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1-1 「転生とアビリティ選択」

 あけましておめでとうございます。

 30話程書き溜めているので、一月は毎日投稿予定です。

〈茉莉花視点〉

鳴楼(なろう)大学 一般教育棟 104講義室


 私は鳴楼大学 経済学部3年 須藤 茉莉花(まつりか)

 何となくで入った経済学部だけど、いざ真剣に学んで見ると自分の暮らしや幸福など身近で人生に必要不可欠なテーマを研究した学問だと知って、結構気に入っている。


「マツリー、ゼミ決めたー?」


 講義が終わり、後ろの席から声を掛けてきたのは、同期の巴子だった。


「うーん、やっぱり工藤教授のところかな。」


「えぇー!あそこは止めときなよぉ!何か先生が厳しくて助手がコロコロ変わってるって噂だよー?」


「まぁ、噂は噂。それに、教授が助手に対しての接し方と、生徒に対しての接し方が同じって訳じゃないでしょ?教授だって商売。助手は給料を貰って働いているけど、私達生徒はお金を払って指導を買っているんだから、買い手と売り手の差が...」


「あーもう!マツリは直ぐに経済学の考え方を日常に持ち込むんだからー!」


「ごめんごめん。でも日常に照らし合わせて考えられるのが、経済学の面白いとこだよっ!」


「マツリは経済オタクなとこが無ければめちゃくちゃモテると思うんだけどなぁ。正直黙ってればかなりいい線いってると思うんだけど...あ、後は胸が...」


「トモコサン、それ以上いけない。」


 そうして巴子とたわいも無い会話をした後、私は自宅へと向かった。





ー茉莉花 自宅


 家に入って母親に声をかけると、2階の自分の部屋へと向かう。

 部屋に入ってすぐ、日課とも言えるいつものニュース番組を付ける。


『 ...求める決議案を採決しましたが、アメリカが拒否権を発動し、廃案となりました。』


 例の如く発動される拒否権。


 何処かの国が”やらかして”しまっても、それを牽制する為の国連軍は拒否権によって編成されない。

 現に国連軍は今まで一度も組織されたことはない。

 朝鮮戦争?

 朝鮮国連軍なんて言う呼び方を目にするけど、ソ連が拒否権を発動したあれはとても国連軍とは言えない単なる”多国籍軍”でしょ?


 残念ながら国連...平和を維持する為の組織は、戦争を止める仕組みになっていない。

 結局のところ、国連が”国”の組織である以上、意味は無い。


 じゃあどうすればいいのか...?


 これは私の持論だけど、どこの国にも所属しない巨大な軍隊があれば戦争は無くなるはずだ。

 だけど実際、そんなのは現代の国家基盤が出来上がった世界では作り得ない。絵空事だ。


『 えぇ、ここでですねぇ...Jアラートが発令されました。ミサイルが発射。ミサイルが発射されました。頑丈な建物や地下に避難してください。』


 いつもの如く、ニュース番組を見ながらの思考に耽っていると、通常のニュースを中断し、臨時ニュースが流れてきた。


「またかぁ...今月2度目なんだけどなぁ..。

 って、あ...珍しく対象地域だ!でも避難て言われてもなぁ...家に地下はないし...ねぇ?」


 そこで、突然テレビの音が消えた事に気付いた。

 停電かな?と思って立ち上がろうとして、足が 

動かない事に気付く。

 あれ?金縛り?

 いやこれは...その時私は気付いた。


 これ...テレビの音だけじゃない...。 


 消えたのは”世界の音”だ!


 瞬きをするとそこは真っ白な部屋だった。






ー???

 一面の白。

 左右を見ても上下を見ても白。

 重力も感じられないが、浮遊感も感じない不思議な感触。


「私はアポステリオス。この世界を管理する存在だ。」


 そう言って荘厳な雰囲気を持ち、白いローブに身を包んだ白髪のおじさんが目の前に現れた。


 あぁ...。これダメな奴だぁ...。

 その時私は直感で思ってしまった。これはヤバイ状況だと...。


「スドウ マツリカよ。汝はこの直後あの部屋で死ぬ。

 だが幸運な事に、お前には選択肢が与えられる。このまま留まって死ぬか、別の場所へ転移し生きながらえるか、だ。」


 超展開ですね...分かりません!


「え、えっと...私って何で死んじゃうんですか?」


「さっきまでニュースを見ていただろう?ミサイルだ。ミサイルの部品が自宅へ落下。汝の頭に当たり、即死する。」


 某国っ!!きっと粗悪品を使ったんだわ!


「あの...高高度のミサイルから落ちた部品だったら家まるごとなくなっちゃうのでは...家族を無視して自分だけ助かると言うのは...ちょっと...。」


「安心しろ。ミサイルの部品は小さく、このままだと死ぬのは汝だけだ。」


 はい、全く安心出来ない”安心しろ”頂きました。

え、だって死ぬんですよ?安心して死ね?


