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2-17 「キラーマシン2」

 一月は毎日投稿予定です。

 今回の話には残酷な表現、暴力シーンを含みます。苦手な方はストーリー進行上、飛ばして頂いても問題ありません。

〈 ソフィ視点〉

ーオリガ王国 とある施設


 私は奴隷商人を殺す為の得物を入手する為に、躾の時に使用するナイフに目を付けた。

 それから施設の人間を観察し、テーブルマナーで使用する食器を用意する担当に規則性がある事を見つけた。


 その日はショートヘアーのメイドが食器を並べる番だ。

 このメイドはドジで度々食器を割って折檻を受けている。このメイドには悪いがもう1度折檻を受けてもらおう。何恐らくこれが”最後”の折檻となるでだろうから。


 予めショートヘアーのメイドの靴の踵部分に、隠し持っていた欠けた食器で切れ込みを入れておいた。歩く分には何ともないが重いものを持った時割れてしまう程度の切れ込みだ。


 そして私は何事も無いかの様に早めにテーブルマナーを学ぶ為に着席し、食器が並べられるのを待つ。


 シフト通り並べるのはショートヘアーのメイドだ。

メイドが食器を並べ様と食器籠を持ち上げた瞬間、悲鳴とともに食器が床に散らばる。


 私は瞬時に椅子を引き、メイドに駆け寄りつつ床に散乱したナイフを袖に隠す。


「危ないからドケっ!!顔に傷でも付いたらどうする!」


 そう言って物音を聞きつけた黒服が、私に駆け寄って手を引く。

 私は壁の方へ弾き飛ばされたが、既に目的は達している。笑が零れない様にしなければ...。


 それから毎日ナイフを硬い牢屋の壁で研いだ。

 ナイフといってもステーキを切る様なナイフでは不十分だ。私はもっと分厚い肉を切り裂かねばならないのだ。

 少しづつ、少しづつ研いだ。ナイフはこれ一本だ。力加減を間違えて折ってしまってはいけない。


 そして手の血豆が裂けた頃、お手製の鋭利なナイフが出来上がった。

 私はナイフが折れなかった事を神様に感謝した。


 その頃には日々の教育を卒無くこなした私は、奴隷商人に高く評価される様になっており、ついに好機が来た。


 奴隷商人の部屋に呼び出されたのだ。




ー奴隷商人の寝室


 奴隷商人の扉へノックをする。


「ソフィです。」


「入れ。」


 入室の許可を得たので扉を開けて中へ入る。


「おぉ待っていたぞ!」


 奴隷商人は機嫌良く私を迎え入れた。

 見ているだけで気持ち悪い、早く殺したい。


 部屋を軽く見渡したが奴隷商人一人だけの様だ。

 

 因みに右手の袖にはお手製のナイフを仕込んである。この好機を逃す手はない。


「本日はどうされましたか?」


「お前の教育が修了したので、次のオークションに出品しようと思ってな。今日はその最終検品を行う。」


 こいつは私達をモノや家畜としてしか見ていない。だからこそあんな狂宴を繰り広げる事が出来るのだろう。

 早く殺したい。


「まずは服を脱いでそこに立て。」


 くっ...!服...!そうなるとナイフも手放さなければならない。

 しかし、今はまだ間合いに入れていない為、素直に従うしかない。

 まどろっこしい、早く殺したい。


「ふっ...その表情...怯えているのか?だが安心しろお前は大切な商品だ。”未使用”で無ければ商品価値が下がる。お前の母親の様な事はせんよ。」


 そう言って奴隷商人は最初に会った時の様に下衆な厭らしい笑を浮かべる。

 虫唾が走る、早く殺したい。


 そして服を脱いでベッドの上に置いた。


「やはり白い肌にその銀髪は良く映えるな!最低落札価格をもっと引き上げてもいいかもしれん。」


 そう言って奴隷商人は私の太腿を乱暴に掴み、立ったまま足を広げさせる。

 そしてそのまま私を舐め始めた。


 気持ち悪い、殺したい。

 気持ち悪い、殺したい。

 気持ち悪い、殺したい。

 気持ち悪い、殺したい。

 気持ち悪い、殺したい。


 いや、もう殺そう。


「な、何だかお腹の奥が変な感じです...。だめぇ、立っていられません...。」


「ほぉその年でもう感じているのか!ますます商品価値が上がるぞ!分かった、次はそこのベッドで四つん這いになれ。」


 そして私は脱いだ衣服の近くに頭を寄せ、四つん這いになった。

 やっと殺せる。


 奴隷商人が私のお尻に顔を埋めた瞬間、衣服からナイフを取り出し、奴隷商人の喉を目掛けて最速の一閃を放つ。

 これは何度もシュミレーションしていたパターンで、まず喉を潰し声を挙げれなくし、人を呼ぶのを防ぐ為だ。



 が、ナイフを振り抜こうとした瞬間、ベッドの下から何かが出現し、私の腕を掴んだ。

そして、ナイフは奴隷商人の10cm手前で止まる。


 私の腕を掴んでいるのは黒服の手だった。


 黒服に押さえられた腕がびくともしない事を確認した私は、手首のスナップだけを使い、奴隷商人の目を目掛けてナイフを投射した。


 ナイフは奴隷商人の右眼に突き刺さり、部屋に悲鳴が響いた。


 その後ベッドから黒服が全身を現して、私はすぐに羽交い締めにされた。


「ぐあぁぁぁぁぁぁ一!こ、小娘、貴様っ!従順な振りをして謀ったな!リーコックっ、殺せっ!」


 一矢報いた。

 が、本丸へは届かなかった。


 父様は私の中で喜んでくれているだろうか。

 でも母様は助け出せなかった。


 悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。

 殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。


「し、しかし、宜しいのですか?貴重なアルビノの愛玩奴隷だったのでは無いですか?」


「構うかっ!こやつは私の目を...」


 そして、奴隷商人の言葉の途中で扉が開けられ、黒い鎧を纏った騎士が中に入って来る。


「き、貴様は...黒騎士かっ!?な、何でこんな所に?」


 奴隷商人は片目を抑えながら、よろよろと立ち上がり叫ぶ。


 黒騎士は全裸で羽交い締めにされている私を一瞥し、さっきよりもさらに低い声でこう言った。


「これから死ぬ者にその意味は無かろう?」


「なっ...!リーコック、早くこいつを殺せっ!」


 私は黒服から解放され、黒服が黒騎士の前に対峙する。


「戦場では運良く敵が逃亡したらしいが、俺は逃げてはやらんぞ。」


 そう言って黒服は消える。

 その直後目に入ってきたのは、黒騎士の1m程手前で”何か”に吹っ飛ばされる黒服だった。


「ソードオブパニッシュメント!」


 黒騎士が呪文の様なものを唱えると、吹っ飛ばされて尻餅を着いた黒服のお腹から剣が突き出てきた。


 私には何が起きているのか分からなかったが、あんなに速く、強かった黒服が何も出来ずに死んだ。


 ただ分かることは、この黒騎士はとんでもない強さである事、そして、毎日欠かさなかった神様への祈りが通じたのだと思った。


「神様...感謝...致します...。」


 そして、緊張と安心感と激痛からか私はそこで意識を手放した。

 極度の興奮状態にあった為、さっきまで痛みを感じていなかったが、奴隷商人にナイフを投射した時に私の右腕が折れていた様だ。


 今回でソフィ追憶編は終わりです。次回は茉莉花視点に戻ります。

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