4-15 「秘伝のマッサージ」
お風呂回1/2です。
ーオリガ王国 オリガ王城 浴室
アマルティア姫に誘われるまま、オリガ城の王族用浴室へと来ていた。
王族用と言うだけあり、脱衣場ですら大理石の様なツルツルとした高級感の漂う壁に覆われ、絢爛豪華な大きな飾り鏡が備え付けられていた。
この世界で初めてのお風呂か...。
日本人である私は正直お風呂に飢えていた。
何せこの世界はお風呂はおろか、シャワーすら浴びれず、基本的には布で身体を拭くだけなのだ。
「お風呂は初めてですか...?」
私が脱衣所で服を脱ぎつつ、久し振りのお風呂に感慨深い物を感じているとアマルティア姫に後ろから声を掛けられる。
「えぇまぁ...。
でもいいんですか?私みたいな庶民が王族用のお風呂に何て入っても...?」
「ふふふ。何を言ってるんですか。黒騎士様はこの国を救って頂いた英雄です。
前回はお時間が無く招待出来ませんでしたが、こんな物で良ければ何時でも利用して頂いて結構ですわ!」
アマルティア姫は意気揚々とお風呂を勧めてくれる。
「そんな事より...。
さぁ入りましょう!」
アマルティア姫が私の背中を押して浴室へと進ませる。
「あぁ...ちょっとアマルティア姫っ!?」
私は驚き思わず非難の声をあげる。
「ふふ。黒騎士様。ルティと呼んで下さいっ!」
するとアマルティア姫は一糸纏わぬ姿で私の手を引いて浴室へと入って行く。
浴室はそれはそれは立派な造りになっており、壁にはアールヌーボー風の花の彫刻が施され、湯舟にはエメラルドグリーンの色湯が張られていた。
「凄い...!」
「ふふふ。気に入って頂けましたか?
これがオリガ王国自慢のお風呂です!」
ルティはそう言うと自慢げに両手を広げる。
「ところで...。黒騎士様のそれは...そう言う風習なのですか?」
ルティは私の身体に巻いているバスタオルを指さす。
「えっと...これは...。」
私はお風呂が好きだ。
でも温泉や銭湯は苦手だった。
何故なら私は他の人よりも胸が小さく、それがコンプレックスになっていたのだ...。
ルティはお姫様なだけあって裸を見られる事に慣れている様だが...。
「ふふ。恥ずかしがってないで、一緒に湯舟に浸かりましょう!」
私がモジモジとしているとその意図を理解してか、ルティが少し強引にバスタオルを脱がして湯舟に入ろうと催促して来る。
「あぁ...!えっと...!きゃぁ!」
ルティにバスタオルを引っ張られ思わずバランスを崩してしまい、咄嗟にルティに抱えてられてしまう。
「すいません...。少々はしゃぎ過ぎてしまいました...。
でもどうしてそんなに恥ずかしがるのですか...?」
ルティに抱えられたまま問い掛けられる。
今日のルティはいつにも増してグイグイと来るな...。これは答えるまで解放してくれなさそうだ...。
「わ、私...その...胸が小さいから...。」
私は死にたくなりながら顔を真っ赤にして理由を答える。
「そう言う事ですか...。」
するとルティは先程までの楽しそうな笑顔は消え、どこか悲しそうな憂いのある表情を見せる。
「その悩みは痛い程分かります...!
でも黒騎士様はまだこれからですっ...!まだ間に合います!
ですので黒騎士様に行商人に高額で買った”秘伝のマッサージ”をしてあげますわ!」
先程までの憂い顔から一転。ルティは鼻息荒く両手をワキワキさせながら、私に迫る。
「えっ!?ちょ、ちょっとルティ...!?」
その後、私はルティの”秘伝のマッサージ”を受けぐったりとしながら湯舟に浸かっていた。
「...少しは緊張は取れましたか?」
すぐ横で同じ湯舟に浸かっているルティから声を掛けられる。
「...はい。」
そうか...もしかしたら気が張っていたのかも知れないな...。
最近は帝国、鍵の迷宮、マルブランシュと落ち着く暇が無かった。
それを察してかルティなりの気遣いだったのだろう。
────そしてその時だった。
浴室の扉が突然開き、声がする。
「ルティ居るのー?」
浴室の壁に反響して響くのはクリス姉ちゃんの声だった。
っ...!まずいっ!
今はお風呂に入っているので当然裸だ。
しかも”早着替え”で黒騎士の姿になったとしても何て言い訳をする?
この姿でお風呂場に入っていた...?いやいくら何でも不自然だ。
それにここには私だけじゃなくルティも居るのだ...。
「ルティ。事情があってクリス姉ちゃんには私の正体を言えないんです...。
だから、その...私はここには来ていない事に!」
そう言って私は壁際まで走り、慌てて武具錬成を起動する。
久々の非テンプレ武具錬成がこんな使い方で良いのか...?
次回水曜投稿予定です。




