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3-5 「クリストフォルス」

 クリス姉ちゃんからの衝撃発言からの続きです。

ー宗教国家エピクロス エピクロス城 個室


「クリス...?一体何があった...?」


 クリス姉ちゃんの様子は明らかにおかしかったので、聞いてみた。

 

「...アリス教皇に”鍵の迷宮”に入る様に言われたの。

 で、どうやらそこの奥には”スライム”が群れで出るらしいのよ...。

 今回の指名依頼は命懸けになる...だから鍵の迷宮に行く前に()にして欲しいの。

 さっきはお礼って言ったけど、私の為でもあるのよ。

 だから...お願い...。」


 そう言ってクリス姉ちゃんは私の頭を兜の上から抱き締める。


「だったら我も行こう、その”鍵の迷宮”とやらに。」


「それは無理よ。傭兵は迷宮には入れないの。

 ここエピクロスは中立国だから、国の戦争に加担する傭兵に対して制限があるのよ。」


 クリス姉ちゃんの説明では鍵の迷宮はその名の通り沢山の鍵付き扉と罠があり、解錠しながら進んでいかなければならない。

 そして今回9階層の奥でスライムが確認された事により、エピクロスが危機感を覚え今回の指名依頼をオリガ王国で特A級のクリス姉ちゃんに出したそうだ。

 リョーリカの街の冒険者ギルドでも説教を受けたが、スライムは単騎で特A級の冒険者が充てがわれる様な相手だ。

 因みになぜスライムがそんなに脅威かと言うと”物理攻撃耐性大”と”魔法攻撃耐性大”を持っており、殆どの物理と魔法攻撃は無力化されてしまい、スライムの出す酸はオリハルコン以外の金属を溶かしてしまう事から別名メタルイーターとも呼ばれている。

 そんな化物が今回は群れで出現するとの事だった...。


「しかし、なぜそんな無茶な依頼を受けるのだ...?断ると言う選択肢は無いのか?」


「ジャズにはまだ話して無かったね。

 私が冒険者をやっている理由は、この力で世界中の困っている人々を救う事なの。これを放置していたらスライムが繁殖し続け、やがて街にまでスライムの大群がやってくる事になる。そんなの放っておけないよ!

 それに国王様から聞いたよ。ジャズは世界平和の為に帝国に単騎で向かっていったって。

 だからジャズもこの気持ちを分かってくれるよね...?」


 クリス姉ちゃんらしい”真っ直ぐな”理由だった。”清輝のクリスティーナ”と呼ばれている理由も分かる。クリス姉ちゃんにとっては当たり前の行動原理で、例え命を引き換えにしても成し遂げたい事なのだろう。

 だったら私は全力でクリス姉ちゃんをアシストするしかない...目の前の大切な人を救えなくて、世界なんて救えない。その為のチート(・・・)だ!


「分かった。ならば我にも手伝わせてくれ。」


 クリス姉ちゃんはいつも腰にレイピアを下げているからレイピアが扱い易いだろう。私はクリス姉ちゃんの目の前で武具錬成を起動させる。


 形状”黄金に輝く細長い”、

 材質”オリハルコン”の

 重量”普通”

 特性”スライム特攻”を持った

 武具”レイピア”を

 出現方法”右手に持った状態で出現”

 属性”パーマネント”


「えっ...!?ジャズそれは...?」


 何も持っていなかった右手にレイピアが出現して驚くクリス姉ちゃん。


「これは我の能力で創り出した剣”クリストフォルス”だ。スライムに対して高い攻撃性能を持ち、オリハルコン製の為、スライムの酸では溶けない。」


 そう言ってクリスに”クリストフォルス”を手渡す。

 因みにこの剣の名前は”キリスト(クリス)を運ぶ者”と言う意味があり、まさにクリス姉ちゃんの為の剣だ。


「能力で...創り出したの...!?そんな能力聞いたことも無いよ...。

 いやでも、この感触、重量感、確かにオリハルコンだわ。強い魔力が付与されているのも感じる。」


「この剣でスライムを倒し、生きて帰って来い。だからそれまで”自分”を大切にしろ。」


「っ...!分かったわ。ジャズ...ありがと。

 何だかこうやって男の人に命令されるの...何だか新鮮だな...。

 私はギルドランクA級、オリガ王国では特A級に割とすぐになったから、周りの人はみんな媚びへつらうか畏怖しちゃって、冒険者や傭兵で私に”対等”に接してくれる男の人って居なかったから...。」


「パーティメンバーは違うのか?」


「パーティメンバーはみんな女の子だからね。

 で、今回も鍵の迷宮には一緒に潜るけど、トレジャーハンターが足りないから、雇わないと。」


 そこで私はピンと来た。

 確かにクリストフォルスはスライムに対して絶対的な力を持つだろうけど、鍵の迷宮には他にも罠などがあるみたいだし、”保険”の意味も込めて私もついて行こう。


「腕の良いトレジャーハンターなら知っているぞ。我もその者の解錠スキルのお陰で帝国のヘンペル法務官の部屋まで侵入する事が出来た。」


「え!?ジャズがそこまで言う人物ならかなり有名な人なんでしょうね!」


 クリス姉ちゃんの顔がパァっと明るくなる。


「あぁ、クリスも知っている人物だ。なにせジャスミンなのだから。」


「えっ!ジャスミンが!?」


 クリス姉ちゃんの表情が驚愕に染まる。


「あぁ、そうだ。」


「でもそんな危険な所にジャスミンを連れて行けないよ...。」


「それなら案ずるな。ジャスミンは自分の身は自分で守れる位の力量はある。それにクリスが付いているのだろう?

 それに何よりもジャスミンの解錠スキルは目を見張るものがある。きっと鍵の迷宮攻略で役に立つだろう。」


 何だか自分で自分の事を持ち上げるのは気が引けるが、こうでも言わないと連れて行って貰えないだろうから仕方ない。


「分かったわ。ジャズがそこまで言うなら連れていくわ!

 ただアリス教皇の許可が降りるかなぁ...。あの娘好き嫌いが激しいのよね...。

 まぁ兎も角頼んで見るわ!確かジャスミンはここラミアに向かったのよね?」


「あぁ、そう言っていた。」


 ラミアに居るのは間違いない。だってここ(・・)に居るから。

 

「なら、冒険者ギルドの掲示板と受付に伝言を出しとくわ。

 じゃあ今日はもう部屋に戻るね。」


「一緒に行ってやれないのが残念だが大丈夫だ。その剣を信じろ。」


「うん、ジャズが創ってくれた剣だもの!勿論信じてるわ!ありがとう!

 で...だから...無事に帰ってきたら...ね?」


 クリス姉ちゃんが顔を赤らめながら小声で問う。


「あぁ、二人の無事を祈っている。」


「じゃあね、おやすみ!ジャズ。」


 そう言い残し、クリス姉ちゃんは嬉しそうに去っていった。









 やらかした...。

 うん、確実にやらかしたよね...コレ。

 完全に正体を明かすタイミングを逃した。

 これはクリス姉ちゃんに正体がバレた日には間違いなく絶交されるよ...。


 私は黒騎士の正体がバレた時の事を想像し身震いしながらも、久々にクリス姉ちゃんと行動を共に出来る事を楽しみにしつつ、その日はぐっすりと眠った。

 読んで頂きありがとうございます。ブクマ&評価ありがとうございます。


 次回は水曜更新予定です。

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