3-12 「モンスターハウス」【挿絵】
4万PV達成です!
これも読者の皆様に支えられての事です。ありがとうございます!
記念に主人公の茉莉花を描きましたので、今回は挿絵付きです。
「須藤 茉莉花」
ー宗教国家エピクロス 首都ラミア郊外 鍵の迷宮
一瞬の浮遊感の後、周りの景色が一変した。
どうやら状況から察するに、私は”転移の罠”によって”強制転位”させられたらしい。
しかし、おかしい...私は確かに罠を検知して、皆に罠の場所も伝えた筈だ。何で発動したの...?
でも、今はそんな事を考えている余裕は無かった。何故なら、数えるのも馬鹿らしくなる程のトロールに取り囲まれていたのだ!
「くっ...囲まれてる...!?」
「ジャスミンちゃん!大丈夫かっ!?
すぐにそっちに行く、少しだけ持ち堪えてくれっ!」
私が声を発すると魔物の群れの奥から、フランケルさんの声が聞こえる。
「分かりましたっ!」
私は『風刃改』を抜き、一番近くに居たトロール目掛けて切り下ろす。剣先はトロールには届いていないが、『風刃改』の刃から発生するウインドカッターにより、トロールは両断される。
冒険者ギルドのお説教で得た知識によると、トロールは脅威度Dに属する魔物で、ドラゴンに比べて力はあるが鈍重な為、そう攻撃が当たるものでは無い。私は難無く周りのトロールを『風刃改』で両断していく。
「大丈夫かい?ジャスミンちゃん!」
暫くするとフランケルさんが駆け付けてくれ、その双剣で一気に周りのトロールを切り刻む。流石はB級冒険者だ。
「はぁ...はぁ...助かりました。ありがとうございます!」
ABS樹脂並に軽い『風刃改』とは言え、振り回していると体力の無い私では息があがるのだ...。
部屋のトロールが全滅したのを確認し、フランケルさんにお礼の言葉を掛ける。
「...クックックッ!そうか、ありがとうか...。これから君は悲惨な目に合うって言うのに感謝される何てね…。」
フランケルさんの雰囲気がさっきまでとまるで違う。それに悲惨な目って...。
「何も気付いていない様だね...。あの転移の罠を踏んだのは僕なんだよっ!
僕はこの迷宮の3階層までは熟知している。罠の位置も殆ど暗記してるんだよ!」
「なっ...!一体何の為に?」
私は血が逆流する様に身の毛が弥立つのを感じた。
「それは勿論、君を犯す為さ。初めて君を見た時、ビビっと来たんだ。黒くて艶やかな髪、大きくて気の強そうな瞳、そして平らな胸。
嫌がるところを全部舐め回して、殺して、ぶち込んでやりたいってね!」
こ、こいつ、ロリコンでネクロフィリアとかダブル役満だよ!
「でもね、クリスティーナの奴が邪魔だったんだ。アイツには勝てない。だから、こうやって分離させたんだ。
この部屋で君が死んでも、トロールに殺されたとしか思えないから死体の処理も楽だしね!」
「そんな事の為に...皆を転移させたの!?
あなたのパーティメンバーも居たのに...。」
「そりゃあ大丈夫だ。何たって向こうにはクリスティーナの奴が居るんだからね!」
「くっ...何て自分勝手な...。
でもそう言う事ならあなたはこの罠を熟知していて、転移先の部屋の位置も全て暗記しているのね?」
「そうだよ。
でも、そんな他人の心配じゃなくて自分の心配をした方がいいんじゃないかな...?
ふふふ...抵抗したきゃ、してもいいよ。”ダルマ”ってのも悪くない...いやむしろしてみたかったんだよね...!」
そう言うとフランケルはいやらしい笑を浮かべながら私に近付いてくる。
クリス姉ちゃんの部屋の場所も知っているなら、こいつを殺す訳にはいかない。それに他の”銀狼”のメンバーもグルの可能性もある。下手に刺激しない方がいいだろう。
なら先ずはこいつを無力化する!
