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3-13 「アタラクシア」

 一昨日のデイリーランキング16位でした。ブクマ&評価ありがとうございました!

ー宗教国家エピクロス 首都ラミア郊外 鍵の迷宮


 古代ギリシャの哲学者エピクロス曰く。


 『快楽を追求すればするほど、人は欠乏感に悩まされる。

 本当の幸福とは、財産がたくさんあるとか、地位が高いとか、権力を持っているとかでは無く、悩みのない事、感情の穏やかな状態、魂の平穏(アタラクシア)だと。』


 フランケルは快楽を追求する余り自らの魂の平穏(アタラクシア)を失い、更には私達の魂の平穏(アタラクシア)を侵害したのだ!

 ”お仕置き”が必要だろう...。


 私は経済学部だが、哲学と心理学も多く履修している。元々この3つの学問の起源は同じで、共通点も多い。

 そして今回のケースでは、相手に”恐怖心”を植え付ける心理学が活かせるだろう。

 人間は『理解出来ない物』や『自分がその事柄に対抗できる”力”を持っていないと気づいた時』に恐怖を抱き、嫌悪し、排斥する傾向がある。

 例えば”お化け”が世間一般で恐怖の対象とされているのは、科学で証明出来ず、物理的に対処出来そうに無い事から来ている。

 だからこの2点をつけば、フランケルを恐怖に陥れ、従属化させる事が出来るだろう。


 私はフランケルに向かってゆっくりと歩き出す。

 この手のお約束(・・・)で警戒しないといけないのは、瀕死の相手から飛び道具が飛んで来て、逆転されると言うパターンだ。

 そう言う訳で、ベルトから『風刃改』を外し、いつでも抜刀出来る状態にしておく。



 そんな事を考えていると案の定フランケルが双剣を構え、上半身のバネだけで投げつけて来る。


「死ねぇぇぇぇ...!!」


 私はそれに対応して抜刀し、敢えて(・・・)『風刃改』の『ウインドカッター』で撃ち落とす。


「なっ...!何をしたんだっ!?」


「我が部族に伝わる剣技、飛剣”辻風”よ。」


「馬鹿な...!聞いたことも無い...!それにそんな細い腕で剣を振っただけで僕の双剣を弾き飛ばせる訳が...。」


 フランケルは半信半疑と言った感じで、訝しげな目で私を見つめる。


「ふふふっ...あなた、もしかしてまだ私がただの人間(・・・・・)だと思っているの?」


 ここで揺さぶりを掛けるか...。


「なっ...!?あの膨大な魔力...ま、まさか...!ま、魔族...なのかっ!?」


 よし掛かった!この世界の魔族がどう言った存在かは分からないが、勝手に勘違いしてくれている。ここは乗っかっておこう。


「ふっ...やっと気付いたの?」


 ここで私は出来るだけ冷徹に、嘲笑する様にフランケルに言う。


「そそそ、そんな馬鹿なっ!?何故エピクロスに..エピクロスの国境には魔族避けの結界があった筈だ!」


 フランケルはさっきまでと打って変わって急に怯え出す。”魔族”と言うのがフランケルにとっての”お化け”なのだろう。


「私を低級の者共と一緒にしないでくれる?

 私にかかればあの様な”オモチャ”を掻い潜るなど造作もないわ。」


「な...オモチャだと...!?テリス様の結界をオモチャ呼ばわりとは...お前(・・)は一体どんな上位種族なんだ...!?」


「”お前”...?口を慎め、人間っ!」


 私は急に逆上したフリ(・・)をして、『風刃改』をV字に切り下ろし、フランケルの左右に『ウインドカッター』を撃ち込む。するとフランケルの周りの床に2本の亀裂が入る。

 これは演出だ。些細な事で急にキレて、刀を振り回して来る奴の思考なんて『理解できない恐怖』だろう...。


 案の定これは効果抜群でフランケルは口をパクパクと動かし、恐慌状態に陥っている。


「た、助けて...あ、僕を殺したらクリスティーナの居場所が分からなくなるぞ...!」


「大丈夫よ。えっと...”ダルマ”だっけ?望み通り”ダルマ”にしてあげる。

 そうすれば教えてくれるでしょ?」


 私はそう言ってニヤリと笑い、『審判の剣(ジャッジメントソード)』をアイテムボックスから取り出し、剣先をフランケルの両腕の付け根に擦り付ける。


「や、や、止めてくれっ...!ぼ、僕が悪かった...話す!話すから!許してくれっ!」


 まぁこのABS樹脂製の審判の剣(ジャッジメントソード)で幾ら斬っても痛くも何とも無いと思うけど、この剣は見た目が神々しく、重量がありそうで切れ味は良さそうだ。


「許してくれって...私がそう言ってもあなたは許してくれたの?」


「そ...それは...あ、がが...。」


 私が審判の剣(ジャッジメントソード)でフランケルの腕の付け根を擦り付けていると、恐怖の為かフランケルは泡を吹いて気絶してしまった。

 どうやらやり過ぎてしまった様だ。

 しかし、私は油断しない。この手の奴は隙を見せるとすぐに手の平返しをしてくるものだ。保険は掛けておく。



 私は気絶したフランケルに『エクスヒール』を掛け、両足を再生させ、懐のナイフやポーション類を没収した。

 懐を漁っている時に気付いたが、この人...漏らしてるよ...。

 私はそれを洗い流す意味でも、気絶しているフランケルにウォーターボールを放つと、フランケルは勢い良く目覚める。


「ぐはぁ!が...はぁ...はぁ...。腕が...ある!あ、足も...!」


 フランケルは自分の肩と足を撫でながら立ち上がる。


「じゃあ早速、その治った足でクリス姉ちゃんの所に案内して。

 因みに嘘をついたり、私に不利になる様な事をすれば”腕が千切れる魔法”を掛けたから気を付けてね。」


「そんな魔法聞いた事も無いけど...わ、分かってるよ!案内するよ、クリスティーナの転移先へ。

 先ずはこの部屋を抜けて右だ。」


 そう言うとフランケルは、部屋を出て右に歩き出す。


「本当にそっちにクリス姉ちゃんの転移先があるのね?」


「あぁ、こっちだよ。こっち側に...!?ぎゃあああぁぁぁ!!!腕がぁあぁぁ!!!千切れるぅぅぅ!!!」


 やっぱり嘘か...この人も懲りないなぁ...。

 腕が千切れる魔法ってのはブラフだけど、そう言われて腕の付け根から激痛が走れば、信じてしまうだろう。フランケルは肩を抑えながらのたうち回っていた。


「やっぱり嘘ね...。本当はあっち?」


 私は左側を指さす。


「は...はい!が...あぁ!!ぞうでず!!ぐっ...だがら腕はどうがぁ!!」


 フランケルは肩を抑えながら懇願する。



 その後は流石にフランケルも懲りたのか、嘘をつく事無くもう一つの転移先だという場所に真っ直ぐ向かった。


 明日もキャラクター紹介を投稿予定です。

 なお作者ページの『活動報告』にて”キャラクター人気投票”を行っておりますので、投票お待ちしております!上位キャラは閑話や挿絵を追加予定です。

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