2-4 「交渉決裂」
今回はやっと序章の話です。序章で詳細を書いてしまったので、おさらいする程度に留めています。
30話程書き溜めているので、一月は毎日投稿予定です。
ーオリガ王国 オリガ王城 謁見の間
謁見の間に入るなり、生き残りの3人を見て国王が目を見開き、大臣は驚きの為か顔を引きつらせていた。
そして流れる様な動作で、ブルーノが国王の前に跪く。
「先程はお守り出来ず申し訳ありません。私の不徳の致す所です!」
「ブルーノ!?生きていたのかっ!!」
「黒騎士殿の魔法により蘇生して頂きました!」
「蘇生っ!?そんな魔法が存在するのか?」
いやいや蘇生は無理でしょ!?話が大きくなってる。ここは誤解を解いとかないと、死んだ人全員生き返らせろとか無理難題を押し付けられる。
「アレは蘇生では無い。騎士団長の生命力が高かった為、出来たに過ぎない。他の者はすまぬ...手遅れだった。」
「しかし黒騎士殿、私の知る治癒魔術ヒールでは、かすり傷や出血は治せても、切られた腕が再生するという話は聞いた事が無い...。」
そう言ってブルーノさんは自分の右腕を見つめる。
逆にヒールって魔法は使えないんですけどね!
食い付いてしまった。何とか誤魔化さないと...。
「魔法の事は今はいいであろう?それよりも、戦争はまだ続いている。
これからの事を考え、王より正式な命を受けたい。」
「あぁ、貴殿の言う通りだ。で、私からの命とは?」
「此度の依頼は”王城の防衛”と言う事であったが、それは今しがた達成された。
その為、このまま動けば我が独断専行と言われてしまう。だから、王命が欲しい。」
「なるほど...。今も戦っているであろう南門の部隊の救出の事か...?」
「違う。それは騎士団長が誰よりも適任であろう?
今も自分の部下が命を削って戦っているのだ。
その大義を奪う程、我は無作法では無い。」
「く、黒騎士殿っ!」
ブルーノさんが涙ぐむ。
「我が望む命は...”オリガ国の勝利による、この戦争の早期終結”だ。」
「なっ...!?戦争の終結...?」
声を上げたのはさっき漏らしていた大臣だった。
それを手で制し、国王が問う。
「し、しかし、黒騎士殿...そんな事が出来るのか...?」
「斯く在れかしと、ご覧に入れよう。」
私は自信ありげに国王を見上げる。
「...分かった。黒騎士よ、この戦争を終らせて見せよ。」
「後は、許可を頂きたい。
”帝国軍への交渉の為の接触”と決裂した場合の”帝国軍の殲滅”の許可だ。」
「せ、殲滅だと!?お前一人で出来るものかっ!帝国軍は何人の兵がいると思っているんだ!」
またも大臣が口を挟む。
「出来なければ、出来ないで傭兵が一人死ぬだけだ。それとも他にいい策があるのか?
それにだ...リョーリカの街の民が蹂躙され、姫がこの様な辱めを受け、このままただやられているのを待つつもりか?」
私は噛み付いてくる大臣に対し、愛国心を煽り、正論で返す。
苦虫を噛み潰した様な顔をして大臣が歯軋りをする。
「黒騎士殿っ...!」
アマルティア姫の目には涙が浮かんでいた。
「分かった。許可しよう。
オリガ王国国王ガルブレイス=オリガが命ずる。帝国軍と交渉もしくは殲滅し、この戦争を早期に終結させよ!」
「了解した。」
よし!言質はとった。これでこの戦争の責任は国の元首である国王だ。
万が一戦犯に祭り上げられる心配も無くなった。
そして許可を貰ったところで、私は先程無力化した帝国兵の方へ歩み寄る。
「ひぃっ!こ、殺さないで!ヴァルターに唆されただけなんだっ!」
近付くだけでとんでもなく怯えている。
私はその中でも一番怯えていた帝国兵に近付き、左手を向ける。
「ひゃっ!お、お助けっ!!」
帝国兵が槍で貫かれた足を引き摺りながら後ずさる。
私はその帝国兵のエクスヒールを念じ、傷を癒す。
「貴様には仕事をくれてやろう。
その治った足で本陣に走り、この事を指揮官に報告し、黒騎士が向かうので、交渉の場を作れと伝えよ。」
そう言うと帝国兵は足をもつれさせながら、全力で扉へと走って行った。
「ブルーノ騎士団長は南門の救援を。」
「あぁ、分かっている!南門は任せろ。」
既に装備を整えたブルーノ騎士団長は、胸を張って手を胸に当てる。
「ヤスはここの防衛と残った帝国兵の拘束を頼む。」
「あぁ、任せろ。あんたも無理をするなよ。」
「では我は戦場へ向かう。」
そう言い残し、私は謁見の間を後にする。
ーオリガ王国 首都オリガ 南門
ブルーノさんがフッサールさん達と合流しているのを確認し、軽くフッサールさんと挨拶を交わした後、南門をそのまま突っ切る。
帝国軍は遊撃隊による城内侵入作戦の為、遅延戦闘に務めていたせいか、南門の兵の被害はそれ程多くは無さそうだ。
私は帝国軍の本丸を目指し、平野部を進むが、魔道砲撃や矢の雨の大歓待を受ける。
どうやら交渉決裂の様だ。
私はお礼参りに移行した。
暫く蹂躙していると、騎馬隊がやって来たが、これも槍の道標で撃退する。
すると騎馬隊の隊長っぽい人が、槍の道標を避けて突っ込んでくる。
私はその身体能力の高さに驚いたが、突然土下座し、降伏勧告をして来た。
呆気に取られつつも、今回の目的は達したので、一先ず受け入れる事にした。
そして、帝国軍がちゃんと撤退するのを確認して、首都オリガへと戻る。
次回凱旋です。