「あぁ...そうゆう事ですか...状況は分かりました。ちなみに何処に転送されるのでしょうか?サウジアラビアの砂漠とかに転移させられても生き残る自信が無いのですが...。」


「安心しろ。私が管理する別の世界はこの世界と違い、緑豊かな世界だ。砂漠はない。」


 はい、本日2度目の全く安心出来ない”安心しろ”頂きました。

 あぁ、やっぱりこれ異世界転生系小説でよくある、異世界に転生させられるやつなのね...。


「わ、分かりました...死ぬよりは...。と、言うことで異世界の方へ転移をお願いします。」


「ほぅ?話が早いな。他の者は大体異世界って何だ?等喚くのだが...。」


 他の者?って...。

 これは遠慮している場合ではない、色々聞いておかなければ...!


「他の者...ということは既に何人かその世界に送られているんですか?」


「既に6人送り込んだ。」


 送り込んだって...。

 何か胡散臭くなってきたよ...まさか...

『 てめえ達の命は、なくなりました。新しい命をどう使おうと私の勝手です。』というガ○ツ脳なのかな?


「それでは本題に入る。私が管理するこことは違う世界、まぁ汝がこれから転生する世界なのだが、やって欲しい事がある。その世界は戦争が絶えず、ほぼ全ての国家で戦争が起こっている混沌とした世界だ。」


 やっぱり異世界で何かやらされるんだ...。

 そして、その世界サバイバル難易度高過ぎだよぉ...。


「戦争は沢山の負の感情が沸き起こる。その様な状態が続けば人だけでなく、精霊も死に、森は枯れ、動物は死に、いずれ世界は崩壊してしまうだろう。  

 だが、私は世界の理を外れおり、直接多くは干渉出来ない。

 そこで汝達転生者にその世界の戦争を止めて欲しい。それを成し遂げた暁には元の世界に再転生させる事を誓おう。」


 えぇー無理難題過ぎるよぉぉ!

 この世界に戻れる可能性があるってのは嬉しいけど、この世界の戦争も止めれないのに、異世界の戦争何てもっと無理だよ!


「そんな悲壮な顔をするな。何もそのまま転移させる訳ではない。汝を転生させる時に、力を授けよう。

 それに、わざわざお前に声をかけたのは他でもない、この手の話は良く知っているのだろう?」


 そう言って、アポステリオスはニヤリと初めて笑を見せた。


「知っていると言っても、小説の世界の話で...現実に転生と言われても...。」


「それらの小説の元は、実際に転生し帰還した者、所謂リターナーと呼ばれる者達が執筆したものだ。」


 ここで明かされる衝撃の事実...!

 いやでもそうだったとしても実際にはそのほとんどは、そのオリジナルの二次創作って事だよね?

 そんなのどれが本物か何て分かんないよ!


「別にリターナーが直接残した文献を知らなくとも構わない、それらから興されたものも大筋は外れてはおらん。」


 私の心を見透かしたかのようにアポステリオスは続けた。いや実際心読んでそうだ...。


「わ、分かりました...善処します。で、力とはいったいどういったものを頂けるのでしょうか?」


「それは汝が決めよ。」


 いきなり全部振られたっ!

 と、心でツッコンだら、突如目の前にモニターの様なものが現れた。

 いや目の前というより、脳に直接映像を送られている様だ。


「それで自由に決めよ。その為の文献は今まで沢山読んで来たであろう?」


 そう言ってアポステリオスはまたニヤリと笑った。


 うん。そうなのだ。確かにこの管理者は良く知っている。きっとそれで目を付けられていたのであろう...。

 確かにそういう意味では私は適任なのかもしれない。

 何故なら、私は今まで幾度と無く妄想して来た。


『 もし転生したら、どんなチートスキルを貰うか』って。


 あぁぁあ!何かとても恥ずかしい...!

 黒歴史ノートを見られたかの様な、むず痒い感覚。

 いやでもこの場合は、良かったのかな?もう決まっているも同然なのだから...。


 後は他の転生者との兼ね合いね。

 アポステリオスも言っているけど、何も一人で解決する必要は無い。やっぱり他の転生者との協力は必須だよね。


「幾つか確認したいのですが、その世界に転送魔法もしくは、他の転生者の中に転送能力を持つ人は居ますか?」


「魔法はあるが、転送魔法は無い。だが転生者の一人に転送能力を所望した者がおる。但し転送可能範囲は、その世界内限定だ。」


 よし!方法が同じとは限らないけど、近い考え方の転生者はいるみたい。

 転送はその人とその世界で合流すればいいから、外して...。



 取り敢えず先程の脳内のモニターを操作する。

 原理は全く分からないけど、インターフェースはスマホのアラームの設定みたいなドロップダウンリストになっていて、頭に思い浮かんだ事が瞬時に選択肢に表れる様だ。


 ドロップダウンリストの”ジャンル”で、”創造系”を選択、さらにその中の”武具錬成”を選んだ。


 こんな状況だけど、正直めちゃくちゃ楽しい!長年妄想してきた事が現実となるのだ。楽しくない筈がないよね!


