表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

72/97

4-5 「紫電一閃」

 コハク戦の続きです。

〈クリス視点〉

ーマルブランシュ王国 クレフェラン近郊


 マルクスがコハクのボディブローにより吹っ飛ばされる。


 マルクスっ...!


 だが私はその隙にコハクとの距離を数mまで詰めていた。

 この距離ならっ!


千光の嵐(サウザンドストーム)!』


 私は得意の刺突連撃技を繰り出す。


 捉えたっ!


 私は無数の攻撃がヒットした手応えを愛剣のレイピア越しに感じる。

 コハクは剣圧で数m吹っ飛び、土煙を上げながら地面を転がる。


「なっ...!コハクを吹き飛ばすとはっ...!?

 っ...!良く見るとお前は”清輝のクリスティーナ”ではないかっ!

 傭兵になったとの噂は本当だったのか!?

 そして何故お前がここに?」


 コハクの後ろに居た男が声を荒らげる。


「次はあなたよっ!剣を抜きなさいっ!」


 私は男の懐に差してあるショートソードをレイピアで指差して言い放つ。


「ふん、何を言っている?お前の相手はコハクだ。

 おいコハクっ!いつまで寝ているっ!」


 男が地面に半分埋まっているコハクに声を掛けると、コハクが服に付いた土を払いながら起き上がる。

 ダメージは殆ど無い見たいだ...。


「あらぁ?流石に少し痛かったわぁ。」


「なっ...!そんな...!」


『エンチャントオーラ!』

『エンチャントボディ!』


 私がコハクのタフさに驚いているとシルヴィーが冷静に効果が切れていたバフを掛け直す。


 コハクは立ち上がると今度は右手の掌を前に突き出して構える。


『ブラスター!』


 コハクが言葉を紡ぐと同時に、コハクの掌から漆黒の球体が射出されその場でゆっくりと浮遊し、小さい無数の球体に分裂する。


「くっ...!」


 それを見て私は咄嗟に後方へ下がる。

 

「滅びなさぁい。」


 コハクの声に同調するかの様に無数の漆黒の球体は凄まじい速度でこちらに向かって放たれる。

 私は漆黒の球体を身体を捻りながら避けつつ、回避が間に合わないものについてはレイピアで弾いた。


 カンッ!キンッ!カンッ!コンッ!

 小気味良い音とともに弾かれる漆黒の球体。

 

 早くっ...!もっと早く...!


 私は今までにない程に集中力を高め、レイピアで薙ぎ払う。

 

 そして全ての球体を弾き終わる。

 

「はぁ...はぁ...何とか弾き切った...。」


 一部被弾したがシルヴィーのバフのお陰で大したダメージには至って居なかった。

 

 って...シルヴィー!?


「まぁ、凄いわねぇ。『ブラスター』を弾き切る人間何て初めて見たわぁ。

 でも、残念だけど、後ろの人間はそうでも無かった様ねぇ。」


 私はコハクを警戒しつつ後ろを振り返り、シルヴィーの側に駆け寄る。


「シルヴィー!」


 シルヴィーは無数の球体に撃ち抜かれ血塗(ちまみ)れで倒れていた。


『エクスヒール!』


「がっ...はぁ...あっ...。」


 シルヴィーが血を吐きつつ息を吹き返す。

 だがこの失血量だ...。暫く魔法は唱えられそうに無い。


「シルヴィー後は任せて、そこで休んでて。」


 私は地面に横たわるシルヴィーを背にコハクに向き合う様に立ち上がる。


「許さないっ!よくもシルヴィーを...ジャズを!」


 私はレイピアの切っ先を相手に向け右手で上段後方に構え、左手の指を開き相手の方に突き付ける。

 これは私の最大の奥義、特級刺突剣技の為の構えだ。

 この奥義は大量の魔力を消費する為、おいそれと使う事は出来ないが、私一人となった今、これ以外に生き残る術は無いだろう...。


「はぁーっ!」


 私は掛け声と共にコハクに向かって駆け出す。

 それと同時にコハクも腕を広げて『アトミックレイ』の予備動作に入る。


「滅びなさぁい。」


『アトミックレイ!』


紫電一閃(ライトニングフラッシュ)!』


 瞬刻早くコハクの『アトミックレイ』が射出される。

 私は重心を低く取り、身体の全バネを使い飛び上がりつつ紫電一閃ライトニングフラッシュを放つ。

 するとコハクもすぐにそれに対応し腕を曲げて『アトミックレイ』の軌道を変える。

 私はそれを身体を捻り空中で避けつつ、重力が乗り始めたところで上半身のバネを使いレイピアをコハクの頭目掛けて放つ。


「はぁーっ!!!」


 全魔力をレイピアに載せて放った紫電一閃ライトニングフラッシュは、コハクの左目に命中しレイピアごとコハクを後方に吹っ飛ばす。


「きゃぁぁぁぁ!!!」


 コハクの叫び声が平原に響き渡り、その直後轟音を鳴らして地面とコハクが衝突し、激しい土煙が巻き起こる。

 この技を人間相手に打った事は無いが、これが人間であれば間違いなく木っ端微塵になる程の威力だろう。


「なっ...何だと...!?今のが人間が放つ剣撃なのか...!?

 そんなまさか...コハクが...!」


 コハクの後ろに居た男は尻餅を突き、戦慄(わなな)く。

 コハクがめり込んでいる地面の辺りは未だに土煙が止まず。紫電一閃ライトニングフラッシュの威力の激しさを物語っていた。


 お願い...!もぉ立たないで...!


 私は魔力切れからくる軽い目眩を感じながら祈る。

 が、残酷にも祈りは聞き入れられず、砂煙の中から黒いシルエットが浮かび上がる。


 次回は月曜投稿予定です。


〈補足〉

 覚悟を決めていたスライム戦で紫電一閃を使わなかったのは舐めプとかでは無く、拍子抜けする程にクリストフォルス無双だったからです...。

 後は敵の数が不明の場合、魔力切れのリスクがある為、紫電一閃は不向きです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