3-21 「踏破」
投稿遅れました。
長くなってしまいましたが、いよいよ今回で迷宮回は終わりです。
ー宗教国家エピクロス 首都ラミア郊外 鍵の迷宮
『フレア!』
『フレアリング』に念じると辺り一面が炎の海に包まれる。
高い魔法耐性を持つスライムにはほとんどダメージが通らないが、スライムは魔法により硬直する。
「クリス姉ちゃん!」
そしてクリス姉ちゃんがスライムに突撃し、刺突を叩き込む。
「はっ!!」
スライムは”クリストフォルス”に触れた途端に蒸発する。
もうこの作業は数十回と繰り返されて来た。
特A級のスライムが安全、確実に屠られていく。
その非現実的な光景に、エッジワースさんは元より、”黄金の輝き”ですら言葉を失っていくのであった。
「9階層にスライムが出るって話は聞いていたが...。まさか10体以上も繁殖してる何て聞いてないぞ...。
で、俺が一番信じられないのは...そのスライムが秒殺されていくこの光景だ...。」
エッジワースさんが呆れ返って話す。
「油断するつもりはないけど...まさかここまで簡単に倒せるなんてね...。」
クリス姉ちゃんが”クリストフォルス”を見詰めながら感慨深く言う。
「その剣の事は、他の奴には話さない方がいいだろう...。下手したら国家間で取り合いになって戦争を誘発しかねない...。」
ロビラさんが深刻そうに言う。
いつになくロビラさんが真剣だ...。これはドワーフから見てもそれだけの代物らしい...。
「”黄昏の輝き”は大丈夫として、エッジワース...あなた...。」
クリス姉ちゃんがエッジワースさんをジト目で見つめる。
「いやいや話さねぇよ!命の恩人を売るような事はしない!A級冒険者の資格に誓って話さない。
それに俺だってその剣のヤバさ位分かるつもりだ...。」
エッジワースさんが全力で首を振りながら、否定する。
ふとクリス姉ちゃんの方を見ると、スライムが蒸発した場所を調べていたので、気になって聞いてみる。
「クリス姉ちゃんさっきから何やってるの?」
「んーちょっと捜し物を...あっ!良かったあった!」
するとクリス姉ちゃんは、私に地面で拾ったものを見せてくれる。
それは黒曜石の様なもので、黒く妖しく光っていた。
「何これ?」
「コレはスライムの核よ。
実はザブ依頼でアリス教皇から、スライムの核を出来れば入手して欲しいって言われてたの。
ただ倒せば確実に手に入る物でも無いし、そもそもスライムを倒せるかどうかすら分からないから、サブ依頼になってた見たいだけどね。」
なるほど。
確かに10体以上のスライムを倒して、やっと1個手に入るんじゃ、最初から期待しないよね。
「ん?そんな依頼受けてないぞ...?」
そこでエッジワースさんが口を挟む。
「え?私のパーティだけへの依頼?」
確かにそれは気になる...。なぜ...?
全てのパーティに依頼した方が”スライムの核”が手に入る確率は上がりそうなもんだけど...。
「分からねぇが...アリス教皇が俺達に言わなかったんだから、聞かなかった事にしといた方が長生き出来そうだな...。」
「そ、そうね...そうして貰える方がいいわ...。」
クリス姉ちゃんはバツが悪そうに舌を出す。
そして、私達は9階層を隈無く探査し、スライムを完全に全滅させた事を確認して、帰路に着く。
因みに『フレアリング』は、スライムを粗方倒し終わった時に「使用回数が切れた見たい」と言って、”タダの銀の指輪”にすり替えておいた。
あの威力の『フレア 』が誰でも無限に打てるマジックアイテムを泳がせておくのは流石にまずいからね...。
ー宗教国家エピクロス エピクロス城 謁見の間
「ふーん...じゃあ9階層には数十のスライム達が溢れ返っていたと...?」
14歳くらいの少女が玉座にふんぞり返りながらクリス姉ちゃんの報告に対して質問する。
私達”黄昏の輝き”は地上に戻ると早速アリス教皇へと今回の迷宮の事を報告した。
因みにエッジワースさんとは地上に出て直ぐに別れた。仲間達の弔いをしたいとの事だった...。
「教皇!いくら何でも有り得ません。
スライムは1体でも特A級に相当する魔物。それが数十となると如何に”清輝のクリスティーナ”率いる”黄昏の輝き”と言えども、太刀打ち出来ないでしょう。」
ディオティマ大司教が横槍を入れる。
「教皇。これを!」
クリス姉ちゃんが一歩前には出て、跪きながら”スライムの核”を差し出す。
「ん?クリスティーナ...それは何かしら?」
「ご依頼に預かりました。”スライムの核”です。」
「なっ...本当なの...!?」
クリス姉ちゃんの発言と共にアリス教皇の表情に驚愕の色が混ざる。
そしてすぐ様魔道具によるアイテム鑑定が行われ、本物だと確認される。
「まさか...本当に手に入れてしまうなんてね...クリスティーナ...流石よ...。」
アリス教皇は目尻に涙を浮かべて感慨深く”スライムの核”を見つめる。
その姿は先程までの威厳のある姿では無く、年相応の少女の佇まいだった。
「でも、”核”はスライムを倒せば確実に手に入る訳じゃないのでしょう?」
「はい。ですので、10数匹倒した所でやっと1つ見つけたのです。」
クリス姉ちゃんが真剣な面持ちでアリス教皇に進言する。
「やはり貴方に託して正解でした。アポステリオス教教皇として、最大の感謝の意を表します。
そして、望むものをいいなさい。私に出来る事であれば何でも叶えましょう。」
アリス教皇がクリス姉ちゃんの真剣さに向き合う様に真摯に答える。
そしてクリス姉ちゃんは突然立ち上がり、一呼吸置いてから話し始める。
「...では遠慮なく進言させて頂きます。
ここエピクロスに傭兵団黒の大剣の活動拠点及びその為の施設を譲渡して下さい!」
えぇぇぇぇ!!!???
次回は土曜日投稿予定です。
ここから急展開です。




