2-6 「審判の剣」
30話程書き溜めているので、一月は毎日投稿予定です。
ーオリガ王国 オリガ王城 謁見の間
私が白い大剣を握っているのを見て、ガレノスが驚愕し、慌てる。
「なっ!どこから剣を!?」
私は一足飛びでガレノスに斬り掛かる。
ガレノスに届く様に剣のリーチも調整した、プラスチック製の軽い模造剣。
コレなら私でも掠らせるくらいは出来る!
審判の剣がガレノスの脇腹を撫でる。
「がはっ!」
ガレノスが大袈裟に悲鳴を上げる。
いや、痛くないでしょこれ模造剣だから...。
「く、黒騎士殿!何を!ガレノスはまだ何も吐いていない!」
ブルーノさんが駆け寄って来る。
「あ、あれ?痛くないっ...!くっ、なんだ驚かせおって!貴様っ、オリガ王国の大臣に手を上げたな!覚悟は出来ているんだろうな?」
そう叫び私を指差すガレノス。
「ガレノス...覚悟するのはお前だ。この剣の前では誰も嘘は付けない。」
そう言い放ち、白く美しい模造剣の腹を正面に構える。
「黒騎士殿一体その剣は...?」
国王が問いかける。
「これは審判の剣、この剣で斬られた者は誰も嘘が付けなくなる。」
「ふっ!何を世迷いごとを!そんな魔剣も魔道具も聞いた事が無いわ!」
ガレノスが、嘲笑する。
「ガレノス。お前は国王や国に対し、隠し事をしていないか?」
「陛下や国には誠心誠意尽くしている。隠し事などある筈がなかろ...あああぁぁぁ!!!!」
ガレノスが話の途中で審判の剣に斬られた脇腹を抑え、のたうち回る。
「ガレノス。正直に答えろ。真実を告げれば、その苦しみから解放される。」
「し、している!陛下に隠し事をしているっ!!」
ぜぇ...ぜぇ...と肩で息をしながらガレノスが答える。
「その隠し事とは何だ?」
「...............。
ぎゃあああぁぁぁ!!」
「沈黙しても無駄だ。話せ。」
嘘を付いたら痛みが走るなら、嘘を付かず黙っていればいい、狡賢いガレノスが考えそうな事だ。
この剣の特性を”嘘を付くと痛みが...”にしなかった理由は、沈黙を阻止する為だ。
「こ、国王の侍女のハンナにお手付きをした!」
ガレノスがやけくそ気味に叫ぶ。
「何っ!?それは真かっ!ハンナを呼べっ!」
国王が顔を顰めて、侍女を呼ぶ。
慌てて侍女が駆け寄る。
ハンナとはさっき私が治癒した、3人の中にいた女性だった。
「ハンナよ?ガレノスに手を出されたと言うのは本当か?」
「っ...!
も、申し訳ございません...。家族を人質に取られ、断れず...無理やり...。」
「ガレノス!お前と言う奴は...!」
国王が怒鳴る。
「ひ、ひぃっ!ご、ご容赦を!」
目的の内容とは違ったけど、これで審判の剣が”本物”と言うことは証明出来ただろう。
気を取り直して、質問を続ける。
「ガレノス。お前はまだ国王に隠していることがあるな?それはなんだ?」
「も、もうない...ぎゃぁっ!!ある!あるある!
アマルティア姫の下着を少しづつ盗んでいるっ!!」
「なっ!!」
アマルティア姫が突然声を上げる。
うん、こいつはもう帝国の件を抜きにしても”数え役満”で死刑だ...女の敵だっ!
「確かに侍女が報告して来た事がありました。まさか貴方が盗んでいたとは...。」
アマルティア姫はゴミを見る様な目でガレノスを睨みつける。
ついでに私もガレノスを睨みつけつける。
「この様な卑劣な男は許せぬ...。
この場で斬り捨ててしまいたい...。
が、お前には帝国の事について聞かねばならん。」
「黒騎士殿、そ、そこまで...。あ、ありがとうございます!」
そう言うとアマルティア姫は、恥ずかしそうに顔を伏せる。
「簡潔に聞く。ガレノス、お前は帝国のスパイだな?」
「なっ!そ、そんな訳が...ああぁぁ!!そ、そうです、スパイです!」
「「な、なんだとっ!」」
国王とブルーノさんがハモる。
アマルティア姫は驚いた様子は無く、変わらずゴミを見る様な目で見ている。
アマルティア姫からすれば、もはやガレノスの株価は下着泥棒の時点で0、これ以上下がらない所まで来ている。今更帝国のスパイであろうがなかろうが、0なのである。
「ガレノス。お前はどんなスパイ行為をした?」
「...黒紅石の産出量を上げ、帝国にオリガ王国を”攻める為の口実”を作りました。
さらに北門から帝国兵を誘引する手引きをし、オリガ王国騎士団とハンナを殺す様に仕向けました...。」
ガレノスは諦めた様子で、淡々と話し出した。
「ガレノス貴様ァ!!貴様のせいで一体何人の人が死んだと思っているんだっ!?」
ブルーノさんがガレノスに駆け寄り、胸ぐらを掴む。
「ブルーノよ...ガレノスを地下牢へ...。」
「はっ...分かりました。」
そして、ブルーノさんはガレノスを引連れて謁見の間から出ていった。
「黒騎士殿のお陰で真相が分かった。改めて礼を言う。
ともあれ、今日はもう日も暮れた。
城に部屋を用意したので、従者共々そっちで休んでくれ。夕食は後でハンナに運ばせよう。」
従者ってヤスの事かな?
「分かった、助かる。」
「黒騎士殿...!わたくしからも本当にありがとうございます。まさかガレノスがあんな男だったとは...。」
そう言ってアマルティア姫がガレノスとブルーノさんが出ていった扉に視線を送る。
「アマルティア姫もだが...侍女のケアをしてやってくれ。
彼女も傷付いているだろう...。」
「ありがとうございます。黒騎士殿はお優しいのですのね...。」
そう言ってアマルティア姫は優しく微笑みかける。
暫くすると兵士が私達を迎えに来て、客間へと案内された。
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最近戦闘続きだったので、次回以降暫くほのぼの回が続きます。