3-8 「ランジェリーショップ」
迷宮探査前のほのぼの回です。今回は転生編で出てきた”あの人”と再会です。
ー宗教国家エピクロス 首都ラミア 商店街
迷宮探査の準備の為、私達は商店街に来ていた。
と言ってもクリス姉ちゃん達”黄昏の輝き”のメンバーは既に準備を終えているので、クリス姉ちゃんは私の付き添いだ。
「ジャスミン、ちょっと寄りたいとこがあるんだよね。」
私の迷宮探査用の道具を一通り揃えた後、クリス姉ちゃんはそう言ってとある店で立ち止まった。
「下着屋さん...?クリス姉ちゃんには沢山買い物を付き合って貰ったし、全然いいよ。」
「うん、ありがと!」
そう言ってクリス姉ちゃんは高級そうなランジェリーショップへと入って行く。
「ところでジャスミン。ジャスミンはジャズと一緒に帝国に行ったんだってね。」
「うん、たまたま助けて貰って、その縁でね。」
え?もしかして何か怪しまれてる...?
「じゃ、じゃあそのジャズの女の人の好みとかって知らない?
大人っぽい人が好きとか、可愛い系が好きとか...。」
あ、大丈夫だ。私がジャズ...黒騎士だって思ってたらそんな事を私に聞いてくる訳が無い。
ってかどうしよ...何て答えようか...。ここはクリス姉ちゃんには悪いが”黒騎士”のタイプでは無い事を暗に伝えて、諦めて貰った方がいいかも知れない...。
「黒騎士さんは、あぁ見えて意外に甘い物とか好きだったから。そう言うのが好きそうな子供っぽい女性が好きかも。」
クリス姉ちゃんは大人びた魅力溢れる美人で、グラマラス体型のどう見ても”大人っぽい女性”だ。
「子供っぽい女性か...。ってか甘い物が好きなの?」
「”カロリーメイド”って言う甘いお菓子を良く食べてたよ!」
「そっか...そうなんだ。それは意外な一面ね!ジャスミンありがとう!
お礼に好きな下着買ってあげるわ!ジャスミンも女の子何だからオシャレしないとっ!」
クリス姉ちゃんはそう言いながら、嬉しそうに貴族の子供用の下着コーナーへと足を運ぶ。
「あ、コレなんてどう?」
クリス姉ちゃんはそう言うと、白い細やかな刺繍が施された小さいブラを私の胸にあてがう。
「いや、私にはこう言うのは...。」
私もこの世界にも子供用の女性用下着があるのは知っていたが、平民の子供がする様なものではなく、初心者冒険者が買える様な値段ではない為、着用していない。
それにだ...必要が無いんだよ...。
「ダメだよ!冒険者は激しい動きが多いんだから。小さい時からブラをしてるとしてないじゃ将来の”形”に影響が出るって先輩冒険者が言ってたわ!」
今日のクリス姉ちゃんは、切れ味が違う...。恋する乙女は何も怖くないって?
「いや...そのお姉ちゃんみたいに無いから...。」
「何だ、そんな事を気にしてるの?大丈夫だよ!ジャスミンも後数年したらこんな風に膨らんでくるからっ!」
そう言うとクリス姉ちゃんは豊満な胸を張り、いつも以上に強調してくる。
私は知ってるんだ...10年後もせいぜいA+程度にしかならない事を...!(血涙)
精神的にノックアウトされた私は、それ以上の抗弁は精神衛生上良ろしく無いと判断し、クリス姉ちゃんの言われるがままに子供用の高級下着を押し付けられた。
────昼の光に、夜の闇の深さが分かるものか。
ニーチェのこの言葉を、今身を持って痛感した。
平たい胸族の闇は、平たい胸族にしか分からないのだ。
因みにクリス姉ちゃんは、水色と白のストライプが入った縞パンを買っていた。
うーん、いや何というか...胸が大きいクリス姉ちゃんには似合わないのではないだろうか...?
