表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/97

1-5 「初めての魔法」

 30話程書き溜めているので、一月は毎日投稿予定です。

ーオリガ王国 リョーリカの街 宿屋 翠星亭


 今日はクリス姉ちゃんに、生まれて初めての魔法を見せて貰える日だ。


 私はウキウキしながら身支度を整える。


 部屋を出て食堂へ向かうと、既にクリス姉ちゃんは椅子に座って待っていた。


「お待たせ!お姉ちゃん!」


「!!...んーん、全然待ってないよ!今来たばっかり!」


 クリス姉ちゃんは顔を真っ赤にしながら、何だか初デートのカップルの様な事を言い出した。


「今日はよろしくお願いします!」


 そう言って私はペコリと頭を下げた。


「まっかせてっ!!」


 守りたいこのドヤ顔。





ーオリガ王国 リョーリカの街外れ


 クリス姉ちゃんの先導で私達は街の外れの平野に来た。


「ここまで来ればいいかな。じゃあいくよ!」


 そう言って一本の杉の様な木を指さす。


『 ウインドカッター!』


 クリス姉ちゃんが呪文を唱えると、掌から突風が吹き、杉の木の幹を両断する。


「すっごーーい!」


 思わず語彙力が低下してしまったが、本当に小並感な言葉しか出なかった。いや、実際に今は小並か...。


「ふふっ!!」


 クリス姉ちゃんの満面のドヤ顔が眩しい。


「ジャスミンは知らないかも知れないけど、本当はね呪文って言うのは詠唱が...」


 あ...木が...あ!ダメなやつだコレっ!


「姉ちゃん後ろっ!!ウサギがっ!」


「え?あ、嘘っ...!」


 クリス姉ちゃんが振り向いた時には、時すでに遅し...。

 クリス姉ちゃんの放ったウインドカッターにより、木が切断。

 その木が倒れ、側に居たウサギの方へ傾き、轟音とともに木が倒れる。


 二人で直ぐにウサギが居た場所へと駆け寄るが、そこには血痕と木の枝が刺さった死に掛けたウサギが...。


『 くっ...エクスヒール!』


 クリス姉ちゃんがさっきと違う魔法を唱える。

すると、さっきまで息も絶え絶えだったウサギが息を吹き返し、何事も無かったかの様にピョンピョンと森の方へ消えていった。


「良かった...間に合った...。」


「す、凄い!お姉ちゃんあんな魔法も使えるんだ!」


「う、うん。でもこの魔法は他の人にはナイショね?」


 そう言って片目を瞑って、人差し指を唇に当てた。





ーオリガ王国 リョーリカの街 宿屋 翠星亭


 その後、宿に戻り、お礼のククリナイフをクリス姉ちゃんに渡した。


「ありがと!家宝にするわ!」


 そんな、大袈裟なぁ。でも、ここまで喜んでくれる人にあえて、ククリナイフもきっと喜んでるだろうなぁ...。何かまるで我が子をお嫁に出す母親の気持ち見たくなってしまった...。


