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2-19 「黒の大剣」

 今月は毎日投稿します。来月からは週2回投稿に変更予定です。

 詳しくは活動報告の方へ記載します。

ーオリガ王国 リョーリカの街 傭兵ギルド


 ソフィと二人で傭兵ギルドまでやって来た。

 私は黒騎士の格好だ。


「あっ!黒騎士さん!お待ちしていました。」


 ギルドの中へ入ると受付のお姉さんに声をかけられる。


「すまない、立て込んでいて報告が遅れた。」


 そう言って私はギルドバングルを受付に渡す。


「ありがとうございます。こちらが報酬の20000ロアです。

 また今回の依頼達成でDランクへと昇格されました。

 あの、それと...オリガ国王の名で”特A級”の承認が降りましたので、ギルドランクD、オリガ王国ランク特Aとなります。」


 受付のお姉さんが話し終わると同時にロビーの椅子に座っていた傭兵達が騒ぎ出す。


『ギルドランクDのルーキーが特A級!?』

『この国初の特A級?あんな小さいヤツがか?』

『馬鹿っ!あいつは一人で帝国軍を震え上がらせた”無剣の黒騎士”だよ!

 何でも”暗黒魔法”で恐怖に陥れ、帝国軍は尻尾を巻いて逃げ出したとか...。』


 二人目の発言でソフィから殺気の様なものを一瞬感じたけど、今は機嫌が良い様なので気のせいか...。


「あの...もしかしてお連れの方はギルド登録をされに来たんですか?」


 私が報酬の金貨2枚を手に取ろうとすると、受付のお姉さんが聞いてきた。


「いや彼女は...」


「はい。そうです。」


 ソフィが即答した。

 ソフィの方を見ると小声で「お役に立ちたいので、やらせて下さい!」と言ってくる。


「黒騎士さんの紹介でしたら、人柄は問題無いと思いますので、一次試験はパスさせて頂きます。

 ですので二次試験の模擬戦のみで結構です。

 それで黒騎士さんの時も手違いがあったので念の為確認しますが、お連れの方は魔導師ですよね?」


「いえ、近接戦闘で戦います。」


「え?その格好でですか?」


 受付のお姉さんが驚くのも無理はない、私と同じ位小柄で、赤いローブを目深に被ったソフィはとても近接戦闘を行う様には思えない。


「わ、分かりました。それでは近接戦闘の模擬戦を受けてもらいます。

 奥の広場でお待ちください。」


 受付のお姉さんに促され、ソフィは奥の待合へ向かおうとする。


「では、行ってきます。すいませんが黒騎士様はお待ち下さい。」


「あぁ、構わない。」


 


〈ソフィ視点〉


 ギルドの奥へと進んで行くと中庭の様な開けた所に出る。

 そこで暫く待っていると試験官らしき大きい男がやって来る。


「あの黒騎士の連れだって言うからどんな奴かと思えば...こんなガキだとは...。

 じゃあさっさと模擬戦をやるぞ。

 ルールは俺に一撃を加える事が出来たら合格だ。」


 試験官の男はやれやれといった感じで鉄剣を抜き放つ。

 

「一撃...?殺してしまっても構わないの?」


「なっ!?甘く見るなよ?俺はCランクの傭兵だぞ?お前みたいなガキに殺せる訳がねぇだろ!?」


 試験官の男は私の発言で途端に怒りを露わにする。

 大切な事を確認しただけなのに。


「ふぅーん、そう。じゃあ死んでもいいと。」


「舐めるなっ!!」


 そう言い放ち試験官の男は鉄剣を上段に構えて突っ込んでくる。

 それに対して私は”純白のナイフ”を試験官に向かって投げつけ、素早く試験官に背を向ける。


「ふっ、甘いっ!」


 試験官がナイフを弾く音が聞こえた瞬間、私は背を向けているにも関わらず、眩しさを感じる程の光が爆発する。


「ぐわぁぁぁ!!目がっ!目がぁっ!!」


 試験官は余りの衝撃と痛みの為か鉄剣を落とし、両目を抑える。


 私はゆっくりと近付き、がら空きになっている試験官のお腹にナイフの”柄”を突き当てる。


「ブスッ!っと。」


 しかし、そんな事は気にも止めず目を抑えて苦しがる試験官。


「仕方ないな。」


 私はお姉様に教えて貰った通りに左手の薬指に念を込める。

 すると試験官の顔に淡い光が溢れる。


「はぁ...はぁ...あれ痛みが?」


「で、一撃与えた。それとも、死ぬまでやる?」


 私は試験官のお腹に突き立てているナイフの柄に視線を送って、もう一度問いかける。


「いや...合格だ...。

 閃光魔法に回復魔法...しかも全部無詠唱って、お前やっぱり魔導師じゃねーか!」



 そして私は無事お姉様と同じ傭兵になれた、と喜んで受付へ戻ったら、お姉様が”男”を連れて待っていた...。





〈茉莉花視点〉


 ヤスと話していると奥からソフィが見えたので声をかえる。


「ソフィか...どうだ試験は?」


「はい、合格しました。あの、黒騎士様...その人は...?」


 ソフィが怪訝な顔で聞いてくる。


「俺はヤスだ。黒騎士と同じ傭兵団だ。」


 さっきヤスと合流し、ギルド受付で傭兵団『黒の大剣』を登録したのだ。

 因みに既にヤスにはソフィの事を説明済みだ。


「そう...。ヤスってロリコン?」


 奴隷施設の時の事もあり、男の人を警戒しているのだろうか?ソフィがやや殺気を放ちながらヤスに問いかける。


「はっ?何だいきなり...違うが...。

 俺が好きなのはグラマラスな大人の女性だ。」


 ヤスが驚きながらもキッパリと否定する。

 ロリコンでも困るが、それはそれで今の私をハッキリ否定された様で何だか嫌だけど...。

 それに何だヤスも他の男と同じく、胸の大きい女の人が好きなのか...!

 私は何だかモヤモヤしたよく分からない気持ちになる。


「ふーん。ならいいけど。

 あの黒騎士様、私も黒騎士様の傭兵団に...!」


 ヤスの答えを聞き安心したのか、ソフィの殺気は収まり、先程と同じ雰囲気のソフィに戻る。


「あぁ、分かっている。」 


 そして、ソフィのギルドバングルを受付で貰い、すぐに『黒の大剣』にソフィを加入させる。


「黒騎士様、ありがとうございます。」


 ソフィは嬉しそうに微笑んだ。

 


 ソフィが登録試験を受けている間、私はヤスと指名依頼を受けていた。これはオリガ王国国王からの指名依頼で、”内容は帝国との調印式の護衛依頼”だった。

 どうやらヘンペル法務官との”話合い”は無事成功して、停戦する運びとなったのだろう。

 そして恐らく護衛というのは建前で、私を使った”示唆行為”だろう。私の”存在”で戦争が終わるなら易いもんだ。


 


 ヤスとはギルドの前で別れ、ソフィの生活用品を買って宿に帰った。


 ここまで読んで頂きありがとうございます。今回でオリガ王国編は終了し、次回から「エピクロス編」が始まります。

 ブクマ&評価&感想頂けると嬉しいです。もしお時間あれば、よろしくお願いします。

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