3-15 「鍵の迷路」
ついに50話目です!
ー宗教国家エピクロス 首都ラミア郊外 鍵の迷宮
「仲間を助けて下さいっ!!」
槍使いの男が私達に必死に懇願して来た。
「一体どうしたの?」
クリス姉ちゃんが事情を確認する。
槍使いのラッセルさんの話をまとめると。
この先は”鍵の間”で、幾つもの四角い小部屋が碁盤目状に広がった迷路になっており、それぞれの部屋に3つの鍵が掛かった扉がある。
そして部屋に入ると魔物が出現し、全て倒すと扉の鍵が開く仕組みになっている。
さらに厄介なのが、その部屋には1人で入らないと魔物が出現せず、鍵が開かない。
その為、魔物とはそれぞれの部屋で一体一のサシで戦わなければならないのだ。
因みに以前の調査ではこんな仕掛けは無かったそうだ。
「...それで、この中であなたのパーティ”ウェザーコック”のメンバー3人とはぐれたのね?」
「そうなんです...。それでもう一度中に行こうとしていた所に”黄昏の輝き”の皆さんが見えたので、一緒に行って貰えないかと。」
ラッセルさんが縋る様な表情でクリス姉ちゃんに話す。
「わかったわ!どのみち私達もこの先に用があるからね。
でも問題は1人づつ行かないと行けないってとこね...。私とロビラは特に1人でも問題ないけど、前衛じゃないシルヴィアとジャスミンを1人には出来ない。
ここは先に私達2人とラッセル達3人が中に入って様子を...」
クリス姉ちゃんが難しそうな表情をしながら作戦を練る。
ん?何か忘れてない...?
私はクリス姉ちゃんの話に割り込む。
「あの...クリス姉ちゃん。皆で行って、私が片っ端から扉を開けていけばいいんじゃない?」
私の発言に一同静まり返り、ラッセルさんが声を掛けてくる。
「お嬢ちゃん...ここは5階層だ...。要求される解錠スキルのレベルも跳ね上がって来てるんだ。
とてもじゃないがそんな悠長な事をしてたら俺の仲間は...」
「それよっ!!何も迷宮のルールに従ってやる謂れはないわ!」
クリス姉ちゃんが大声を上げて私の肩を叩く。
ラッセルさんは状況が掴めないのかキョトンとしている。
そう言う訳で、私達の”ルール無視解錠作戦”が始まった。
最初の扉の鍵を確認したが、武具錬成で簡単に空いた。
「そんな...信じられない...なんて速さだ...。」
ラッセルさんは私が10秒程で解錠した扉を見て、驚愕の表情を浮かべる。
そうして、ラッセルさんのパーティメンバーを探しながら私が扉の鍵を解錠していると、7つ目の扉で鍵穴の無い扉を発見する。
「あ...この扉は解錠出来ないよ...。鍵穴が無いもん...。」
私は扉を指さしながらクリス姉ちゃんに言う。
すると、脳に直接響く様な低い声がする。
『貴様らっ!吾輩の芸術的な迷宮美学を穢しおって!
ルールに従えぬと言うのであれば吾輩が直々に相手をしてやろう!』
次の瞬間部屋の床が光ったと思うと、私は経験した事がある浮遊感を感じ、周りの景色が一瞬にして変わった。
どうやらまた転移させられたらしい。
目の前には炎の鎧を身に纏った、赤褐色の皮膚を持つ魔物が腕を組んで仁王立ちしていた。
「貴様か?吾輩の芸術を穢さんとするのは...。」
うっ、何か厳ついのが出てきた...!
「うっ...あっ...。」
うめき声の様な声が聞こえてふと目を横に向けると、焼け焦げた黒いローブに身を包んだ女性が横たわっていた。
女性からは煙が上がっているが、時折うめき声が聞こえる事から辛うじて息はあるようだ。
もしかして、彼女がラッセルさんのパーティメンバー?
「ほぉ、余所見とはいい度胸だな。吾輩を炎の魔人”イフリート”と知っての狼藉か?
罰として貴様も直ぐにそいつと同じ様に消し炭にしてやるっ!」
そう言うとイフリートは右腕を前に差し出す。
『フレア!』
『インビジブルシールド!』
イフリートが魔法を唱えようとした直前、目の前に何とか不可視の盾を展開する。その直後イフリートから凄まじい熱線が照射されたかと思うと、次の瞬間部屋全体に凄まじい爆発が起こる。
うっ...痛っ...!
不可視の盾のお陰で直撃は避けられたが、『フレア』は初級魔法の『ファイヤーボール』と違い空間を爆撃する魔法の様で、周りの爆風と熱により、顔や手など露出している部分に火傷を負った様だ。
「ほぉ?そんな皮の鎧で良く立っていられるな?
しかし、ダメージを受けていない訳では無い様だ。ならばもう一度喰らうがいい...。」
まずい...こいつ...今までの敵と次元が違う...!正体がどうとか言っている場合じゃない。
幸い今この部屋に居る人間は、私と床で横たわってる女性だけだ。後で何とでもなるだろう。
そう心の中で言い聞かせ、私は早着替えを行い、黒騎士となる。
「ほぉ...それが貴様の本気か...!だが結果は同じだ!燃え果てよっ!」
『フレア!』
『インビジブルシールド!』
私は不可視の盾を今度はイフリートの目の前に展開し、自爆を誘発させる。
想定通り、イフリートの周りで爆発が発生し、イフリート自身が炎と爆風に飲み込まれる。
「なっ!何をした?
だが残念だが吾輩に魔法は効かぬ。
貴様にも魔法が効かぬと言うので有れば、殴り殺す迄だ!死ねいっ!」
するとイフリートは右腕を掲げ、凄まじい勢いでこちらに向かって来る。
だが、その直線ルートにはさっき貼った不可視の盾がまだあるから、このままだとリーコック同様自滅するはずだ!
が、イフリートは一瞬不可視の盾に阻まれたものの、何事も無かったかの様にそのまま突っ込んで来るのであった。
え?まさかあの炎に包まれた右腕で不可視の盾を溶かしたの!?
こうなればイフリートを近付かせる訳にはいかない!あんなのに触れられたら鎧事溶かされてしまう!
『ソードオブパニッシュメント!』
神罰の剣が直撃し、イフリートの炎の鎧を貫く。
「ぐおっ!?何だこれは!」
だがイフリートは死ななかった。
初めてだ...神罰の剣をまともに食らって生きているなんて...!
威力が足りないなら、数で補えばいい...これならどうだ!
『ソードオブパニッシュメント デュアル!』
イフリートの足元から2本の大剣がクロスする様に出現し、更にイフリートを貫く。
「がぁっ...!ば、馬鹿なっ!吾輩がこんな子娘に...!ぐおぉぉぉぉぉ!」
そうイフリートは言い残し、塵も残さず霧散した。
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