一部の層に突き刺さる?はぁ、そうですか...。
私達は買い物を済ませ、その日はクリス姉ちゃん達が泊まっている宿に私も泊まった。
ー宗教国家エピクロス 首都ラミア 宿屋
翌日、今日はクリス姉ちゃんのパーティ”黄昏の輝き”のメンバーと初顔合わせをし、そのまま鍵の迷宮へと出発する。
「おはよう、ジャスミン!」
私が朝食を摂る為に、宿屋の食堂へと降りると既にクリス姉ちゃん達は揃っており、クリス姉ちゃんが声を掛けてくる。
「おはよう、クリス姉ちゃん!みなさんもおはようございます、私はジャスミンと言います。」
「お前がジャスミンか。話は聞いてる。何でもピッキング勝負でメリッソスを下したらしいな!
あたいはロビラだ!種族はドワーフで、このパーティの前衛をやっている。よろしくなっ!」
私より少し大きい位の背丈の気の良さそうな、赤茶髪の女性が元気いっぱいに声を掛けてくる。
因みに種族柄なのか胸は私と”同族”の様だった。
「私はシルヴィアです。魔導師で後衛です。空間魔法が使えるそうですね。よろしくお願いします。」
そう言ってロビラさんの隣の大人しそうなローブを目深に被った女性が自己紹介してくれる。
空間魔法の件は既にクリス姉ちゃんに話してある。非力な私には軽装で迷宮に潜れるメリットは大きいのだ。
そしてこの人は知っている。確か傭兵ギルドで私の試験官をしてくれた人だ!って会ったのは”黒騎士として”だからジャスミンとしては初対面か...。
「もぉシルヴィー!ちゃんとフードを取って自己紹介しなさいよ!」
そう言ってクリス姉ちゃんはシルヴィアさんのフードを取ると、フードの中から薄緑色の髪とピョコンとした垂れ耳が姿を現す。
「キャッ!あ...あの私は...その...羽根耳族...です。」
シルヴィアさんは自信なさそうに私に説明する。
「か、可愛いです!もし良かったら、その...触らせて貰ってもいいですか?」
「あ、はい。こんなので良ければ...どうぞ。」
そう言ってシルヴィアさんは私が触り易い様に、屈んでくれる。
さわさわさわ、むにっ。さわさわ、むにっ。
サラサラの髪と、少し弾力のある柔らかい垂れ耳が至高の触り心地を生み出していた。思わず癒される。
「き、気味悪くないですか?」
シルヴィアさんが心配そうに聞いてくる。
「え?何でですか!こんなに可愛いのにっ!」
「ほらね?ジャスミンなら大丈夫って言ったでしょ?」
クリス姉ちゃんはドヤ顔でシルヴィアさんに言う。
「じゃあ、みんなの自己紹介が終わったところで、パーティメンバーの役割について説明するね!」
クリス姉ちゃんの説明はこんな感じだ。
ロビラさんはスレッジハンマーが得意な重戦士で前衛。
シルヴィアさんは補助魔法が得意な魔導師で後衛。
クリス姉ちゃんはレイピアと回復魔法が得意な、前~中衛。
そして私は刀が得意で中衛。と言っても戦闘は主に3人に任せ、迷宮の扉の解錠、罠の解錠が私の主な仕事だ。
それにしてもクリス姉ちゃんは凄い、メインはレイピアによる近接攻撃だが、あのレベルの回復魔法も使え、さらに攻撃魔法も使える、まさにユーティリティプレイヤーだ。
唯一出来ない事と言ったら、武器の特性上受ける事が出来ないので、”盾役”はこなせない。
だから、それを補うのがロビラさんとシルヴィアさんの補助魔法らしい。
一通り説明を受け、擦り合わせを行った後、私達はラミア郊外にある鍵の迷宮へと向かった。
黒騎士の噂︰黒騎士は甘い物が好き。
次回は土曜日更新予定です。




