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3-10 「鍵の間」

 今話から暫くダンジョン回です。

ー宗教国家エピクロス 首都ラミア郊外 鍵の迷宮


 鍵の迷宮の中に入り、少し進むと小部屋があり、その小部屋の中には左、真ん中、右に金属製の扉があった。


「おぉ、”黄昏の輝き”の方達ですか...!

 僕はB級冒険者のフランケルです。

 さっきはまさかこの迷宮を潜る様なレベルの冒険者で、”黄昏の輝き”を知らない奴がいるなんて驚きでしたよ!」


 そう言って羽根つき帽子を被った金髪のイケメン冒険者は「ははは!」と爽やかに笑った後、説明を始める。


「この部屋は迷宮内に幾つかある”扉の間”の一つです。過去の攻略情報によると、右の扉が最短ルートなんですけど、A級のトレジャーハンターでも解錠に丸一日は掛かるそうです。

 で、一番左は遠回りになりますが、15~20分位で解錠出来ます。真ん中は左右のルートの真ん中位で、解錠に要する時間は1~2時間程度だそうです。

 まぁ遠回りって言ってもこの階層はドラゴンしか出ないので僕達なら左ルートでも4時間程で各ルートの合流地点に辿り着けるでしょう。

 そう言う訳で、今トレジャーハンターが一番左の扉の鍵と戦ってるところなんですよ。」


 さっきの様な事もあったけど、基本的に冒険者達は協力的な様だ。

 いや”鋼の咆哮”も協力的だったとは言えるのか...。


 私は右の扉の鍵穴を覗き込んだ後、クリス姉ちゃんに耳打ちする。


 (右の扉でも解錠は問題無さそうだけど、どうする?)


 (どれ位でいけそう?)


 (10秒もあれば。)


 (え?流石ジャスミンね!

 だけどさっきみたいにユニオンを組もうとか言われてもやりづらいし、すぐに開けずに左の扉が開いてある程度冒険者が減った後進む方がいいと思うわ。)


 (了解っ!)


 そういう訳で私達は左の扉が開くまで他の冒険者と同様に待つ事にした。






「開いたぞ!」


 15分程経つと左の扉の解錠に成功したらしく、ゾロゾロと他の冒険者達が左の扉に群がる。


「開いたみたいですよ?」


 先程のイケメン冒険者が私達に声を掛けてくる。


「私達は右ルートで行くのでお先にどうぞ!」


 クリス姉ちゃんが答える。


「あれ?聞こえませんでしたか?右の扉は解錠に丸一日はかかるんですよ?

 どう考えても既に開いた左ルートで地道に行く方が良いでしょう?」


 フランケルさんが首を傾げて再度ルートの説明をして来たので、私はクリス姉ちゃんに耳打ちする。


 (1組位のパーティなら着いてきても良いよね?)


 現在”扉の間”に残っているパーティは、”黄昏の輝き”を除くとフランケルさんのパーティだけだった。


 (うん、それ位なら別に邪魔になんないかな。)


 クリス姉ちゃんの許可を得たので私は右の扉へと歩いて行く。

 と、その時、さっきまで開いていた左の扉が自動で閉まり、ガチャと言う音が”扉の間”に響く。


「あぁ!時間切れだ!

 鍵の迷宮の扉は一定時間経過すると自動で鍵が掛かる魔法が掛かってるんですよ...。」


 そう言うとフランケルさんはガックリと肩を落とす。私はフランケルさんを尻目に武具錬成を起動し、右の扉の鍵を創る(・・)


「あ...君はトレジャーハンターなのかい?でもその扉は君が手に負える様なレベルの扉じゃないよ。

 悪い事は言わないから左の扉の解錠を頼むよ...。」


「あ、開きました。」


 私は扉を開けて、解錠出来たことを伝える。


「おっ、早いな!やるなジャスミン!流石クリスが連れて来ただけのことはあるなっ!」


「ジャスミンちゃん凄いです。コレならかなり早く奥に辿り着けそうですね!」


 ロビラさんとシルヴィアさんが私に賞賛を贈りながら中へと入って行く。ロビラさんに通りすがりざまに頭を撫でられる...が、痛い。どうやら力加減が出来ないらしい...。

 クリス姉ちゃんは鼻高々と言った感じで鼻歌混じりで二人に続いて中に入る。


「あの?確か時間経過で自動的に閉まっちゃうんですよね?

 そろそろ時間かと思うんですが...。」


「あ...そ、そうだね!」


 固まっていたフランケルさん達は我に返り、私がさっき開けた右の扉へと猛ダッシュで駆け込む。




「はぁ...良かった、間に合った!

 それにしても君凄いね!流石”黄昏の輝き”の一員だ。一体どんな方法を使ったんだい?」


「それは秘密ですよ。」


「ははは。そうだよね!

 まぁ、そう言う訳で僕達のパーティ”銀狼”もお供させて貰うね!よろしく!」


 そう言うとフランケルさんは私の頭に軽く手を置く。何だか分からないがゾワッとする妙な冷たさを感じた。

 これはイケメンオーラなのか...?私が子供で女として見ていないだろうけど、女の子に対して軽々とボディタッチをしてくる男の人って苦手だ...。

 


 扉の向こう側へと出ると少し広めの回廊が続いていた。ここで私はアイテムボックスから”トンファー”を取り出す。コレは事前に錬成した魔法武器で、壁や床の魔力を感知して指し示す、所謂ダウジングマシーンの様なものだ。

 因みにトンファーの形をしているのは、私の能力は武具しか錬成出来ないからだ。


「へぇ不思議な魔道具ですねー。これって私達の魔力には反応しない様に出来てるんですね。」


 魔道具が気になるのか、シルヴィアさんが興味深そうに『ダウジングトンファー』を観察する。




 私がトンファーを前に突き出しながら先頭を歩いて行くとクリス姉ちゃんの呼び止める声が聞こえてくる。


「ドラゴンよ、ジャスミンは下がって!」


 クリス姉ちゃんの声で戦闘態勢に入る”黄昏の輝き”と”銀狼”のメンバー達。私はクリス姉ちゃんの後ろに控える。

 そう言えば話では何度か聞いたことあったけど、ドラゴンを見るのは初めてだ。


 すると次の瞬間、暗闇の中からカンガルーの子供程度の大きさの赤色の鱗に覆われた小動物が3匹程飛び出してきた。


 あれがドラゴン?なんかちょっと可愛いな。

 しかし、魔物は魔物、クリス姉ちゃん達を見ると敵意を剥き出しにして襲い掛かかり、クリス姉ちゃんが前に出てそれを返り討ちにする。

 早い!クリス姉ちゃんの愛剣のレイピアで1回刺突しただけに見えたが、地面には3匹のドラゴンが倒れている。


「流石”清輝のクリスティーナ”ですね。無駄の無い動きです。」


 フランケルさんがクリス姉ちゃんに賞賛を贈る。この人はクリス姉ちゃんの()を見て話している。うん、感心感心。



 

 途中何度かドラゴンと戦闘になったが、遭遇した瞬間からクリス姉ちゃんが秒殺して行くので、殆ど立ち止まる事も無く、”近道”をした事もあり、あっという間に第二階層への下り階段を見つけた。


 ブクマ&評価ありがとうございます。励みになります!

 次回は土曜投稿予定です。

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