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4-18 「オリハルコンの積み合い」

 コハクとの契約を賭けた競り開始です。

ーマルブランシュ王国 首都オーベル マルブランシュ城 大部屋


「競りを始める前に一つルールの追加を願いたい。」


 私は国王に申し出る。


「追加...?この後に及んでどんなルールだ?」


 国王は眉間に皺を寄せ訝しげに聞いて来る。


「この勝負に負けた方は、今まで見せたオリハルコン全てを勝者に引き渡すと言うルールだ。

 オリハルコンを見せるだけなら簡単だからな。

 失うかも知れないリスクを賭けてこそ、コハクに供給出来ると言う証拠にもなる。」


 ライプニッツが居ると言う事は恐らく帝国が関与するオリハルコンも出して来る筈だ。

 そうなればこちら側は不利となる。

 しかし、そのオリハルコンは帝国に返さなければいけないオリハルコンだろう。

 つまりはこのルール追加は相手への牽制の為だ。


「ふん...小賢しい...。相手の手の内も見る前からその様な追加ルールは飲めぬわ。」


 しかし、国王は乗ってこない。

 やはり帝国に返さなければいけないオリハルコンが混じっていると見るべきだろう...。



「では先ずはこちらのオリハルコンをコハクさんに鑑定して貰いましょう。」


 そう言うとアントワーヌは大部屋の奥に風呂敷を掛けられていたオリハルコンのインゴットや武具を兵士と共に中央の絨毯に運び込む。


「それではコハクさんお願いします。」


「あらぁ。コレは凄い量ね...!700kgといった所かしら。

 じゃあこの品質を1kg1ポイントとしてこれから計算するわぁ。」


 やはりヤスの情報通りマルブランシュが用意して来たオリハルコンは700kgの様だ。

 だが、気になるのは2点。

 『アイテム鑑定』で確認したが、ライプニッツの作品は一つも見当たらない事と部屋の奥にはまだ風呂敷が掛けられたままの状態の何か(・・)がある事だ...。


「ではコハクさんの鑑定では、こちらのオリハルコンの価値は700ポイントと言う事になります。

 これを上回る事が出来なければ、コハクさんは我々マルブランシュ王国と契約して貰う事となります。」


 アントワーヌがコチラに余裕の表情を向ける。

 後ろの方では国王とシモンがニヤニヤと笑みを浮かべる。

 どうやら相手はこれらのオリハルコンでこっちに勝つ相応の自信があるらしい。

 だが、その自信もそれまでだ...。


 私はヤスにオリハルコンを出す様に目で合図を送る。

 そしてヤスが中央の絨毯に近付くと国王に声を掛けられる。


「何も持っていない様に見えるが?

 まさか泣き脅しでもするつもりか?」


 国王は嫌味たっぷりにヤスを見下して言う。

 それにつられてアントワーヌやシモンもニヤニヤと笑みを浮かべる。


「んな訳あるかよ。っしょ!」


 ヤスは何も無い空間からオリハルコンを取り出し、絨毯の上に並べていく。


「「「なっ...!?」」」


 マルブランシュ陣営はこぞって驚きの声をあげる。


「空間魔法だと...?」


 シモンは似た様な魔法を知っているのか空間魔法と口にする。

 まぁアイテムボックスは説明が面倒だし、勘違いしてくれているのは好都合だ。


 そしてヤスが用意したオリハルコン450kgと武具錬成で錬成したオリハルコン製のナイフ175kgを絨毯の上に置くと、またもやマルブランシュ陣営が騒然となる。


「馬鹿な...どうやって一傭兵がその様な量のオリハルコンを...!?」


 国王が驚き、訝しげな声をあげる。


「いえ、ですが陛下。量ではこちらの方が勝っております。」


 アントワーヌの言葉に国王は安堵の溜息をつき、シモンがコハクに鑑定の催促をする。


「コハクよ。早く鑑定を済ませ、決着をつけるのだ。」


「あらぁ。いいのかしらぁ?

 確かに量では大将さん達の方が多いけど...このナイフは質が違うわ。」


 そう言うとコハクは私が”武具錬成”で創り出した黒いナイフを手に取る。


「これには高い魔力が込められているから、そうね...1kg2ポイントと言った所かしら。

 他のオリハルコンについては大将さんのオリハルコンと品質は同じよ。

 つまり合計すると450ポイントと350ポイントで合計800ポイントねぇ。」


 よし。計算通り相手は700ポイント、こっちは800ポイントだから100ポイント差でこちらの勝ちだ!


「ま、待て...!」


 ヤスが出したオリハルコンを仕舞おうとすると国王から待ったがかかる。


「潔く負けを認めるんだな。」


 しかし、ヤスは軽く切り捨てる。


「いや、出す。更なるオリハルコンを出す...!

 おい、持って参れ!」


 国王は少し焦った様子で周りの兵士に命令する。


「へ、陛下...!しかし、それでは帝国(・・)の思う壷です。」


「コハクを失ってはそれこそ帝国の思う壷。このマルブランシュに未来は無いっ!

 コハクを失うよりはマシだっ!」


 国王はアントワーヌを怒鳴りつけ、アントワーヌはこれ以上国王の機嫌を損ねまいといそいそと奥の風呂敷を外し、オリハルコンを持って来る。


「これでどうですか...?」


 アントワーヌは追加のオリハルコン150kgを中央の絨毯の上に置く。


「これも...品質はさっきと同じね。

 だから合計は700ポイント+150ポイントで850ポイントね。」


 これは想定外だった...。

 帝国の人間が居る事で何かあるかと思ってはいたが、やはりマルブランシュが敵国の帝国に援助を求めて居たと言う事ね...。

 だが、50ポイント程の差であればまだ何とかなる。

 何故なら今日はまだ”武具錬成”を行っていないのだ。

 ヤスもその事には気付いた様で、追加があると聞いて焦っていたが、今は落ち着き払っている。


「では、こちらも追加しよう。」


 今度は私が中央の絨毯へ行き、皮袋(・・)から”武具錬成”で作成した追加のオリハルコン製のナイフ35kgを取り出す。


「これはさっきのナイフと同じだから1キロ2ポイントね。」

 

 コハクが私からナイフを丁寧に受け取り鑑定する。


「な、何なのだ...アイツは一体幾つあのナイフを持っているのだ...!?」


 シモンが狼狽した声でそう叫んだ。


「これでさっきのと合わせて870ポイントねぇ。

 あらぁ?大将さん達の850ポイントを超えたわねぇ?」


 コハクがおどけてシモン達に告げる。

 どうやらコハクはこの状況を楽しんでいる様だ。

 コハクからすればどんどん自分が手にするオリハルコンが増えていくのだから、当然と言えるだろう...。


「へ、陛下...。」


 アントワーヌが汗をびっしょりとかきながら、国王に歩み寄る。


「くっ...もぅ同じだ...。既に帝国に貸しを作ったのだ...。アレ(・・)を出せ...。」


 アレ(・・)...?

 どうやらマルブランシュ陣営はまだ奥の手を隠している様だった...。


 次回は水曜投稿予定です。

 いよいよ競りが決着。

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