『ウインドカッター!』
私はフランケルの両足目掛けてウインドカッターを放つ。先ずは足を刈り取って動けなくする。容赦は無い...。こいつはしてはいけない事をした。私を殺そうとしただけでなく、みんなを...クリス姉ちゃんも巻き込んで...!
しかし、ウインドカッターはフランケルの足元のローブに当たり、霧散した。
「へっ...やっぱり君嘘付きだったね。ますます気に入ったよ!
こんな強力な初級魔法を詠唱省略で使える子が、”戦闘は苦手”?
だけど、甘かったね。空間魔法の使い手だから、攻撃魔法の1つや2つ使えると思って用心しておいて正解だったよ。」
休憩の時、私はフランケルに装備や使える魔法など、色々と質問されたのだ。私の攻撃手段を予め確認していたのだろう。
そして、魔法対策としてこの魔法耐性を持つ”黒いローブ”を装備したのだ。
でもこいつにはこれからクリス姉ちゃんの転移先を吐いて貰わないといけない為、殺せない。武具錬成は見せたくないから、魔法だけで倒さないと...。
『ウインドカッター!』
「ふっ...何度やっても無駄だ!」
『ウインドカッター!』
『ウインドカッター!』
『ウインドカッター!』
『ウインドカッター!』
「くっ...無駄だと言っているだろう!」
確かにフランケルにダメージは無さそうだがフランケルは少しノックバックし、よろめいた。
あの黒いローブにより、ウインドカッターの風の刃は消せても、発生した風圧全てが消えている訳では無いのだろう。恐らく魔法で発生する物理現象までは消せないのだ。
そして、あの黒いローブを使う時は両手でローブを張っていないといけないらしく、私が魔法を使っている限り、フランケルは動けない様だ。
なら...私はフランケルに分からない様に武具錬成を起動する。
形状”Vライン状”の、
材質”銀”の
特性”念じると対象に『ウォーターボール』を発動”を持った
武具”指輪”を
出現方法”左手の中指に付けた状態で出現”
属性”パーマネント”
水魔法『ウォーターボール』は傭兵登録の時にシルヴィアさんに見せて貰っていたので覚えている。
そして、錬成した『珊瑚の指輪』に私は”念じた”。
『ウォーターボール!』
「ぶはっ!水魔法も使えたか!?だが無駄だ、僕に魔法ではダメージを与えられないっ!」
強がってはいるが、フランケルは最初少しびっくりしていた。
無理もない、この『ウォーターボール』の水は結構冷たいのだ。その冷たい『ウォーターボール』を黒いローブは打ち消したが、それはフランケルの目の前で水球を破裂させただけで、フランケルに水が降り注いでいた。
『ウォーターボール!』
「ぐあっ!」
『ウォーターボール!』
「ぐっ!」
『ウォーターボール!』
「うぐっ!」
『ウォーターボール!』
「あっ!」
「ば、馬鹿な事を!こんな魔法の使い方をすればすぐに魔力切れになるぞ!」
うん、普通そう思うよね。
でもね、私の魔力は最初から”0”で、魔道具を使っているだけだから魔力切れは無いんだ。
大分フランケルの身体が冷えて来たところで、私は再び『ウインドカッター』を放ち、風を送る。
『ウインドカッター!』
『ウインドカッター!』
『ウインドカッター!』
『ウインドカッター!』
『ウインドカッター!』
冷水が染み込んだ服の上から強風を浴びせるのを繰り返す。濡れた服と強風が体温を奪いフランケルは目に見えて疲弊していた。
そしてついに疲労と強風のノックバックからか集中力が切れ、黒いローブから手を離してしまう。
『ウインドカッター!』
「しまっ...!ぎゃぁぁあああぁぁぁ!!!」
フランケルは両足を切断され、バランスを崩し地面に転がる。
────さあ、お仕置きの時間だ。
余裕がある時に他のキャラクターも描いていこうと思います。
せっかくなので次に描くキャラは、読者様の投票で決めたいと思いますので、『活動報告』にてトピック作りますので、宜しければ是非リクエストをお持ちしています。
取り敢えずリクの期限は~3/18(日)としますので、是非『活動報告』までお気軽にコメント下さい!




