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3-7 「ピッキング対決」

 閑話を挟みましたが、メリッソスとのピッキング対決からです。

 3-5誤記修正しました。スライムはオリハルコンは溶かせません。また二つ名はメタルイーターです。

〈茉莉花視点〉

ー宗教国家エピクロス エピクロス城 謁見の間


「ふっ...悪いな嬢ちゃん!こんな美味しい仕事は他にないんでなっ!」


 メリッソスはアリス教皇の掛け声と共に、道具を取り出し、小箱の鍵穴にピッキングツールらしきものを差し込む。


 両手を握り締めて祈っているクリス姉ちゃんを一目見た後、先程錬成した()型のダガーと針金を取り出す。


「はっ!ダガーかよ!俺も舐められたもんだ。まともな道具も持っていないガキと勝負させられるとはなっ!」


 メリッソスはこちらを嘲笑うかの様にピッキングツールをヒラヒラさせながら言い放つ。

 

 そして次の瞬間、()型のダガーを差し込んだ宝箱からカチャリと音がしたのを確認し、ダガーを抜いて小箱の蓋を開ける。


「あ、開きました。」


 私はアリス教皇に小箱の中身が見えるよう掲げる。

 それはアリス教皇が掛け声をかけてから約5秒程の出来事であった。


「なっ...もう開いたと申すのかっ!?」


 アリス教皇が驚き、玉座から立ち上がる。

 隣の神官が慌てて私から小箱を取り上げ、アリス教皇の方へ持って行く。


「うむ、確かに開いておる。この勝負ジャスミンの...」


「ちょっ、待てよっ!」


 メリッソスが愛世代のキ○タクばりに声を張り上げる。


「こんなのおかしいだろっ!こんなに早く開く訳がない。そっちの小箱だけ、最初から開いていたんだ。そうに決まっている!」


 メリッソスがゴネ出した。


 確かに哲学的、論理的に考えればメリッソスの意見は正しい。哲学とは常識を疑う事だ。


 常識で考えれば、

『鍵の掛かった小箱を5秒で開ける事は不可能』

→私は鍵を開けていない

→私の小箱には最初から鍵が掛かっていなかった


 という理屈を導き出しても不思議ではない。

 だが、私は今常識(・・)から外れた能力を使用している。


 彼の敗因は『鍵の掛かった小箱を5秒で開ける事は不可能』と言う経験則に囚われてしまった事だ。


 彼にもヒューム先生の著作を読んで頂きたい。そうすれば彼もきっと『 この世界では常識に囚われてはいけないのですね!(東○谷スマイル)』と悟りを開いてくれるに違いない。




「おいっ!黙ってないで、何とか言えよ!」


 私が哲学的思考に思いを馳せているとメリッソスに怒鳴られた。

 こういう相手には周囲と共に理を認めさせ、外堀を埋めた上で話をしないと何を言っても話にならない。


「じゃあ確認ですが、メリッソスさんの小箱は鍵が掛かっていたんですか?」


「はぁ?当たり前だろう?」


 そう言ってメリッソスはガチャガチャと小箱の蓋を揺すり、鍵が掛かっている事をアピールする。


「では貸してみてください。私が今から”この鍵が掛かった小箱”を5秒で開けて見せます。そうすれば文句は無いですね?」


「はっ!もし出来たらな?だが、出来る訳がないだろ?その箱の鍵を持ってでもしない限り無理だ、そんなの!」


 よし、言質は取った。アリス教皇もちゃんと聞いている。

 私は武具錬成を起動させ、目の前の小箱の鍵付きダガーをまたも皮のポーチの中に創り出す。


「ではいきます!」


 そう言って私は皮のポーチから今創ったばかりの鍵付きダガーと針金を取り出し、小箱の鍵穴に差し込む。

 そして一緒に差し込んだ針金をガチャガチャとそれっぽく動かし、最後にダガーを時計回りに捻る。

 ガチャリと言う音と共に、小箱が開く。


「はい。開きました。」


 またもアリス教皇に中身が見える様に小箱を掲げた。

 

「うむ、確かに開いておる。見事だ。疑って悪かったな、お主は確かに腕の確かなトレジャーハンターの様だ。」

 

「はぁ?ふざけんなよっ!一体そのどんなやり方でインチキしたんだ?そのダガーが怪しい。そのダガーを見せろ?」


 さっきメリッソスではなく、アリス教皇に一番に見せたのは、もはやメリッソスに認めて貰う必要はなく、雇い主であるアリス教皇が認めればメリッソスの意見なんて関係ないからだ。


 そして、今のメリッソスは冷静さを欠き、完全に理性を失っている。こういう相手はまともに相手をするだけ無駄だ。


「トレジャーハンターにおいて鍵の解錠スキルは商売のタネであり、秘中の秘です。

 それともあなたは他人に”解錠のやり方を教えてくれ”と頼まれたら簡単に教えて道具を渡すんですか?」


「メリッソスよ。ジャスミンの言う通りだ。お主に開けられなかった小箱をこの少女はあっという間に二つも空けたのだ。

 これは偶然でもまぐれでも無く、この少女がお主よりもトレジャーハンターとして格上(・・)だったと言う事だ。」


 アリス教皇はメリッソスを諭すように告げる。もうどっちが年上か分からないよね...。


「くっ...覚えてろよっ!」


 メリッソスは三下の定番のセリフを吐いて、謁見の間から出ていった。あれでも一応A級冒険者なんだよ...ね?


 兎も角アリス教皇にも認められたし、コレでクリス姉ちゃん達と鍵の迷宮に行ける!





 謁見の間を出てこの姿では久し振りにクリス姉ちゃんと挨拶を交わす。


「クリス姉ちゃん!」


「ジャスミン久し振りっ!良かった無事で!」


 クリス姉ちゃんがその大きな胸で私を抱き締める。ええい妬ましいっ!


「それにしてもビックリしたよ!ジャズの言う通り、ジャスミンのトレジャーハンターとしての腕はピカイチねっ!」


 私達は暫くクリス姉ちゃんと談笑しながら商店街の方へと向かう。


 次回は水曜投稿です。

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