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4-8 「組み分け」

 投稿遅くなりました。

 今話から2話分シルヴィア回です。

ーマルブランシュ王国 首都オーベル 郊外


 私達はマルブランシュ王国の首都オーベルの近くまで来ていた。

 

「流石にこの人数でコハクを連れて歩くのは目立つわね...。」


 クリス姉ちゃんの言う通り私達は服がボロボロな事もありかなり目立つ。

 特にコハクはマルブランシュ軍の関係者なら知っているだろう...。


「確かにクリスの言う通りだ。3組に別れ、1組は交代でコハクと一緒に宿にでも身を潜ませるのが良いだろう。」


 私が組を別ける事を提案した瞬間、ソフィとクリス姉ちゃんが目を見合わせた様な気がした...。


 組み分けはヤスの提案で、金、銀、銅3種の硬貨をそれぞれ2、2、3枚づつ使って行った。

 その結果は以下の通りだ。


〈買い出し〉

 黒騎士、シルヴィア


〈買い出し〉

 ヤス、マルクス


〈留守番→上の組と交代で買い出し〉

 ソフィ、クリス、コハク


「何でよりによってお前と何だよ!!!」


「し、知らないよ!僕だって好きで君と一緒になった訳じゃ...!

 大体この方法は君が言い出したんだろう?」


 ヤスが銀貨を握り締めながら絶叫し、マルクスと言い合いをしていた。



「むぅ。」


「デートが...。」


 ふとソフィとクリス姉ちゃんの方を見るとそれぞれ不機嫌そうに銅貨を見詰めて唸っていた。

 


「よ、宜しくお願いします...。」


 同じ組になったシルヴィアさんの方を見るとシルヴィアさんが軽く会釈してくる。

 そう言えばシルヴィアさんとは傭兵試験依頼あんまり二人っきりで話をする機会は無かったな...。


「クリスと一緒になれずに残念だったな。いや、今からでもソフィと交換を...」


「あ!大丈夫です!!く、クリスとはいつも一緒なのでたまには他の人と一緒がいいなぁ...って...。」


 私がソフィの所に向かおうとすると、珍しくシルヴィアさんが大きな声を出して私の腕を掴んで止める。

 するとシルヴィアさんの胸が腕に密着する。


 くっ...ローブを着ていて気にならなかったが、クリス姉ちゃん程ではないにしろシルヴィアさんも平たくない胸族の出身か...!


 私がモヤモヤしながらシルヴィアさんの胸を見ていると何か勘違いされたのかシルヴィアさんが慌てて腕をパッと放す。


「っ...!ち、違うんです!す、す、すいません。」


 何が違うのか分からないんだけど...。


 別れ際にソフィにコハクの警戒と調査を頼んだ。

 今は仲間になったとは言え、それは一時的(・・・)なものだろう。コハクには十分警戒し、弱点等を探っておいた方が良い。


 私は念の為、ソフィに非常食(・・・)として『必然のナイフ』を渡し、それぞれ別れて首都オーベルの市場へと向かった。







ーマルブランシュ王国 首都オーベル 市場


 私はシルヴィアさんと市場へと来ていた。


「そう言えばまだちゃんと言えていませんでしたが、マリーを助けて頂いてありがとうございます。」


 2人で並んで歩いているとシルヴィアさんがお礼の言葉を言う。


「礼には及ばん。当然の事だ。

 同じ人間を奴隷として扱うなどあってはならない事だ。」


同じ(・・)人間...ですか...。」


「あぁ。」


 シルヴィアさんは羽根耳族である事を気にしているのだろう。

 今もフードを被り羽根耳を隠している。

 シルヴィアさんの耳はとても可愛いのに勿体ない!


「ところでマリーは妹と聞いたがマリーも羽根耳族なのか?」


 確かマリーには羽根耳は生えていなかったよね...?


「私の父、母、そしてマリーも羽根耳はありませんが、私の家系は遠い昔に羽根耳族の血が入っているんですよ。

 そして私だけが”先祖返り”で羽根耳を持って生まれてしまって...。

 妹のマリーは平気だった見たいですが、両親...特に父親に気味悪がられていたのは幼い頃から知っていたので、私は10歳の頃に家を出て冒険者になったんです。

 幸い魔力も”先祖返り”のお陰で生まれつき高かったので。」


 シルヴィアさんが遠くの街並みを見ながら話す。


 そっか...そんな過去があったのね。

 シルヴィアさんはヤスと何処と無く距離を置いていたのは父親と重ねて男の人が苦手なのかもしれないな...。


「そうか話したくないことを聞いてしまったな。すまない。」


「いえ、もう昔の話です。気にしていません。

 それよりもマリーの事は本当に感謝しています。」


 シルヴィアさんが改めて頭を下げる。


 幼少期に実の両親に気味悪がられる...。

 私は普通に両親に愛されて育ったからその苦しみは想像もつかない。

 だがきっととんでもない悲しみと苦労があったのだろう。

 そしてだからこそ唯一(・・)の心の許せる家族であるマリーの事を両親の分も本当に大切に思っているのだろう。

 だからこそここは安易に「気にするな。」とは言うべきで無いだろう。



「それにしても何だか不思議な感じです。」


「何の事だ?」


「だってジャズさんは私が臨時の試験官をやって傭兵になったじゃないですか?」


「あぁ。」


「だから云わばジャズさんは私の教え子に近いと思うんです。

 でも、それが今は私がジャズさんの作った傭兵団に団員として所属してるなんて...。何だが不思議です。」


 なるほど...。そう言われれば確かに変な感じだ。

 あの時はまさかこんな事になるとは露ほども思わなかったなぁ...。


「ふっ...だとするとシルヴィア先生と呼んだ方がいいか?」


 私は冗談混じりでシルヴィアさんに言う。


「もぉー!やめて下さいよ、ジャズさん!」


 シルヴィアさんは照れながら顔を隠す様にフードの先を掴む。


「あの...その名前何ですけど...。し、シルヴィーって呼んで貰えますか?

 あ、いえ...その...特別な意味は無くて...その...皆そう呼ぶので、その方が慣れていると言うか...。」


 シルヴィアさんが何故か必死に言い訳をしながら呼び方について話す。

 確かにクリス姉ちゃんとロビラさんはそう呼ぶけど他の人はあんま呼ばない様な...?

 それにジャスミンの時は”シルヴィアさん呼び”で何も言われ無かった様な...。

 まぁ別にそれ位いいんだけどね。


「お安い御用だ。シルヴィー。」


「へへっ...!」


 シルヴィアさんは余っ程嬉しかったのか屈託の無い笑顔を見せる。

 その不意打ちの笑顔が余りに可愛くて、思わずドキリとする。

 シルヴィアさんってこんな風に笑うんだ...。シルヴィアさんは鍵の迷宮では影でクリス姉ちゃん達を導いて行く冷静沈着な先生見たいな人だと思ってたけど...。



 暫く市場を歩いていると防具店を見つけたので、私達は中へと入って行く。


 次回月曜投稿予定です。

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