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4-24 「決闘!アルバート 前編」

 ギリ間に合いました。

 いよいよアルバートと決闘です。

ーマスグレイブ帝国 マスグレイブ城近郊 平原


 私達はアルバートと決闘する為、マルクスの転移で応接室から場所を移し先に二人でアルバートが指定したマスグレイブ城近郊の平原へと来ていた。


「ジャズ...。本当にアルバートと一人で戦うのかい?」


 マルクスが不安気な表情を浮かべながら私に聞いて来る。


「勿論だ。アルバートは黒の大剣の障害になる事は間違いない。ここで決着を着けアルバートを捕らえる。」


 それにアルバートは個人的に許せない。アイツはマルクスを操り、クリス姉ちゃんにセクハラ行為を働いたのだ。お仕置きが必要だろう。


「確かに君は近距離では強いかもしれない...。

 だけど...君じゃアルバートに近付く事すら出来ない...。

 いや、黒の大剣やこの世界中の誰だってアルバートには勝てないだろう...。

 アルバートはこの世界の全ての魔法を操る。それは操作系魔法に始まり、攻撃魔法に支援魔法、あらゆる魔法を使って来るだろう...。

 しかも、それを全て詠唱省略で唱える事が出来るんだ...。」


 確かにそれを聞けば普通では勝ち目は無い様に思える。

 それにマルクスは依頼を受ける際に一度戦っただけで、私の能力を全て話している訳では無い。

 マルクスにとっては私はチート武具をアポス爺さんから貰っただけだと思っているのだ。

 それに実際に戦場では不甲斐なく気絶していたし...。


 だけど、マルクスの話を聞くにアルバートは魔法しか使えないと言う事になる。それだけのチートだ流石に魔法以外にもアポス爺さんから能力を貰っているとは考えにくい。

 ならば、これは私の能力とかなり相性が良い相手では無いだろうか?


「それでもだ。」


 沈痛な面持ちのマルクスを落ち着かせる様に私は低い声でマルクスに語りかける。

 

 するとその時、背後に馬の嘶く声と車輪が地面を転がる音が聞こえたので振り返ると、豪華な馬車が1台こちらに向かって来ていた。

 恐らくアルバートだろう。


 馬車がこちらのすぐ近くに停車すると、御者に誘導され中から3人の男が出て来た。

 1人は予想通りの人間アルバート。そして、残りの2人はハイデガーと法務官のヘンペルだった。

 ハイデガーは確か一番最初に戦った帝国軍の指揮官だった気がするが、今はその時の責任を負わされ降格したらしい。

 その時の事を根に持っているのか、馬車から降りた瞬間私を見つけると露骨に睨み付けて来た。


「待たせたね。立会人を捕まえていたら遅くなってね。」


 どうやらアルバートはこの二人をこの勝負の立会人にする様だ。

 二人とも確か軍の上の方の人間だから負ければアルバート自身の進退が危ぶまれる様なリスクを背負う筈だけど...恐らくアルバートには自分の魔法に絶対の自信があるのだろう。


「では始めるか。」


 私はアルバートに声を掛ける。


「おっとその前に...。立会人に怪我をさせちゃうと後々面倒な事になるから...。」


『エンチャントオーラ!』


『エンチャントボディ!』


 アルバートが呪文を唱えるとハイデガー達が青白い光に包まれる。


「準備は出来た。これで心置き無く戦えるよ。

 って言っても安心しなよ。君を殺したりはしないから。何せ僕の大切なコレクション(・・・・・・)にするんだからね!」


 コイツ...。人をモノ扱いか...。マルクスに操作系魔法を掛けた事といい、クリス姉ちゃんに当たり前の様にセクハラ行為をした事といい、アルバートは頭の螺が何本か取れている...。

 子いつを野放しにして置く訳にはいかない...!

 

「始めるぞ。」


 私はフツフツと湧き上がる怒りを飲み込み、出来る限り低い声でアルバートに言い放つ。


「あぁ。いくよ!」


『フライ!』


 アルバートが短い呪文を唱えると空中10m位に浮かび上がる。


「ふふ。安心しなよ。この魔法で飛び続けられるのはせいぜい10秒程度だから。

 だけど、準備(・・)の為には十分過ぎる時間だけどね。」


 するとアルバートは空中で様々な魔法を唱え始める。


『エンチャントオーラ!』


『エンチャントボディ!』


『パワーレインフォース!』


『ガードレインフォース!』


『アクセラレートマジック!』


『リジェネレーション!』



 10秒程経つと『フライ』の効果時間が終わった為か、アルバートは身体に虹色の光を纏いながら地面に降り立つ。


「君は後悔する事になる。この”万物のアルバート”の勝負を受けた事をね!

 予言しよう。君は僕に近付くこと無く地面に這い蹲るだろう!」


『フレア!』


 アルバートの杖から極大の火炎球が私に向かって打ち出される。


『インビジブルシールド!』


 これが『フレア』...?何か私が前に使ったモノとは違う...これはどちらかと言うと大きいファイアボールの様な感じだ。


 私は向かって来る火炎球を不可視の盾(・・・・・)で打ち消す。


「へぇ、カウンタースペルが使えるって言うハイデガーの話は本当だったんだ。」


 アルバートは余裕の表情で打ち消された『フレア』の火の粉が地面に落ちるのを目で追う。


「殺さないんじゃ無かったのか?普通の人間だったら死んでいたぞ?」


「大丈夫だよ。心臓さえ無事なら僕の『エクスヒール』で元通りさ。

 それに君が全身焼け爛れる姿を見て見たくてね。」


 そう言うとアルバートはニヤリと邪悪な笑みを浮かべてこちらを見詰める。

 

 そんな理由で上級火炎魔法を...!?く、狂ってる...!


「そんなに見たければ自分で体験するんだな。」


『フレア!』


 私は装備している『フレアリング』に念じて『フレア』を発動させる。

 すると左手の先から熱線がアルバートに向かって照射され、収束した魔力が次々に爆発し、轟音と共に辺りの地面が火の海と化す。


「なっ...!何故黒騎士が『フレア』を...!?あ、あの時は上級魔法を使えるなどと言う情報は...。

 し、しかもこの『フレア』はアルバート殿よりも威力が高い様に...。」


 ハイデガーが驚愕の声をあげる。

 確かにあの時はこっちの世界に来たばかりで初級魔法しか使えなかった。

 でも今は違う。それに威力が違うのも当然だ。

 この『フレア』はただの『フレア』では無い。イフリートとか言う魔人から教えて貰った(・・・・・・)『フレア』なのだ。


 『フレア』の爆発の衝撃で舞い上がった塵と煙が晴れ、その中から人影が映し出される。


「まさか君が”上級魔法”を詠唱省略で使い(こな)すとはね...。

 分かった。僕も本気でいくよ。」


 塵と煙の中から姿を表したアルバートは傷一つない状態で冷静に言い放ったのだった。

 次回後編決着です。

 次回も土日に更新予定です。


〈補足〉

 アルバートが最初に沢山唱えている魔法は全てバフです。

 効果は上から

 ・魔法攻撃ダメージ軽減←

 ・物理攻撃ダメージ軽減

 ・筋力アップ

 ・身体の頑強さアップ

 ・魔法攻撃力増強

 ・再生能力付与←


 ダメージは一瞬だけ少しありましたが←の効果で結果として回復し、無傷でした。

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