らしい。
で、どうして私が今そんなことを考えているのかというと……。
「なにこれ……」
私が座っている机の前には、文字が書かれた一枚の紙が置いてある。けどそこに書いている文字は、日本語や英語、中国語などとは全く違うものだった。
……仮に似ているのが有ったとしても、私が分かるとは思えないけど。
ここムル大陸の主要言語である『ムルーム語』は、二つの記号を合わせて一つの言葉として表現するらしい。
嬉しいことに、文字の数が日本語と同じだったため、私にもなんとか理解できた。
ところがこの文字の組み合わせが……特に日本語で言うところの行を示す文字がすごく分かりにくい。全体的に丸みを帯びていて、しかも描きづらい。
「これを覚えなきゃダメなんだ……ハァ」
ため息をつきながら、私は窓から外の景色を眺める。窓の下には中世的な街が広がっていた。
今私とマオが訪れているのは、フロハ村から西に数十キロメートルほど離れた、ベノウーム王国のアイラットという街だった。
ベノウーム王国は十年ほど前、このムル大陸で結成された防衛組織『ギルド』の設立に最も貢献したらしい。
……そのギルド設立のきっかけこそ、マオの親である魔王がこの世界へ侵攻してきたかららしいんだけどね。
ギルドに登録している勇者は、ベノウーム王国を始めとしたギルド加盟国を訪れると、任務を確認する。そしてそこで依頼を受けたり、更新してランクを上げたりするみたい。
マオもギルドに登録しているらしく、今日はなにか目ぼしい任務を受けて来る。それほど目立つわけにはいかないから消極的に、けどあまりに受けなさすぎると勇者の資格を剥奪されるから適度に……がモットーらしい。
そしてマオがいない間に、私はエンチャントされていた言語のスキルを解除してもらって、なんとか頑張って勉強していた……。
♦︎
アイラットから東に数キロメートルほど離れた森の中で、マオは歩いていた。
彼が今回ギルドから受けていた任務は、森に潜む白狼の討伐。ここはグレイ・ウォーカー・サービスを始めとした、組織や商人、旅人たちがベノウーム王国へ訪れるのによく使われる経路だ。
しかしここ最近、この森では白狼が多く見られ、商人や旅人たちへ手当たり次第襲いかかっている。襲撃の森とまで呼ばれるほど、被害は日に日に大きくなっていた。
白狼は、先日マオが倒した神の一柱『ネガ・ゼファロス』はもとより、その前に倒したワイバーンよりも危険度を示すランクが低い。しかし、個々の力よりも群れでの狩りを得意とする彼らには、そのランクはあまりあてにはならないだろう。
今回は出来るだけ多くの白狼を討つのが目的だ。そのため、最低でも15匹がノルマとなっていた。
そよ風が吹いて、森の草木がカサカサと揺れる。先日戦った神が起こした暴風を思い出して、暗い気持ちになりかけたマオの耳に、風とはまた違う音がした。
ガサガサと揺れる周囲の草むらの影からただよう獣の臭いを感じ取ると、マオはわずかに姿勢を低くして身構える。
グオォォッ!
真後ろの草むらから、白狼が牙を剥きながら一匹飛び出してきた。
マオが自身目掛けて飛んでくる白狼をしゃがんで避けると、今度は左斜め前からもう一匹が飛び出す。
「よっ!」
白狼の動きは遅いわけではない、むしろ恐ろしいほど早い。しかしゼファロスの風と比べると、とても遅く感じられる。
前方に飛び込みながら二匹目を避けると、しゃがんだ体制で右手に黄色の魔力を集中させ、その右手を地面に叩きつける。
直後、眩い閃光と共に黄色の電撃が辺りへと駆け巡る。雷属性魔法【サーキット】は、地面に密着させて電撃を走らせる魔法だ。
キャインッ!
バチバチと激しい音を立てながら、周囲に潜んでいた仲間もろとも攻撃したマオは、しゃがんだまま周囲の様子を伺った。
今の一撃でこの周囲の白狼たちを倒せたのだろう。かなり魔力を込めたため、おそらく撃ち漏らしも無い。
マオはギルドへの証として提出するために、電撃で内部から焼き尽くされた白狼たちの死骸を次々と袋の中へと入れていく。
八匹ほどを回収し、最後の一匹を袋へ詰めようとした時、その個体が雌だったことに気づいた。この時期になると、白狼たちは子を産み育てる。恐らく巣に残っている子たちへ餌を与えようとしていたのだろう。
(彼女たちだって、生きていくのに必死だったんだな……)
だからといって、人間に危害を加える白狼たちを見逃すわけにも行かない。人間と魔獣の共存など、とてもでは無いが出来ないものだ。
忘れかけていた自然の厳しさを実感したマオは、雌の死骸を袋に詰めると再び歩き出す。
ここは森に入ってすぐの場所、となると奥に向かえばまだ現れるだろう。そう考えながら任務へと戻って行った……。
♦︎
あれから数時間が経った。すでに日が真上まで登っていた。机に座って紙とにらめっこしながら唸っていた私の背後でドアが開かれる。振り向くとマオがちょうど戻ってきた。
「ああ、おかえ――」
「&$¥%|*:♪☆#〜」
?????
私が面を食らったようにキョトンとしているのを見てから、マオは思い出したかのように近づく。私の喉に手を当ててしばらくすると再び口を開いた。
「ごめんごめん。すっかりエンチャントを解除してたのを忘れてたよ。」
「私も今マオが何言ってるのかさっぱり分からなかった。……まだ勉強が必要みたい。」
なんとか文字で書くだけならといった状況だった私は、今度は言葉でこれを伝えなければならないのかと改めて痛感した。
その後、私とマオは昼食をとるために、フロハ村の時と同じように外へ出て、街へと繰り出した。
次回、ファンタジーハーレム系作品でよく見られる展開があります。他と違うようなところを入れられれば良いのですが。