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2-9 「帝国への旅路」

 転生部門デイリー22位、ウィークリー35位に上がってました。

 30話程書き溜めているので、一月は毎日投稿予定です。

ーオリガ王国 首都オリガ


「なぁ、黒騎士さんよ..。ずっと気になっていたんだが...。」


 城を出てすぐヤスが声を掛けてくる。

 

「何よ...改まって...。」


 馬車の壁は厚く、小窓もカーテンが引いてあり、外からはほとんど見えない為、今は村人の服に着替えている。


「アマルティア姫の事何だが...。

 アレはどう考えてもお前に惚れてるだろう。」


「え?いやいや、だって私は女だし。」


「アマルティア姫はそうは思っていないだろう。

 国王立会での一緒の食事会、そしてお互いの宗教の確認...まぁ、お見合い見たいなもんだろ。」


 言われてみると確かにそんな気がして来た...。


「でも顔も見えない、得体の知れない相手と結婚とか普通考えるかな...。」


「それはお前の”世界”の常識だろ?

 ここは俺たちの世界とは”常識”も、”身分”も違う。

 この世界の貴族や王族は、顔も知らない相手と結婚するのは珍しい事じゃないし、お前は救国の英雄で、姫さんを救い出した恩人で、得体の知れない相手じゃない。

 さらにお前は知らなかったんだろうが、この世界には、婚約者に”白い衣装”を贈り、その衣装を来て相手の家へ嫁ぐって風習があるんだ。

 アマルティア姫は、プロポーズに捉えてても不思議じゃないだろうな。」


 ヴァルターの時の事か...。

 リョーリカの街で見た貴族は、まさに相手に嫁ぐ時だったんだ。

 どうやら知らぬ内に私...いや、黒騎士がやらかしてしまっていた様だ...。


「まぁ兎も角、ちょっと考えといた方がいいぞ。」




 暫くヤスとアマルティア姫について話をしていると、リョーリカの街が見えて来た。

 

「...ん?妙だな。」


「...そうね。確かに妙だわ。」


 スタンプさんの報告では、帝国軍はリョーリカの街を通って首都オリガに進軍して来た。

 なのにリョーリカの街はほとんどその”痕跡”が無いのだ。


「オリガ王国を確実に攻め落とすなら、先ずはリョーリカの街を攻め落とし、ここに陣を張るのが定石だろう。

 ヤツらはそれをせず、そのまま首都オリガまで突っ切った。そこまでして急ぐ理由があったって事か...。」


「そうね。それに兵も帝国にしては小規模。

 あれから追加の援軍も無い事から、今回の侵攻は帝国軍上層部の総意じゃない可能性も考えれる。

 それに、ガレノスも黒紅石の件は、”帝国にオリガ王国を攻める為の口実を作る為”と言ってたわ。」


「となると、オリガ王国を攻めなきゃいけない理由ってのを見つけ出せれば、交渉の余地はありそうって事か...。」


 ヤスは顎の無精髭を触りながら、リョーリカの街並みを眺める。




 リョーリカの街を出て暫くすると、マスグレイブ帝国の領地へと入った。

 と言っても国境らしき場所には何もなく、林道を抜けた先が帝国と曖昧に決まっているだけらしい。


 帝国領に入り、更に3時間ほど進むと帝国最初の街トリアに着いた。





ーマスグレイブ帝国 トリアの街 宿屋


 トリアの街の宿屋に馬車で乗り付けるとスタンプさんが御者台から降り、馬車から離れていく。

 スタンプさんとは事前に打ち合わせしており、私達とは別の宿に泊まる手筈になっている。

 理由は憲兵をしているスタンプさんは帝国軍に顔を見られた可能性がある為、と言う事にしたが、実際は黒騎士の正体が私だとバレると面倒な事になりそうだからだ。


 スタンプが離れて行ったのを確認し、私は村人の服のまま降り、宿屋のチェックインを済ます。

 勿論今回はヤスとは別々の部屋だ。



 寝る前、今回の”話し合い”用に武器を一つ錬成する為に、武具錬成を起動する。

 帝国軍人が皆、”土下座隊長”の様に物分りが良い人達とは限らない。”備え”は必要なのだ。


 形状”切断刃状”で、

 材質”オリハルコンの切断能力に優れた配合のチタンカーバイド”の

 重量”普通”で

 特性”高周波振動発生装置”を持った

 武具”小太刀”を

 出現方法”対象を時速200kmで薙ぎ払う様に指の先から出現”

 属性”インスタント”


 所謂、高周波ブレードと呼ばれているものだ。

 チタンカーバイドは超硬金属の一種で非常に硬く、切削工具等に使われている...と、このチート能力を得た時の為に調べておいたのだ...。

 でもどうゆう配合にすればオリハルコンを切断出来るのか分からないので、そこは武具錬成アビリティの検索機能に任せた。


 ヤス曰く、オリハルコンはこの世界で最も硬いと信じられている金属で、高い魔法防御力も持つそれは最強の装備とされているらしい。

 オリハルコンによる物理・魔法防御力と魔導兵による高い攻撃力、それが帝国の強さなのだそうだ。

 でもその幻想をぶち壊せば...。


 私は武具錬成でオリハルコン製のタワーシールドを錬成し、床に立てる。

 そこへ、先程の高周波ブレードを発生させると同時に、タワーシールドに向かって指を揃えて手刀の様にして薙ぎ払う。

 するとオリハルコン製のタワーシールドに20cm程度の切れ込みが入った。

 やった!オリハルコンを切断出来た。

 

 因みにこの出現方法に設定したのは、手刀で切断している様に見せる為だ。

 

 私はこの武具錬成を『手刀』で登録しておいた。

 これは無詠唱で使用するつもりなので、適当だ。


 武具錬成の確認を終わり、床に就く。

 オリガ王城程ではないが、中々悪くないベッドだ。

 私は武具錬成で適度な疲労を感じていた為、その日は直ぐに眠りについた。




 翌朝、昨日早目に寝たせいか、スッキリと目覚める。

 ヤスと合流し、馬車に乗り込む。

 少し遅れてスタンプさんがやって来て、馬車を出発させる。


 流石大国なだけあり、帝都に近付くに連れ街道の整備がなされており、馬車での旅は比較的快適で、夕方前には帝都デスハイムが見えた。





ーマスグレイブ帝国 帝都デスハイム 近郊の林


「見えました。間もなく帝都デスハイムです!」


 帝都デスハイムの手前の林道で、スタンプが元気よく声を掛けてくる。


「ご苦労だった。我等はこれからマスグレイブ城へと潜入する。

 馬車では目立つ故、お前にはここの林の奥でこの馬車の守りを任せたい。」


 そう言って私は黒騎士の格好で馬車から降りる。


「ハッ!命に替えましてもお守り致します!」


 スタンプさんの気合が入り過ぎた声が森に響く。




 スタンプさんが森の奥へ入っていくのを確認した後、ヤスに能力を発動して貰う。

 そして、私達は姿を消したままマスグレイブ城を目指す。


 ブクマ&評価ありがとうございます!励みになります。

 次回序章で出て来たハイデガーとグスタフが久々に再登場しますので、忘れたと言う方は序章を確認下さい。

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