「お姉ちゃんもありがとう!魔法があんなに凄いものだとは思わなかったよ!」


「パーティメンバーの魔導師からしたら、私なんてまだまだよ!」


 そう言って、照れながら手を振るクリス姉ちゃん。


「あ、そう言えば、魔法を見せてって、ジャスミンって冒険者になりたいの?」


 この後の結果次第...と言いたいけど...。

 今の私は無職だ。

勿論現代であれば10歳児は小学校に通うのが当たり前だが、ここは現代よりも文明が低い異世界だ。貴族でもなければ働くのが普通だろう。

 ましてや私にはこの世界に両親は居ない。

武具錬成がある為、お金に困らないとは言え、働いてもいないのに宿暮らし...不自然だ。


「うん、そのつもり。」


「そっか...。」


 そう言うとクリス姉ちゃんは、初めて寂しそうな顔をした。


「決して無理はしない様にね!ジャスミンは賢いから、きっと上手くやれるだろうけど、世の中には手を付けられない魔物や盗賊もいるから。」


「うん、気を付けるね。」


「よし!私はもう少ししたら、この街を出なくちゃいけないから、次に会う時は冒険者同士かな?」


「うん、きっとなってるよ!」


「その意気だ!じゃあね!」


「またね!お姉ちゃん!」


 そう言って私はクリス姉ちゃんに抱きついた。

豊満な胸が、平たい胸族の私の心にチリチリっと刺さる...。

 だけど、次は生きて会えるかも分からない、それが冒険者と言うものなのだろう。


 私はクリス姉ちゃんと宿屋の前で別れ、再び街の外れへと向かった。





ーオリガ王国 リョーリカの街外れ


 さっき、魔法を見せて貰った場所に来た。

 目的は勿論、クリス姉ちゃんと同じ。

 あの魔法は街中では危険だからだ。


 私は武具錬成を使用する。


 形状”波紋直刃風のメッキ”で、

 材質”ABS樹脂に光沢スズメッキ”の

 特性”振り抜いた際に『ウインドカッター』発動”を持った

 武具”小太刀”を

 出現方法”手に持った状態で出現”

 属性”パーマネント”


 私の右手に青白い光と共に小太刀が出現する。

 私のサイズに合わせ、通常の小太刀よりもさらに短目だ。

 そして何よりも軽い!幼女の私でも容易に振り回す事が可能だ。


『風刃』

攻撃力+5(風)

刀身に風魔法ウインドカッターを内蔵した魔法の小太刀。その刃は相手の鎧ごと切断する。但し刀身はなまくらで直ぐ折れる。

製作者︰マツリカ=スドウ


 攻撃力...たったの5か...ゴミめ...。


 いや、そんな事ないよ!この小太刀は攻撃力よりも、その特性こそが真髄だ!


 私は風刃を抜刀し、一本の木に向かって振り抜く。

 刹那、木が音もなく両断され、轟音と共に反対側に倒れた。

 成功だ!武具屋でフレアバゼラードを見た時、魔法が内蔵されている武具があるので、見た事のある魔法であれば内蔵出来るのでは?と思ってやってみたけど、出来るらしい。


 これで”冒険者用”の武器は完成だ。

 後はさっきの回復魔法だけど...防具の兼ね合いもあるので、邪魔にならない指輪にしておこう。


 武具錬成起動。


 形状”ツイストリング”、

 材質”銀”の

 特性”念じると対象に『エクスヒール』を発動”を持った

 武具”指輪”を

 出現方法”左手の小指に付けた状態で出現”

 属性”パーマネント”


『奇跡の指輪』

奇跡の力が込められた魔法の指輪。祈りを捧げるとその奇跡が顕現する。

製作者︰マツリカ=スドウ


 試しに膝の虫刺されに唱えてみると、跡がキレイさっぱり無くなったので問題なく発動する様だ。


 これで今現在知ってる魔法は全て使える様になった。

 防具はここで錬成する必要は無いので、部屋に戻ってゆっくりやろう。





ーオリガ王国 リョーリカの街 宿屋 翠星亭


 宿屋に戻ると丁度夕飯の時間だったので、先に済ませておく。


 夕飯を終え、防具の製作に取り掛かる。


 恐らく冒険者の時は魔法『 ウインドカッター』だよりの戦闘になるので、武器自体の攻撃力

は余り必要ない。


 だけど防具は別だ。

 所詮私の身体は10歳児並の生命力しかない。

 トナ改の突撃一回で瀕死だろう...。


 なので防具は自重せず、本気を出す!


 武具錬成起動。


 形状”武具屋で見た皮の鎧にアール・ヌーヴォー様式の花柄を焼入れしたもの”で、

 材質”軽量な皮”

 特性”完全物理耐性”を持った

 武具”皮の軽鎧”を

 出現方法”身体に装備した状態で出現”

 属性”パーマネント”


 身体が青白い光に包まれると同時に、急激な眠気に襲われ、私はそこで意識を失った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