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4-6 「決着」

 コハク戦決着です。

〈クリス視点〉

ーマルブランシュ王国 クレフェラン近郊


「嘘...でしょ...!?」


 私は武器も無く立つのがやっとの状態で、魔力も殆ど残っていなかった。

 しかし、目の前にはボロボロで大切な部分が殆ど隠せていない状態の服を纏ったコハクが五体満足で立っていた。

 左目は閉じ血を流している事からダメージは受けている様だが、私と違いまだまだ戦えそうだった。

 私を殺すには充分だろう...。


 ごめんねジャズ...護れなかったよ...。

 シルヴィー私が”黄昏の輝き”を解散しなければシルヴィーは巻き込まれずに済んだのに...ごめん...ごめんね...。


「さぁ!さっさとトドメを刺せ、コハク!」


 男が勝利を確信した様にコハクの後方から指示を出す。


「残念だけど、それは無理よぉ。」


 え...?今何て...?


「はぁ?何を言っている!?クリスティーナはもう虫の息だ!コハク、お前なら一撃だ!」


「だってもう燃料(・・)切れだものぉ。」


 そう言うとコハクはペタンとその場に女の子座りをする。


「なっ!?い、今は無いぞ...。

 だが、城に帰ればたらすぐに食べさせてやるぞ!」


 男は先程までの傲慢な態度とは打って変わって焦り始める。


「今すぐじゃなきゃダメよぉ。もお一歩も動けないわぁ。」


 コハクがぐったりとしていると、私の視線に何か(・・)がコハクに凄い速さで飛んで行くのが見える。


 え?あれは...何?

 それはソフィから放たれた...恐らくナイフだ。

 多分ソフィは少し前から意識が戻って隙を伺ってたんだ!


 そしてソフィから投げられたナイフは、少し不思議な軌道を描きコハクの頭に見事に命中する。


「がっ...!!」


「なっ...!こ、コハクっ!クソっ...この死に損ないが...!」


 男がソフィの方を向いて睨み付ける。 

 が、ソフィは気にする事無く再び倒れたコハクの方を見詰める。

 すると次の瞬間倒れていたコハクは、ほっぺたを両手で抱えながらすくっと起き上がる。


「まぁ!何て美味しいのぉ...!んぐっ...これは...オリハルコン...!んぐっ...しかも、高純度で...強力な魔法も掛けられているじゃない!!」


 コハクはソフィが投げた黒いナイフを食べながら(・・・・・)満面の笑みで舌鼓を打つ。


 嘘っ...食べてる...!?一体何なの...!?


「あぁ...こんな小さなナイフ一本だけなのに...(たぎ)る...滾るわぁ!」


 そう言いながらコハクは立ち上がる。


「ハッハッハッハッ!!まさかお前らから殺される為にわざわざ餌を食わしてくれるとわなっ!!」


 嘘っ...そんな...まさか...!?

 コハクの燃料って言うのはオリハルコンなの?

 しかも、ソフィが投げたナイフを食べて補給して...。

 そんなのって無いよ...!


「さぁ、コハク!今度こそコイツらを()れっ!」


「ちょっとぉ、何で私に命令してるのかしらぁ?燃料もまともに用意出来ない様な貧乏人が私に指図しないで頂戴。

 それよりも可愛らしいお嬢さん。何か私にして欲しい事はないかしらぁ?」


 コハクは男を尻目にソフィに駆け寄り突然ごまをする様な態度で接する。

 急な展開に付いていけずソフィが戸惑う。

 無理も無い...私も訳が分からない...。


「何を言っているコハク!?マスターはワシだぞ?ワシの言う事を聞いておけば後でたんまりとオリハルコンを食わしてやるぞっ!」


 男はさらに焦り出し、冷や汗をかきながらコハクを説得し始める。

 

「ふふふ...冗談は顔だけにしてくれるぅ?

 私がいつあなた(・・・)と契約したのぉ?

 あなたはオリハルコンをくれたからそれに見合う対価を払っただけよぉ。

 だからそのオリハルコンが切れた今、あなたに従う謂れは無いわぁ。

 あ、お嬢さん。取り敢えず最初の命令で、この人間をプチッと()っとくぅ?」


 コハクがゴミを見る様な目で男を見る。


「その男は殺しちゃダメ。拷問に掛けて洗いざらい全部吐いて貰う。」


 ソフィが容赦無い事を言い出す。


「分かったわぁ。生かさず殺さずねぇ!」


 コハクがすくっと立ち上がり男に詰め寄る。


「ひ、ひいぃぃっ...!!

 ま、待てコハクっ!!城に帰れば大量のオリハルコンがお前を待っているぞ!

 だが、ワシが死ねばそれも無くなる!」


 するとコハクが歩みを止める。


「い、今少し我慢をすれば後でお腹一杯食べれるんだぞ?

 あぁーお前の為にあんなに用意したのになぁ...残念だなぁ!」


 男はコハクの反応に手応えを感じたのか、オリハルコンでコハクを買収する作戦にシフトする。


 いけないっ!このままじゃ...!

 またコハクがアイツの仲間にっ...!


「コハク。まださっきのある。そいつを黙らせたらもう一本食べさせてあげる。」


 するとソフィはさっきと同じ黒いナイフを一本取り出しコハクに見せ付ける様に振る。


「あぁ...美味しそう...!分かったわぁ。」


 コハクは再び歩き始め、男に詰め寄る。


「こ、コハク、ま、待てっ!いいのか?城にはこーーんなに沢山オリハルコンがあるんだぞ?こーーーーんなに!こーーーーーーんなにだぞ?」


 男は両手を広げてアピールする。

 必死だ...。


「んー。今すぐ殺す訳じゃないし、城に戻ってから続きを聞いてあげるわぁ。まぁ取り敢えずは黙るのねぇ。」


 コハクはそう言うと軽く男のほっぺたを叩く。

 男はそれだけで気絶してしまう。

 するとコハクは言いつけを守った犬の様にソフィにダッシュで歩み寄り、ソフィから手渡された黒いナイフを美味しそうに頬張った。


 取り敢えず...勝った...のよねぇ?


 次回水曜投稿予定です。

 激しい戦闘が続きましたが、次回から暫くほのぼのパートへ移行します。

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