4-25 「決闘!アルバート 後編」
アルバートとの決闘後半です。
ーマスグレイブ帝国 マスグレイブ城近郊 平原
アルバートは服についた砂埃を払うと詠唱省略で次々と攻撃魔法を放って来る。
『エアストーム!』
『ファイアバースト!』
『アクアバースト!』
私はそれらを全て不可視の盾で防ぐ。
初めて見る魔法だけど、上級魔法フレアよりは火力が低目な所を見ると中級魔法か?
恐らく連続で魔法を撃つには中級以下で無いと無理なのだろう。
「くっ...!さっきから何なんだそのカウンタースペルは...!?
何故3属性を一つの魔法で防げるんだ!?」
アルバートは今までの冷静な表情とは打って変わって少し焦りの表情が見え隠れし出す。
そう言えば傭兵登録試験の時もシルヴィアさんにそんな事を言われたっけ...?確かそれぞれの属性の相性を考えて打ち消さないと打ち消せないとか何とか。
不可視の盾は特性上完全魔法耐性を持ってるから、魔法そのものを打ち消せるのだ。
「魔法では出来ないのか?」
私は挑発する様にアルバートに問う。
「な、何だとっ...!そ、そうか、魔法では無く、それが君の能力って訳か...。」
この戦いはただアルバートに勝てば良いと言う戦いでは無い。
マルブランシュの古代兵器を手に入れ、更に目の前でアルバートを完膚無きまでに打ち負かしたとあっては、帝国も私を無視出来無いだろう。
アルバートは魔法に対して絶対的な自信がある。
だからこそ心の拠り所としている魔法を正面から受けきり、打ち砕いてこそ、アルバートの心を折れるのだ。
それに今は都合良くギャラリーも居る。既に帝国との交渉は始まっているのだ。
「では今度はこっちからいくぞ。」
私が”フレアリング”を身に付けている左腕を目の前にかざすと、アルバートは慌てて腰のバッグから青色のポーションを取り出し飲み干す。
まさか万物の賢者アルバートとか呼ばれている人がもう魔力切れ?
まぁ元々0の私が言える事じゃ無いけど...。
『フレア!』
『フレア!』
『フレア!』
さっきのお返しとばかりに私は『フレア』を3連発でアルバートに御見舞する。
さっきまでアルバートが居た辺りに半径10m位の爆発が連続して起こり、砂煙が舞い上がり、溶岩と化した岩が真っ赤に燃え上がりながら周りに飛散する。
「ひぃぃぃ!よ、溶岩が!溶岩が降って来るぞっ!」
横手ではハイデガーが大騒ぎして走り回っていた。
「落ち着けハイデガー!アルバート殿の結界があるであろう。」
ヘンペル法務官に窘められハイデガーが走り回るのを止める。
が、その直後溶岩がアルバートの貼った結界を貫き、ハイデガーに被弾する。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁーーー!!!!熱いっ!結界がぁぁぁぁーーーー!!!!!!」
ハイデガーが転げ回りながら悲鳴をあげる。
いやいや、大袈裟な...どう見てもかすり傷でしょう...。
ってそれよりアルバートはどうなった...?
私がアルバートの居た辺りを見ると平原は大きなクレーターになっており、周りの草木が煙を上げて燃え燻っていた。
そしてその中央にはアルバートが片膝を着いていた。
先程と違い流石に無傷とはいかなかった様で、爆風で服が所々煤けていた。
「馬鹿な...有り得ない...!?上級魔法を連続詠唱だ...と...!?」
アルバートは何やらブツブツと言いながら、立ち上がり、魔法を詠唱する。
『エクスヒール!』
「少しはやる様だね?だけど君とは違って僕は回復魔法も使いこなせるから倒す事は出来ないよ。」
なおもアルバートは自信満々に言い放つ。
あ、それ私も使えるんだけどな...。それにそもそも私が回復魔法を使ってない理由は今の所一切ダメージを貰ってないから何だけど...。
でも確かにクリス姉ちゃんお墨付きのあの回復魔法は厄介だ。
魔法だとバフで軽減されて対したダメージが入らない、ならばここは...物理で殴るしか無いっ!
「そうか、ならこっちも本気を出そう。」
そう言い放ち、私はアルバートに向かって駆け出す。
そして後少しで”武具錬成”の射程に入る距離まで近付いた瞬間、アルバートの口の端が僅かに歪む。
「なっ...!」
一瞬の浮遊感と共に私の周りの足場が砕け、地面が音を出して崩れ始める。
「はっはっはっはっ!掛かったね!魔法はこう言う使い方も出来るのさ!」
アルバートが勝ち誇った様に私に言い放つ。
私は咄嗟に足元に不可視の盾を足元に展開し、地面の崩落に巻き込まれるのを回避する。
「なっ!何故空中に浮いていられる?『フライ』の魔法なのか...?
いやそれなら空中に停止するのは不可能だ...。」
どうやらアルバートでも空中に停止出来る魔法は知らないらしい。
良し、これは好都合だ...。
「そうか出来ないのか?」
私はここぞとばかりに不可視の盾を次々に足元に展開し、見えない階段を作成し、優雅に空中闊歩を見せ付ける。
「なっ!?ば、馬鹿な...!そ、そんな魔法知らない...!そ、それに...無詠唱で...!?」
あ...そう言えば忘れていたけど、詠唱する振りを忘れていた。
まぁでも良い具合ににアルバートは戸惑っている様だ。
私はそのまま見えない階段を歩き、アルバートに近付き、”武具錬成”を放つ。
『ソードオブパニッシュメント!』
神罰の剣がアルバートの足元から出現し...あれ?出現しない?
「足元から反応...。何かした様だが、無駄だったね。僕は特級魔法『ストーンウォール』に守られている。僕に近付く物や人間は僕が許可しない限り、自動で石の壁に阻まれるのさ!」
うーん、チート臭い魔法だなぁ...。
あ、そう言えばこの平原に来る前マルクスがアルバートは自分の転移能力でも暗殺出来ないって言ってたけど、コレの事かぁ。確かに下手に近くに転移したら”※いしのなかにいる※”になりかねないよね...。
「分かったら、観念して大人しく僕の第3夫人になるんだね。大丈夫沢山可愛がってあげるよ!ベッドの中でね!」
私の攻撃が通用しない事に気を良くしたのか、勝ち誇りながらとんでもない事を言い始める。
少々のダメージでは直ぐに『エクスヒール』で全回復。かといって神罰の剣は”石の壁”で弾かれる。
なら生きて捉えるならもうこれしかない。
そこで私は新しい武具錬成を起動する。
「お前はもう黙っていろ!」
『カラーオブサイレンス!』
「マルブランシュ王国編」もいよいよ次で最終回です。
感想で要望があったキャラクター紹介を入れますので次編は次々々回からです。




