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3-29 「キス」

 更新遅れてすいません。

 今回と次回共に心理描写多目です。

ー宗教国家エピクロス 首都ラミア 黒の大剣拠点 茉莉花の部屋


 クリス姉ちゃんの唇に自分の唇を重ねる。

 クリス姉ちゃんの唇は柔らかく、髪からは花のいい香りが漂う。

 するとクリス姉ちゃんが私の背中に腕を回し、私達はより密着する。

 私は胸が早鐘を打つ音で何も考えられなくなっていき、意識が混濁する。


 キスってこんなにも気持ちいいもの何だ...。


 私は女同士ではもちろん、異性ともキスをした事が無く、その初めての快感に身を任せていた。

 すると力なく半開きになっていた私の口内にクリス姉ちゃんが舌を侵入させて来る。

 私は舌と舌が触れ合う未知の快感に思わず声を上げてしまう。


「んっ...!」


 私は自分が上げた声にも関わらず自分の発した声に驚く。その声は甘く、まるで甘えるかの様な快楽に満ちた声だったのだ。


 そして暫くお互いに舌を絡ませる濃厚なキスを交わし、どちらからともなく口を離す。

 クリス姉ちゃんの頬は紅潮し、普段は大きく開いた目は今は半開きになってトロンとこちらを見つめていた。兜で分からないだろうが私の頬も紅潮しているだろう。

 私が呼吸を整えつつ、初めてのキスの余韻に浸っていると、クリス姉ちゃんに声を掛けられる。


「...ジャズって女の子だったんだね。」


 しまった...!声を上げてしまった以上それはもう隠し通せない...。


 私は取り敢えずクリス姉ちゃんに向かって頷く。


「やっぱりね...。」


 どうしよう...。

 クリス姉ちゃんは黒騎士(わたし)を男だと思ったから好きになって、黒の大剣に入ったんだよね...。

 だから、女と知られた以上もう...クリス姉ちゃんとは...。


「すまない。騙すつもりは無かった。

 女である事は国家の上位層の男の信用を得る上で足枷になるからな。」


 私は兜の顎部を装着し、低い声で答える。


「なるほど、だからずっと甲冑を外さなかったのね。

 ふーん、その兜で男の声が出せるのね!」


 クリス姉ちゃんは感心した様に兜を眺める。


 あれ?思っていたリアクションと違うな...。

 クリス姉ちゃんは怒ってないのか...な...?


「その...クリスは怒ってないのか...?」


「え?何を?」


 クリス姉ちゃんがキョトンした表情で首を傾げる。


「それは...我が女であった事だ。」


「え?だってそれはジャズが男だって言った訳じゃ無くて、ジャズは男だって私が勝手に思い込んでただけだから。」


 え?そう言う問題なの...?

 だって女の子同士って分かったんだからお礼(・・)とかも全部状況が変わって来ちゃうよ...ね...?

 私は肩透かしを食らってしまい言葉に詰まっていると、クリス姉ちゃんが話を続ける。


「それに...私はジャズが男だから好きになった訳じゃ無くて、ジャズだから(・・・・・・)好きになったの。

 だからジャズが女って知って驚いたけど、その...好きだって気持ちは変わらないし...。」


 クリス姉ちゃんは照れて視線を彷徨わせながら言う。

 声で女だと分かったのにキスを止めようとしなかったのはそう言う理由か...。

 それにしてもこの世界の女の人は何と言うか...同性の恋愛に対して寛容過ぎる様な...。

 ってそりゃそうか...。ヤスの話ではこの世界では同性の結婚は認められており、女同士でも子供を産むことが出来るとか...。

 なるほど確かにそれなら、女同士でも特に支障は無いのかもしれない...。


 私が思考を巡らせているとクリス姉ちゃんが息を吸って少し溜めてから話す。


「だからね...。ジャズの方から甲冑を脱いで貰える様に私頑張るねっ!」


 クリス姉ちゃんが曇一つ無い(まなこ)で私を見据えながら言い放つ。

 私は胸がチクリと痛むのを感じた。



 するとそこで自室の部屋の扉がノックされ、外から声が聞こえて来る。


「ソフィです。開けて貰えますか?」


 ...っ!この状況はまずい!

 今のクリス姉ちゃんの格好は透け透けのベビードールなのだ。ソフィが見たらややこしい事になるのは明白だ。

 私は慌ててクリス姉ちゃんをベッドへと誘導し布団を掛けて隠す。


 クリス姉ちゃんをベッドへと隠し終えるとソフィに声を掛け、ソフィをベッドが背になる様に机へと誘導する。


「あの...お姉様!聞きたい事が...。」

 

 ソフィがいつもの堂々とした態度と違い、どこかソワソワとしながら話を切り出す。


「部屋の机に荷物があったんですが...。」


 あぁ、忘れてた!クッキーのお礼にソフィに渡そうと思って錬成した”鍵付きのペンダント”を机に置きっ放しにしてしまっていた。


「アレはクッキーのお礼だ。」


「あっ...やっぱりそうだったんですね!ありがとうございます!」


 ソフィは嬉しそうに微笑む。


「あの...それで...着けて見たので見て貰えますか?」


「あぁ、構わない。」


 ペンダントを着けた所をわざわざ部屋まで見せに来るなんて、そんなに喜んでくれてるんだ。

 私がペンダントを見せてくれるのだと思っていると、予想を裏切る様にソフィは寝巻きのフリルスカートを捲り上げる。


 え?ペンダントは...?


 私が驚いているとソフィがスカートをお腹まではだけさせる。

 すると目に飛び込んで来たのはパンツではなく、漆黒の貞操帯(・・・・・・)だった。


「お姉様が積極的になるのは嬉しいんですが、私はこんなのが無くても...お姉様一筋です!」


 ソフィがスカートを捲り上げたままモジモジと腰をくねらせる。


 えっと...どういう事...。

 って言うかあの貞操帯どこかで見たなぁ...。うん、どう見てもアリス教皇が着けていた物と同じだよね。

 何でソフィがアリス教皇と同じ貞操帯を?

 ソフィはコレが私からのお礼だと思ってるんだよね?

 って事はこれが机の上に置かれてたって事?

 あっ...!あの時だ!部屋を変わる前に”鍵が付いたペンダント”と”木の箱”を机の上に置いた。

 だからソフィは”木の箱”もお礼だと勘違いして...!

 ってアリス教皇の”お礼”って”貞操帯”だったの!?

 つまり私はソフィにお礼として”貞操帯”と”鍵”を渡した事になるのね...。


 私は笑顔でくっついて来るソフィを引き剥がしつつ、自分の部屋へと戻る様に促した。


「ではお姉様。また明日。」


 ご機嫌のソフィが私の部屋から出て行き、ベッドからクリス姉ちゃんが起き上がり、真剣な面持ちで言う。


「私もアレ(・・)着けた方がいいのかな?」

 伏線回である3-26の伏線一つ目回収です。

 次回でエピクロス編終了予定です。

 次回は土曜投稿に戻せると思います。

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