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2-15 「ソフィ」

 更新遅くなりました。

 今月は毎日投稿予定です。

ーオリガ王国 リョーリカの街


 リョーリカの街に戻り、ヤスを馬車に残し、捕えられていた少女達を家に返す為に、黒騎士の格好で民家を回っていた。


「あぁ...マリー!!あなたっ!マリーが!マリーが帰って...!!」


 民家のノッカーを打ち付けると、30歳位の女性が出て来て、捕えられていた少女を見て叫ぶ。


「っ...!マリー!生きて...!あなたが助けてくれたのですか?」


 家の奥から家の主らしき男性が出て来て私に尋ねる。


「国王の命で奴隷達を解放している。」


 そう言って私は国王から貰った、オリガ王国騎士団の紋章を見せる。


「それは...!もしかして貴方様は、帝国兵を返り討ちにしたと言う、”黒騎士様”では!?

 国だけでなく、我が子も救って頂けるとは...ありがとうございますっ!」


 そう言ってマリーの両親は私に頭を下げる。


「当然の事だ。奴隷は人の生を踏み躙る許されざる行為だ。

 そしてコレはこの様な事が二度と起きない様に”祝福”を込めたペンダントだ。肌身離さず娘に持たせておく様に。」


 私は水晶の小さなペンダントを両親に渡す。

 これは事前に武具錬成で錬成しておいた、幸運値が30程上昇する効果を持った、『祝福のペンダント』だ。






 その後、「お礼をさせて下さい!」と頼む両親を断り、守衛所へと向かった。


 マリーはここリョーリカの街出身だったが、他の少女達は違う街だった為、守衛所のスタンプさんに預けた。


「了解しました!このスタンプが責任を持ってこの子達を故郷へ返します!」


 帝国への送迎と言い、最近スタンプさんにお世話になりっぱなしだ。

 なおスタンプさんに引き渡す前に少女達には『祝福のペンダント』を首に掛けておいた。

 帰りの馬車でカロリーメイドで餌付けしていた事もあり、今の黒騎士の格好でももう怯えられる事は無かった。



 無事少女達を引渡し、ヤスの待つ貴族の馬車へと戻る。


「おっ、お疲れさんっ!」


 ヤスが元気よく労ってくれる。

 街中をある回った為、流石に幼女の足には堪えた。


「まだ目覚めないの...?」


 私は馬車に入り、兜の顎部を外しヤスに問いかける。


「あぁ、何度か呼び掛けたんだがぐっすりと眠ってる。

 まぁ精神的な疲れだろう...。」


 馬車で眠っているのはタレスの部屋で裸でリーコックに羽交い締めにされていた銀髪の美少女だ。

 今は私が錬成した『赤い貴族の服』を着ている。

 怪我をしている様だったのでエクスヒールで回復させたが、意識が戻らなかった為家を聞き出せず、そのまま馬車で寝かしていたのだ。


「仕方ない...今日はもう遅いし、この子は宿の私と同じ部屋に寝せるよ。

 鎧を来てなきゃ私は黒騎士の小間使い位にしか見えないでしょ。」

 



 私達はこの前の宿まで馬車で行き、非力な私では無理なのでヤスに少女をおぶって貰い、宿の部屋へと向かった。





ーオリガ王国 リョーリカの街 宿屋 翠星亭


 宿の部屋はヤスの一人部屋を一室と、私達幼女組の二人部屋を一室とった。


 少女の身体をお湯を染み込ませたタオルで綺麗にしてやり、そっとベッドへ寝かした。

 その後、私もタオルで身体を清め、隣のベッドで眠りについた。



 次の日の朝、目が覚めてベッドから上半身を起こすと既に隣のベッドには少女は居なかった。

 ちなみにヤスは傭兵ギルドへの報告ついでに朝早く情報収集へと向かった。


 ベッドから降りようと身体をずらすと昨日の少女が部屋の中央で跪いてこちらを見ていた。


「奴隷商人から解放して頂き、ありがとうございました!

 私はソフィと言います。どうか本日から貴方様の家来として働かせて下さい!」


 そう言うとソフィは頭を下げ、土下座の様な姿勢をとる。


「ちょ、ちょっと待って私はあなたを助けた騎士とは違うよ!騎士はもう遠くへ行っちゃって...だから私に言われても...。」


「いえ、私を助け、黒服を倒した黒騎士様は間違いなく貴方様です。

 なぜなら私は生まれながらに”精霊の加護”と呼ばれる能力(ギフト)を持っています。

 この能力(ギフト)は相手の魔力を色として知覚出来るのですが、黒騎士様の魔力は無色...つまり魔力がありませんでした。

 この世で魔力を全く持たない者はおらず、私が知る限り昨日の黒騎士様と貴方様だけです。」


 少女ははっきりと断言した。

 不味い迂闊だった...こんな所で正体が一般人にバレてしまうとは...!

 しかも、魔力の事もバレてる...。やっぱりこの世界の人間は魔力をみんな持ってるんだ。という事は武具錬成も見られてるから、あれが魔法じゃない事もバレたのか...。


「分かった。でもその前に試させて。」


 そう言って私は審判の剣(ジャッジメントソード)をアイテムボックスから取り出して、ソフィの肩に軽くあてる。

 ソフィは空中から出した剣に少し驚いていたが、私が武器を取り出したと言うのに跪いたまま私の方に真っ直ぐ目を向けている。


「今からする私の質問に正直に答えて。」


「分かりました。」


「私が黒騎士である事とその能力を他の者に公言しないと誓えるか?」


「神に誓います。例え拷問されたとしても自害し、口を閉ざします。」


 いやいやそれは言い過ぎっ!流石に死ぬ訳...って...


「あれ?大丈夫?痛くない?」


「いえ、特に大丈夫です。」

 

 ソフィは顔色一つ変えずケロッと答える。

 え?じゃあ本当に死ぬ覚悟があるって言うの!?

 私は一先ず審判の剣(ジャッジメントソード)をアイテムボックスにしまう。

 アイテムボックスにしまうとこの剣の効果は無くなる事は確認済みだ。


「分かったわ。あなたの事を信じるよ。

 でも私の家来ってのは...あなたの両親も心配しているでしよ...?」


「家族全員あの奴隷商人に捕まり、父は脱獄し殺されました。母も心を失ってしまい...生きているのか分かりません...。

 黒騎士様に仕える事こそが...私の無上の喜びです。どうか黒騎士様の”肉壁”に使って下さい...!」


 な、何なんだこの娘は...明らかに他の助け出した奴隷の娘達とは全然雰囲気が違う。

 何故そこまで私に仕えたがるの...?

 そして私は何が彼女をこうしてしまったのだろうという疑問から、彼女へ無神経な質問をしてしまう。


「一体あの施設で何が...?」




 するとソフィは今までと違い押し黙った後、ゆっくりと言葉を紡ぎ出した。


 次回ソフィの追憶回前編です。

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