2-18 「心の拠り所」
一月は毎日投稿予定です。
〈茉莉花視点〉
ーオリガ王国 リョーリカの街 宿屋 翠星亭
私はソフィの話を聞き、涙を流しながら、ソフィを抱き締めていた。
「ゴメンね。もう...大丈夫だから!」
ソフィもそれにつられる様に嗚咽を漏らす。
「黒騎士様は...私にとって神の使い...なんです...本当に...ありがとう...ござい...ます...!」
私は最初にソフィに抱いた印象は”とても強い子”だった。
しかし、それは強く生きていかなければ生きていけない”不器用な弱い子”だったんだ。
ソフィは泣いたりせず、誰にも頼れず、ずっと一人で溜め込んでいたんだ...。
生きられたのは”復讐”と言う”生きる為の目的”があったから。
そしてその生きる為の目的を私が代わりに為し遂げた事により、私に恩を返す事で新しい”生きる目的”にしてるんだ。
だから、私は全てを話してくれたこの少女に、応えなけらばいけない。
私はソフィが泣き止むのを待って、強く抱き締めたままのソフィに優しく話しかける。
「ありがとうソフィ。辛いのに話してくれて。だからね、私もソフィに本当の事を話すね。
私の名前は茉莉花、この世界の人間じゃないんだ。
ソフィ達この世界の人々が信仰している神アポステリオス様によって、この世界の戦争を終わらせる為に他の世界から転生されたんだ。」
「...本当に天使だったんですね...!」
ソフィは感極まって震えていた。
天使...とは違う様な気がするけど、今のソフィには何を言ってもきっと駄目だろう。
「私は辛く地獄の様な場所で...それでも神様へのお祈りだけはかかした事がありませんでした。
本当に神様の...信仰の結果だったのですね...!
私は絶対に裏切りません。どうかお仕えさせて下さい。どうか恩を返させて下さい。どうかお側に置いて下さい!」
ソフィは私から離れ、さっきよりも強く、額を床に擦りつけて懇願した。
ソフィ違うんだ...私は...!
「ソフィ...私はこの世界が平和になったら、帰らないといけない。
それ迄の間だけど、私はあなたを家来としてではなく、”家族”として迎え入れたいんだ。
だからね...そう言うのは止めて、頭を上げて。」
私はソフィの頭を優しく撫でる。
そう私はこんなに可愛い、私を慕ってくれるソフィを”妹”として接したいのだ...!
姉しか居なかった私は妹に憧れていたのだ。
「”か...ぞく”ですか...?」
頭を上げ、キョトンとして私を見つめるソフィ。
「うん、家族!」
「おね...え...」
そうそう!
「お姉様っ!!私立派な妾として誠心誠意尽くします!」
そう言ってソフィは私に抱き着いて来る。
えええぇぇぇ!!何でそうなるの...!?
でも、幸せそうなソフィの満面の笑を見ていたら、何だかどうでも良くなった。
その後暫くソフィが私にベタベタして来たので、いっぱい可愛がった。
「ソフィ。そろそろあなたの装備を整えたいんだけど何か希望はある?」
「武器はナイフやダガーなら使えます。防具は...お姉様が選んだ物なら何でも...。」
そう言うと両手を肩に抱いて頬を赤く染める。
私はそれを華麗にスルーして武具錬成を起動する。
形状”漆黒の投げナイフ状”で、
材質”オリハルコン”の
重量”普通”
特性”投げると対象に必ず命中する”を持った
武具”ナイフ”を
出現方法”右手に持った状態で出現”
属性”パーマネント”
私はコレを10回繰り返す。
「あ...また武器が出てきました...。お姉様それは空間魔法...いやお姉様は魔法は使えないはず...。」
「これはアポステリオス様に貰った能力で”武具錬成”と言うの。
私がイメージ出来る材質、能力等を備えた武具を作る事が出来るの。」
「武具創造ですか...神話のお伽噺の様です...。やはりお姉様は凄いです...!」
ソフィが目を輝かせてこっちを見つめる。
「あ...うん、ありがと。
はい、コレ。
これは投げると対象に”必ず”当たる効果がついたナイフよ。」
そう言って私はソフィにさっきの『必然のナイフ』を10本手渡す。
「”必ず”ですか...凄いです。ありがとうございます。大切にします。」
で、次は逃走用ね...これもソフィが使えるナイフ状にしてしまおう。
形状”純白の投げナイフ状”で、
材質”鉄”の
重量”軽い”
特性”投げて物にぶつけると200万カンデラの光を放つ”を持った
武具”ナイフ”を
出現方法”右手に持った状態で出現”
属性”パーマネント”
コレを3回繰り返す。
カンデラとは明るさの単位で1カンデラはロウソク1本分だ。
200万カンデラ...お分かり頂けたであろうか?
これは投げナイフ型のスタングレネードなのだ。特性を1つしか付けれないので、音は出ないけどね。
まぁ目眩しにはうってつけだろう。誰もこの『閃光のナイフ』から200万カンデラの光が出るなんて思わないだろうし。
「コレは逃走用の魔道具で、相手の足元等に投げてぶつけるととんでもない光が放たれるわ。
取り扱いに注意する事と、絶対に光を直視してはダメよ?」
「分かりました。」
「で、次は...防具ね...。」
ソフィはとんでもなく可愛い。
しかも銀髪赤目のアルビノで、この世界でもかなり目立つ。
また誘拐されたら嫌なので、ある程度顔を隠せるものがいいな...。
そこで私はまた武具錬成を起動する。
形状”ローブの裏側にナイフ収納用のポケットがあり、赤い目深いフードの付いた”、
材質”防刃ケブラー”の
重量”軽い”
特性”完全魔法耐性”を持った
武具”ローブ”を
出現方法”目の前の床に出現”
属性”パーマネント”
「どうかな?」
私は目の前に出現した『紅霞のローブ』を指差しながらソフィに聞く。
「脱がし易そうでいいと思います...。」
”脱ぎ”易そうではなく、”脱がし”易そう...?
余り深くはツッコまないでおこう...。
「で、最後にこれ。」
そう言ってソフィにエクスヒールが内蔵された予備の『奇跡の指輪』を渡す。
「お、お姉様...コレって...!」
ソフィはご機嫌で”左手の薬指”にはめる。
うん、守りたいこの笑顔。
そして、流石に眠気が襲って来た。
初期の頃に比べれば大分成長したとは言え、今日はかなりパーマネントを錬成したからだろう。
今日はこの辺りで武具錬成はお開きにして、傭兵ギルドへ報告に行こう。
「じゃあそろそろ傭兵ギルドへ行こうか。」
そう言ってソフィと二人で傭兵ギルドへ向かった。
”オリガ王国編”も次でラストになります。




