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3-9 「破壊神ロビラ」

 今話から暫く迷宮回です。

ー宗教国家エピクロス 首都ラミア郊外 鍵の迷宮


 鍵の迷宮の入口に到着すると10グループ以上の冒険者パーティが集まっていた。恐らく国から依頼を受けた他の冒険者だろう。

 あ、良く見るとメリッソスも混ざってる。どうやら”黄昏の輝き”に入れなかったから他のパーティに入ったのだろう。


 これは昨日クリス姉ちゃんから聞いた話だが、国からの指名依頼を受けたのは私達の他にも複数おり、今日の定刻から一斉にこの鍵の迷宮に潜る事になっている。

 これは熟練の冒険者達で一斉に迷宮を攻略する事により、魔物の数を減らし、少しでも踏破確率を高める為だそうだ。


 周りの冒険者を見渡すと、女4人のパーティは目私達だけの様で、かなりの注目を浴びている。そして、その視線の大半は、クリス姉ちゃんが”清輝のクリスティーナ”だと知っていてか、畏怖する様な視線であった。

 しかし、一部の視線は、クリス姉ちゃんの()に集まっており、どっちにしろクリス姉ちゃんが一際目立っていた。


 

 暫く周りをキョロキョロと見ていると、国の騎士の人が大きな声を放つ。


「冒険者諸君!今日は集まって貰い感謝する!私はエピクロス聖騎士団団長ボロスだ!今から鍵の迷宮の一斉探査を開始する!

 ここに居るのは熟達の冒険者達ばかりと思うが、深い階層ではスライムの目撃情報もある為、心してかかってくれっ!」




 ボロス団長の掛け声で一斉に動き出そうとする冒険者達。私達も動き出そうとした時、ある冒険者パーティから声を掛けられる。


「待ってくれ君達っ!」


「誰よ、あなた達?」


 群青色の髪を刈り上げた、如何にも剣士と言った感じの男性に声を掛けられ、クリス姉ちゃんが誰何する。


「俺達はB級パーティ”鋼の咆哮”だ。見た所君達は盾役が居ない。

 だけど僕達のパーティは盾役も揃ってる。どうだ一緒にユニオンを組まないか?」


 ユニオンとは複数のパーティを合体して、大きなパーティを組む事だ。

 確かに向こうのパーティは盾役が多いが...盾持ちの重戦士3人、剣士2人って脳筋パーティじゃないか!バランスが悪過ぎる...。


「大丈夫よ。盾役なら足りてる(・・・・)から。」


「そこのハンマー使いの重戦士の事か?

 ハンマーは重鈍で攻撃を受けれないから、盾役にはなれない。

 それに見た所君達は全員女の子のパーティで、さらに子供まで混ざってるじゃないか...ここがどうゆう所か分かっているのか?」


 この人もしかして”メサイアコンプレックス”か...。

 この人の動機が”やさしさ”から来るのであれば、クリス姉ちゃんの「盾役なら足りてる」で、引き下がる筈だ。

 しかし、この人は引き下がらず、それどころか説教をし出す始末...。結局この人は人を助ける自分に酔った”メサコン”なのだ。


「あのね...私達は...」


「クリス。あたいに任せな!」


 クリス姉ちゃんの言葉を遮り、ロビラさんが前に出る。


「そんなに心配なら、自分達で試してみたらどうだ?あたいの盾技術をな!

 全員で掛かって来い。あたい一人で全て受けてやんよ!」


 するとロビラさんはスレッジハンマーを両手に持ち替えて地面に叩き付ける。

 するとハンマーの周りの地面に亀裂を走らせ、軽くめり込む。

 一体アレどんな重さなんだ...。


「君は何も分かってない...盾役ってのは力があればいいって訳じゃないんだ。俺一人で十分だ。」


 そう言って群青色の髪の剣士は剣を取る。


「ふんっ!せりゃあ!」


 フェイントもなく剣士の真正面から繰り出される剣戟。ロビラさんはそれを容易くハンマーで打ち返す。ハンマーの重量の為か剣を打ち返された剣士は大きく仰け反る。


「くっ...なら!」


 今度はフェイントを交え剣士が連撃を打ち込む。

 が、ロビラさんはそれを全てハンマーで打ち返す。余りのハンマーの打ち出す速度に、まるで中が空洞の金属バットで打ち返してるんじゃないかと思えてくるが、さっきのハンマーの地面へのめり込み方からしてあのハンマーは相当重い。


「はぁ...はぁ...」


 連撃を繰り返してる内に剣士の方の息が上がり出す。


「そろそろ、後ろの奴も手伝ってやった方がいいんじゃないか?」


 ロビラさんが”鋼の咆哮”のメンバーを煽る。


「その言葉後悔させてやろう。」


 控えていた重戦士3人と剣士が大きな両手剣を構え前に出る。

 ロビラさん一人に対して屈強な男5人の重戦士と剣士が対峙していた。ロビラさんの小柄な体格差もあり、子供を大人が取り囲んでる様にしか見えない。

 幾ら何でもこれは...。


「そりゃ!」

「はぁ!」

「せいっ!」

「うりゃあ!」

「せりゃあ!」


 ”鋼の咆哮”達がロビラさんに向かって一斉に切り掛る。同時に加えられた剣戟だったが、ロビラさんはステップを加える事によりズラし、時間差を発生させ、順番に処理していく。薙ぎ払いはハンマーで弾き、袈裟斬りはハンマーを振子のように反転させ、柄の先の刺股状になった部分で(いな)して跳ね返す。


「「「「「なっ...!!」」」」」


 あっと言う間に”鋼の咆哮”達は地面に尻餅を着いて倒される。


「ってな訳で、あたい一人居れば少なくともお前ら5人よりは上手く盾役をこなせるって訳だ。」


 ロビラさんはハンマーを地面に置き、柄の部分に体重を掛けながら言い放つ。


「な、なぁ、あんた名前は...?」


 最初に話し掛けてきた剣士が震えながら声を掛ける。

 すると私達のやり取りを見ていた他の冒険者から声が掛けられる。


「ロビラだよ。”破壊神ロビラ”だ。それにこのパーティはA級パーティ”黄昏の輝き”だ。お前ら冒険者なんだったら名前だけじゃ無くて、A級パーティのメンバーの特徴も知っとけよ!」


「ろ、ロビラって...!あのマルブランシュで特A級の!?」


「破壊神ロビラ...!」


「「「「「す、すいませんでしたぁぁぁ!!」」」」」


 ”鋼の咆哮”達はロビラに向かって一斉に土下座する。


「おぉ、いいけどよ。その...破壊神っての止めろよ!は、恥ずいだろっ...。」


 ロビラさんが顔を真っ赤にして照れる。さっきのハンマーを振り回していた時とは別人みたいに可愛い。

 因みに”破壊神”の二つ名は、ロビラさんに攻撃した相手が武器を破壊される事から付けられたそうだ。今回は武器を破壊されると迷宮に潜れなくなって仕舞う為、破壊しない様に手加減していたと言うから流石としか言い様がない。




 鍵の迷宮に入る前から一悶着あったが、気を取り直して私達は迷宮へと入って行く。


 次回は水曜投稿予定です。

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