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2-11 「停戦交渉」

 30話程書き溜めているので、一月は毎日投稿予定です。

〈茉莉花視点〉

ーマスグレイブ帝国 マスグレイブ城 大会議室


 軍法会議が終わり、帝国軍人達が散り散りになる中、私はヘンペル法務官の足取りを追った。


 ヘンペル法務官は会議室を出ると自室に入り、コーヒーを啜りながら書類に目を通す。


 廊下を確認し、人通りが無くなったところで、ヤスの能力を解除し、私達は姿を現す。


「ヘンペル法務官、我は”黒騎士”だ。貴殿と話がしたい。」


 するとヘンペル法務官は、唖然と目を見開き、声をあげようとする。

 すかさず私はヘンペル法務官の口を塞ぐ。


「取り敢えず話をしたいだけだ。今すぐ殺されたくなければ、声の音量を調節しろ。

 出来るか...?」


 ヘンペル法務官がコクコクと首を大きく二度縦に振るのを確認し、ゆっくりとヘンペル法務官の口から手を離す。


「な、な!ど、どうやってここに!?そ...そなたが...オリガ王国の”黒騎士”か...?」


「あぁ。だが、今は”オリガ王国”に所属している訳ではない。我は所属無しの傭兵だ。」


「何っ!?オリガと契約を結んでいる訳では無いのか?」


 ヘンペル法務官は驚き声を上擦らせる。


「そうだ。だが今回の”交渉”次第では帝国にとっての”敵”となる。」

 

「ふっ...甘く見てもらっては困る。私とて帝国軍人の端くれ、自分の命惜しさに味方を売ったりはしない。殺すがいい。」


 するとヘンペル法務官は、ゆっくりと目を瞑る。

 ハイデガーとは大違いの軍人の鏡の様な人物であるらしい。


「勘違いして貰っては困る。今回はあくまで”交渉”をしに来たのだ。

 これ以上の戦争継続は両国に益とならぬ。

 黒紅石は価格カルテ...協定を結び、停戦せよ。」


 すると、死を覚悟し余裕を取り戻したのかヘンペル法務官は静かに笑い出す。


「ふふっ...。黒紅石など...”あんなもの”はどうでも良い。所詮はオリガを攻める口実に過ぎない。」


「そこまでして、何故オリガ王国を攻める?」


「......まぁ、これから滅ぶ国の事だ。話してやろう。

 現在我が国はマルブランシュ王国とも戦争中だ。

 しかし、ヤツらはしぶとく抗戦を続けておる。そこでその隣国のオリガを攻め落とし、一気にマルブランシュの首都を叩く。

 その為に、オリガの”土地”が必要なのだ。

 黒騎士...貴様もオリガに縛られていないのであれば、帝国につく事を勧めるぞ。」


 なるほど、オリガで必要なのはその”土地”のみ。

 だからこそ街には目もくれず、一直線に王城...国王を殺りにいったのね...。

 しかし、戦争の為に戦争って軍国主義もいいところね...。


「このまま戦争を続けるのであれば、我は帝国の”敵”になるであろう。」


「貴様一人が敵に回ったところで何になる?

 たかが鉄装備の帝国兵100ちょっとを倒した位で勘違いするなよ?

 帝国兵の本当の恐ろしさはオリハルコン武装にある。オリハルコン装備の前では貴様の奇妙な術など効かぬわっ!」


「...そうか。」


 私はヤスにオリハルコンの棍棒を構える様に指示する。ヤスは「何をする気だ?」と言う表情をしつつも、私の言う通りにする。


「ふっ...口で言って聞かぬから脅しか?無駄だ、私に脅しは通じんぞっ!」


 ヘンペル法務官が嘲笑する。


 私はヘンペル法務官を尻目にヤスの持っているオリハルコンの棍棒に向かって手刀を放つ。

 もちろん同時に武具錬成で『手刀』も発動させる。

 すると、オリハルコンの棍棒がまるでバターの様に滑らかに切り落とされ、音を出して床に転がる。


「オリハルコンなど我が脅威では無い。」


「な、何を馬鹿な...!?オリハルコンが切断出来る訳が...そ、それも手で...オリハルコンを?」


 ヘンペル法務官は動揺し口を半開きにしながら全身を震わせ、切断された棍棒を指差す。


「これは貴殿への置き土産だ。これをしっかりと”鑑定”し、確認せよ。

 それでも尚、派兵する様な事があれば、次はその帝国兵全員の首がこの棍棒と同じ様に地面に転がる事になる。」


 帝国とてマルブランシュと戦争中に、兵を無駄に浪費したくはないだろう。

 そこで私はヘンペル法務官に更に念を押す。


「なお、帝国が兵を浪費せずに、オリガ王国に対して選択出来る軍事行動はただ一つ。10日以内に特使を出し、オリガ王国と和平条約を結ぶ事だ。

 いい返事を期待している。」


 そう言って私はヤスから棍棒の柄部分を受け取り、ヘンペル法務官の後に向かって投げる。

 するとヘンペル法務官は小さい悲鳴を上げ、目をつむり、手で頭を抑える。

 視線が外れたと同時にヤスの能力で再び姿を消してもらい、マスグレイブ城を出る。

 




ーマスグレイブ帝国 帝都デスハイム 近郊の林


 帝都デスハイムを抜け、馬車を降りた辺りまでやって来たところで、緊張が解けたのかヤスが話しかけてくる。


「相変わらず出鱈目だな...オリハルコンを手で切断するとは...。アレも武具錬成何だよな?」


「そうよ。あ、武器はごめんね。帰りに時間あるし、新しいの錬成してあげるから。」


 今は兜の顎部を外している。”黒騎士モード”だと何かヤスと話辛いのだ...。

 ヤスは呆れながらも納得しながら林の中の馬車を探す。


 馬車を見つけ、スタンプさんと合流し、その日は馬車で野宿し、翌日から二日かけてオリガ王国へと戻った。




 因みにヤスが、ヘンペル法務官の部屋で披露した武具錬成を気に入ったので、破壊してしまった棍棒の代わりに、オリハルコン切断能力を持った高周波振動機能付きの日本刀を錬成しプレゼントした。


魔鉱切(まこうきり)

攻撃力+320

オリハルコンを切断する為に作られた太刀。

その鈍色の刃は熱に強く、斬れぬものなどあんまり無い。

製作者︰マツリカ=スドウ


 黒騎士の噂︰黒騎士は素手でオリハルコンを切断できるらしい。

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