4-14 「算段」
今話は久し振りにアマルティア姫が出て来ます。
ーマルブランシュ王国 首都オーベル 市街
「”武具錬成”はジャズの能力の事よね?それは分かるんだけど、マルクスがどう関係するの?」
クリス姉ちゃんが聞いて来る。
「まずは”武具錬成”を使い毎日オリハルコン製の武具を創る。
そして、それとは別にオリガ王国などを中心にオリハルコン製の武具を掻き集める。」
私は今回の作戦を2人に説明する。
「待ってジャズ。ここからオリガ王国は往復で2週間はかかるわ。
とても期限の1週間の間では間に合わない。」
「そこでマルクスだ。クリスも奴の転移能力を見ただろう?」
「なるほど...そう言う事ね...!」
クリス姉ちゃんが合点がいった様で、うんうんと頷く。
「黒騎士様。私達は何をすれば良いでしょうか?」
私達か...。
ソフィは出会った頃は私以外を信用せず、単独で居る事が多かった。
だけど、エピクロスに来る時の馬車ではアマルティア姫と打ち解けていたり、徐々に他の人にも心を開き出している。
そして今回も”私は何をすれは...”では無く、”私達”
とチームプレイを意識しての発言だ。きっとソフィもクリス姉ちゃん達を信用し初めてくれているのだろう。
「ソフィはヤスと共に潜入し、マルブランシュ王国が集められるオリハルコンの予測を立ててくれ。
我はオリハルコンを創りつつ、オリガ王国にマルクスと行き、王にオリハルコンを用意して貰える様に交渉をする。」
「分かりました。」
「そしてクリスは...」
「あ、待ってジャズ!」
するとクリス姉ちゃんが私の話を遮って話し始める。
「私もジャズと一緒にオリガ王国に行かせて。」
「どうしてだ?」
「私はオリガ王国で元特A級冒険者だったわ。
そしてこれは国の存亡がかかった重大な討伐依頼をこなした時に、オリガ王から直々に認定たのよ。
だから、オリガ王とは面識があるし、貸しもあるの。交渉で役に立つと思うわ。」
なるほど...クリス姉ちゃんがオリガ王国で特A級なのは知ってたけど国の危機を救ってたのか...。
流石はクリス姉ちゃん。
でも確かにそれは交渉に有利だろう。
「分かった。着いて来てくれ。」
私はクリス姉ちゃんに向かって首を縦に振る。
その後ヤス、マルクス、シルヴィアさんにも作戦を話し、それぞれ別行動を取る。
なおシルヴィアさんにはコハクの監視役をお願いした。
ーオリガ王国 オリガ王城 謁見の間
「おぉ!黒騎士殿!久しいな。」
私はクリス姉ちゃんとマルクスと共にオリガ王国へとやって来ており、オリガ王と謁見していた。
なお城門では衛兵に顔パスで直接謁見の間へと通された。
「国王。お久しぶりです。」
私は国王に跪く。
「クリスも久しいな。息災か?」
「はっ。」
「冒険者は引退し、傭兵になったと聞いた時は耳を疑ったが...なるほどそう言う事か...。
クリスらしいな。クリスが黒騎士殿と共に組めば、本当に世界を変えられるかもしれんな...。」
国王が遠い目をして天井を見上げる。
この話だけでもクリス姉ちゃんに対する信頼が厚い事が伺える。
「して、今日は何用だ?」
私は国王にマルブランシュの古代兵器の事、そしてオリハルコンが急ぎ必要な事を説明した。
「ふむ...なるほどな。分かった。
黒騎士殿もクリスもこの国を救ってくれた大英雄だ。2人が居なければこの国はとうの昔に帝国かマルブランシュの属国になっていただろう。微力ながら国をあげて協力しよう。」
国王が快諾してくれる。
「助かります。」
「で、今日は泊まってゆくが良い。アマルティアも
黒騎士殿の帰還の報を聞いて落ち着かない様子だ。」
そう言うと国王はニヤリと微笑む。
「分かりました。」
どっちみちオリハルコンを用意して貰うにしても数日は掛かるだろう。
私は国王の申し出を快く受け、従者に個室へと案内される。
ーオリガ王国 オリガ王城 個室
個室で”武具錬成”を使いオリハルコン製のナイフを錬成していると扉がノックされる。
「黒騎士様。私です。アマルティアです。」
扉を開けると純白のワンピースに身を包んだアマルティア姫が立っていた。
「お久しぶりです。戻っていらしたんですね!」
アマルティア姫は嬉しそうに微笑みながら私の漆黒の手甲を取り、握り締める。
「あっ...。取り敢えず中に...。」
立ち話も何だと思ったので、私はアマルティア姫を部屋の中へと誘導しようとアマルティア姫の手を引く。
が、それはアマルティア姫に制止される。
「待って下さい!今日は黒騎士様をお誘いに来たんです。」
アマルティア姫が頬を上気させ俯きながら言う。
「誘い?誘いとは?」
「それは...その...。
お、お風呂ですっ!」
次回は土曜投稿予定です。
次回”お風呂回”です。
〈補足〉
黒騎士の国王に対する言葉使いが以前と変わっているのは仕様です。
国王には既に正体をバラしているので、不遜な黒騎士を演じる必要が無いので。