 そして次に、”条件”の項目を選んでいく。


”任意の形状”で、

”任意の材質”の

”任意の重量”と

”任意の特性”を持った

”武具”を

”任意の出現方法”で

創造する能力。


 この条件で私は”決定”を脳内で押す。

が、”決定”ボタンは灰色となっており、押せない。

 ”決定”ボタンは途中までは白文字だった為、恐らく自由度が高過ぎたのだろう。この中で”コスト”が高いのは、”任意の特性”と”任意の重量”だろう。

 何故だか知らないけど、このインターフェースは”概念”を自然に脳に叩き込んでくる見たいで、説明されなくても分かる。


 ...これ便利なんだけど、脳に負担とか掛かってないよね?

 トラ○ザムみたく、使い過ぎて爆発したり、オーバーロードして脳が働かなくて廃人見たいになったりしないよね?

 兎も角、今は出来る限り理想の能力となる様に調整しよう。


 そこで私は”任意の重量”を外す。

が、”決定”ボタンは灰色のまま。

 しかし、これ以上は削りたくない。

 そこで私は端にあった”ホーム”ボタンを押してみる。

 すると、”ホーム”には”キャラクター”、”アビリティ”、”ステータス”の3つのボタンと聖杯の様なイラストがあった。

 ”アビリティ”はさっきまで選んでいた項目だろう。

 私は”ステータス”ボタンを押した。

 すると様々な”ステータス”が表示される。

 そこで私は『何とか鉄のショートソードが持てる程度のステータスまで下げて 』と念じた。


 すると...。

『 このステータスではキャラクターのレベルが維持出来ません。キャラクターレベルが下がりますが、続行しますか? はい いいえ』


 と言う警告メッセージが出たので、私は構わず、”はい”を押した。

 ”ステータス”の数字から青い光が溢れ、”ホーム”の”聖杯”へと注がれた。

 どうやらこの”聖杯の青い光”は余りのポイントを表示しているらしい。


 私は早速、”アビリティ”に戻り、さっきのアビリティ構成を試す。


 が、それでもダメだった。


 私は仕方なく、目の前のアポステリオスに相談する。


「すいません...ポイントが足りません...。しかし、どうしてもこのアビリティが必要なので、何か方法はありませんか?」


「うむ。余りオススメはせんが、”デフォルトアビリティ”を削除すれば”聖杯”を満たす事が出来る。」


「デフォルトアビリティ?」


「転生者に必要な最低限のアビリティだ。管理者ネットワークの中で過去に転生者に人気のあったアビリティを予め設定してある。」


 か、管理者ネットワーク...。何か俗世的な感じね...。


「見せて下さい。」


「良かろう。”デフォルトアビリティ”の編集権限を与えよう。」


 私は早速”アビリティ”の中に追加された”デフォルトアビリティ”のボタンを押す。


『アイテム鑑定 』

『生物鑑定』

『言語翻訳 』

『アイテムボックス』


 むぅ...確かにどれも”定番”で尚且つ有用性が高いものばかりだ...。


『 アイテムボックス』これは論外としても、『 アイテム鑑定』も自分のアビリティから考えて必須だろう。

 

 後は『 言語翻訳』だけど、これは別に努力で何とかなる...が、私は既に7人目だ。タダでさえ出遅れているのだから、こんな事で時間を食っていてはいけない。

 それに、スペイン語を1から勉強するといった次元の話ではない。どこかの原住民と1からコンタクトする様なものだ...とてもじゃないがやってられない。

 ここは消去方で『 生物鑑定』を捨てるか...。


 そして私は泣く泣く『 生物鑑定』を外す。

 ”聖杯”に青い光が貯まるのを確認し、”アビリティ”編集に戻る。


 お願い!これで足りてっ!


 今度は何とか足りた様で、”決定”ボタンが白くなっていた。

 やった!成功!


 ボタンを押すと”ホーム”画面に戻った。


「そろそろ時間だ。アストラル化させた器にアニマを長く留めて置くことは出来ん。アニマを転生体に移すぞ。」


 私は”ホーム”画面の”聖杯”に青い光が少しだけ残っている事に気付いたが、時間切れで転生が失敗しても嫌なので黙っておいた。


「分かりました。お願いします!」


「アェレスキュアラァーソーラガンサネェーデ!」


 アポステリオスは言語化不可能な言葉を発すると、私の身体が青白く発光しだした。


「汝の固有アビリティを純熟させた時、世界の理を教えてやろう。自己研鑽に励むが良い。」


 アポステリオスはそう言い残し、私は意識を手放した。


 今回で主な説明回は終わりです。

 次回から通常の長さ(3000文字前後)になります。

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