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3-25 「結婚」

 黒騎士とクリス姉ちゃんの会合の翌日からです。

ー宗教国家エピクロス エピクロス城 クリスティーナの自室


 クリス姉ちゃんを”黒の大剣”へと誘った翌日の朝。私と”黄昏の輝き”のメンバーはクリス姉ちゃんの部屋へと集まっていた。


「クリス話って何ですか?」


 椅子に腰掛けたシルヴィアさんがクリス姉ちゃんに話し掛ける。


「実はね。昨日色々と考えたんだけど。

 私、冒険者を辞めて傭兵になろうと思ってるんだ。」


 クリス姉ちゃんが冷静にゆっくりと話す。


「「えぇ!?」」


 ロビラさんとシルヴィアさんが驚きの声を上げる。

 あ、私も驚いとけば良かったか...。


「それはやっぱり昨日のアリス教皇の事が原因ですか?」


 シルヴィアさんがクリス姉ちゃんに問い掛ける。


「うん。それも関係あるんだけど...。冒険者に色々と限界を感じ初めてたんだ。

 2人には前にも話したけど、私が冒険者をやっている理由は”世界中の困っている人を助けたい”って理由何だけど、実際世界中の人が困っている事って戦争(・・)だと思うんだ。

 戦争で沢山の血が流れ、親を失くした子供が飢餓に震え、そして親の仇を討とうと兵士に志願し死んでいく青年達。冒険者じゃそこには手が届かないんだよね...。

 だから、”戦争を止める為の傭兵団”があれば...ってずっと考えてたんだ。」


「それが、”黒の大剣”ですか...?」


 シルヴィアさんがそこで口を挟む。


「え!?あ、そっかシルヴィーも妹のマリーのお礼が言いたくてジャズを探してたんだっけ。

 うん。そうよ。」

 

 え?マリーって奴隷販売の組織を壊滅させた時に助けた女の子だよね?

 シルヴィーの妹だったの?

 あれ?でもマリーの()は普通だった様な...。


「勝手な事を言っているのは分かってる。

 この”黄昏の輝き”だって、私の想いに賛同して入ってくれた2人には悪いんだけど...」


「あぁ、ちょっと待ってくれクリス!」


 すると今度はロビラさんが口を挟む。


「実はアタイも話があってな。

 クリスと同じく、アタイも”黄昏の輝き”を抜けさせて貰えないかって話だったんだ。」


「え?ロビラも...なの?

 理由を聞かせて。」


 クリス姉ちゃんが少し驚き、ロビラさんに問う。


「えっと...その...何て言うか...クリスやシルヴィーはとっても大切な仲間だと思うし、これからも大切な親友だと思ってる。

 で、その...あの...」


「ちょっと、どうしたの?ロビラしくない!勿体ぶらないで話してよ!」


 クリス姉ちゃんが急かす。

 確かにいつもハッキリ物を言うロビラさんらしくない。


「あぁ、わ、分かったよ。言うぞ?驚くなよ?後、信じてくれよ?」


 ロビラさんが執拗に前置きをする。

 何なんだ...気になるよ...!


「じ、実はアタイ...結婚(・・)するんだ。」


「「「えええぇぇぇーーーー!!!!!」」」


 一同揃って大声を出して驚く。

 え?どう言う事なの...?


「ちょっとロビラ...いきなりどう言う事?」


「昨日の夜例のドワーフの幼馴染に呼び出されてさぁ。その...何て言うか...そう言う事になった。」


 ロビラさんが顔を真っ赤にしながら答える。

 今のロビラさんはなんて言うか...小さな身長も相まって小動物的な可愛らしさがあった。

 あの勇ましいロビラさんにこんな可愛い一面があるなんて...!


「え?でもその幼馴染はロビラが告白してもゴブリンの方がマシとか言ってなかったっけ?」


 クリス姉ちゃんが言っているのは、鍵の迷宮第6階層でのテントで仮眠をとった時の事だろう。

 確か...『お前を嫁にする位ならゴブリンと一緒に暮らした方が安全だ!』とか何とか言われたとか...。


「いやぁ...アレはそう言う意味じゃ無くて、『お前と一緒に暮らしたらゴブリンが出ても安心だな!』って意味のプロポーズだったみたいで...。

 あの時はアタイもカッとなってハッ倒してでてきたから分かんなかったけど、昨日の夜”黄昏の輝き”が街に戻って来たのを聞きつけたらしく、アイツが来てもう一度プロポーズされたんだ。」


 ロビラさんは照れくさそうに、でもどこか嬉しそうに私達に事の顛末(めんまつ)を話してくれた。


 それにしてもドワーフのプロポーズは遠回し過ぎてややこしいな...。


「何だそうだったんだ。ロビラっ!おめでとうー!!」


 そう言うとクリス姉ちゃんは自分の事の様に嬉しそうに喜んで、ロビラさんを抱き締める。

 ロビラさんはクリス姉ちゃんの胸の重量物に顔を挟まれ生き苦しそうだ。ちくせう。


「ロビラさんおめでとう!」


 そして、私もクリス姉ちゃんの抱擁に混ざる。


「ロビラ。結婚式には私達も呼んで下さいね。」


 シルヴィアさんは目尻に涙を浮かべながら、微笑む。


「みんな...。ありがとなっ!!」


 ロビラさんは泣いていた。

 嬉し涙と言う奴だ。




 暫く皆の昂った気持ちを落ち着かせていると、シルヴィアさんが口を開く。


「あの...クリス。

 ロビラもこう言ってますし、私も親友を応援したいので、”黄昏の輝き”が解散する事に異議はありません。

 そこで、私も”黒の大剣”に入れて貰える様に黒騎士さんにお願い出来ませんか?

 私も黒騎士さんにはマリーの恩がありますし、私の支援魔法は傭兵団向きの技能だと思います。」


「分かったわ!ジャズにお願いしてみる。」


 こうして、”黄昏の輝き”は円満に解散する事になった。

 後はアリス教皇の説得だ!


 幼い頃からずっと幼馴染みを思い続けて来たロビラ。命を懸けたクエストの前にふられ、諦めかけていたそんなロビラにもついに春が...!

 閑話で結婚式を入れるかも知れません。


〈補足〉

 マリーは2-15で登場した黒騎士が助けた奴隷だった女の子です。

 因みにあの時に登場した家がシルヴィアの実家です。

 シルヴィアにだけ羽根耳が生えているのはまた後程。


 次回土曜投稿予定です。

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