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2-1 「アマルティア姫」

 今回から新章「オリガ王国編」突入です。

 30話程書き溜めているので、一月は毎日投稿予定です。

ーオリガ王国 オリガ王城 演習場


 オリガ王国騎士団との合同軍事演習当日、私は集合場所のオリガ王城の演習場まで来ていた。


 少し早目に集合場所に来ると傭兵は疎らだったが、既に騎士団は全員揃っている様だった。

 騎士団は鈍色の鎧を着ていたが、その中で金の鎧を纏った背の高い茶短髪の騎士がいた。

 恐らくあれが騎士団長なのだろう。

 やはりこの世界でもシルバーク○スよりもゴールドク○スの方が上なのか...。


 そして、その横には一際雅な装飾を施された金色の鎧を纏った姫騎士がいた。

 長い金髪とキメ細かな肌の美人だ。

 胸は...うん、同族の者の様だ。妙な親近感が湧く。

 アイテム鑑定で確認したところ、騎士団長と姫騎士はオリハルコン装備だ。

 

 暫く騎士団を観察していたところ、後ろから声をかけられた。


「あんたもアマルティア姫目当てか?」


 私は無言で声の方を振り向く。

 すると無精髭が生えた細めの30歳位の黒髪の男が顎を手で弄りながら立っていた。


「今回の演習にはアマルティア姫自らが視察に見えるって噂があったから、近くで一目見ようと沢山の傭兵が集まった見たいだぜ。」


 そ、そんな理由で仕事選ぶって...男の人って...。


「しかし、確かに綺麗だが...思ったより胸が寂しいな...。」


 はぁ!?こいつ喧嘩売ってるの!?

 アマルティア姫だってきっと気にしてるんだよ!私には分かるっ!

 傭兵ギルドのモヒカンがこの手の事で煽っていたら、ブチキレて試験に落ちていたかもしれなかった。危ない。



「っと...そんな殺気立つなよ...。じ、冗談だ...。お、俺は皆からはヤスって呼ばれてる。腕はからっきしだが、主に諜報活動が得意だ。例えばこの依頼だが妙な部分が幾つかある。」


「妙な部分?」


 私は気になり追求する。


「あぁ。例えばこの依頼、人数制限が無いんだ。それに、傭兵への依頼でわざわざ姫さんが出て来る何てのも聞いた事がない。」


「なるほど...何か裏があると?」


「あぁ...そういう事だ。」


「その様子だと何か( ・・)知ってるんだな?」


「まぁな。けど俺もコレを生業にしてるんでな。タダって訳には...そう言えば朝飯がまだだったんだが、何か食いもん持ってないか?」


 そう言ってヤスは腹を抑えて、お腹が減ったとジェスチャーをしてくる。


 私は小袋から取り出すフリをして、アイテムボックスから備蓄のカロリーメイド フルーツ味を取り出してヤスに渡す。


「おっと、助かるぜ!」


 そう言ってヤスはカロリーメイドを受け取り懐にしまう。

 そして顔を私の顔に近付ける。


「実はな...ここ最近、帝国の動きが活発なんだ。帝国の軍関係者がここオリガ王国内で、やたらと見かける。

 そして、今回の大規模な軍事演習だ。

 俺は近い内に始まる( ・・・)と睨んでる。」


 なるほど...この国でも間もなく戦争が...。


 ヤスは話終えると先程のカロリーメイドを取り出して食べ始める。


「美味すぎるっ!何ていうか懐かしい味だ...!どこかで食ったなこれ...あ、そうだ、カロリーメイドに似てるな...!」


 なんで、カロリーメイドを知ってるの!?

 もしかしてこの人...。


「いや、こりやぁ似てるって言うか、カロリーメイドそのものじゃないか...?黒騎士あんたもしかして...日本人か?」


 そう言ってヤスは今までのお調子者然とした態度をやめ、真剣にこっちを見てくる。


 私は小さくて頷く。


「やっぱりか...。」


 すると突然、騎士団の方から大きな声が聞こえる。


「あー、あー。コホン。傭兵諸君、本日はよく集まってくれた!私はオリガ国騎士団長ブルーノだ。」


 そう言って金色の鎧を来た騎士団長が、開会の挨拶の様なものを始めた。

 壇上の上で石の様な魔道具に向かって話しており、それが声を大きくしている様だ。


「...であるからして、諸君らには期待している!続いてアマルティア姫より、お話がある。」


 騎士団長に促され、アマルティア姫が壇上へと上がる。


「どうも皆様、わたくしはアマルティア=オリガです。この度はオリガ王国騎士団との合同演習にお集まり頂き、誠にありがとうございます。

 さて合同演習の前に余興として、模擬戦を実施しようと思いますが、どなたか志願される方はいらっしゃいますか?」

 

 すると騎士団長が、「姫!そんな急なっ!」と言って困った顔をしている。

 どうやら予定になかったらしい。


 それにしても、この世界の人はやたらと模擬戦をやりたがるなぁ...。


 アマルティア姫がそう言うと傭兵達は、壇上のアマルティア姫から一斉に目を逸らした。


 あれ?みんなどうしたの?

 

 傭兵達の異様な雰囲気に驚いていると、ヤスが話しかけてきた。


「そうか、あんたはまだ知らないのか...。アマルティア姫は美人で、性格も良いが、まだ結婚はおろか、20歳になるのに婚約者も居ない。

 その理由は、婚約の条件に”国王が認めた者”で尚且つ”姫に勝る実力を持つ者”という二つがあるからなんだ。」


 20歳...転生前の私と同い歳だ。20歳でもこの世界では行き遅れの様に見られるのか...世知辛い...。

 ん?いやでもこんな優良物件...逆玉のチャンスなんじゃない?


「なら、何故挑む者が現れない?」


「ふっ...そりゃまぁ...見てりゃあ分かる。」


 ヤスは悪戯っぽく笑う。


 ヤスと話していると、突如前列の方の傭兵の一人が声を張り上げた。


「腰抜けどもがっ!俺様がやってやる!」


 そう叫ぶと隻眼の茶髪の大剣を持った大男が前に出て、優に2mはあろう大剣を片手で振り回した。

 

 ひぇぇ...とんでもない怪力だ!


 すると、周りの傭兵達からヒソヒソと声が聞こえる。


「あいつ見慣れない顔だな...。」


「当たり前だろ?この国でアマルティア姫に勝負を挑む馬鹿はもういないだろう?」


「それもそうか。きっと他国から来た、流れの傭兵だろうな。」


 なんだか話が見えない。やはり、この国では姫を狙う狼藉者として国に目を付けられるのを恐れて挑まないのかな?


「あなたの勇敢な申し出に感謝致します。それではあちらへ。」


 そう言ってアマルティア姫は、集められている演習場の開けたところへ促す。

 そして、アマルティア姫も壇上から降り、そこへ向かう。


 途中でアマルティア姫と隻眼の男は、騎士から木剣を受け取り、対峙する。

 姫様だもんね、流石に実剣は無いよね。

 ”同族”のアマルティア姫に対し、妙な親近感を抱いた私は安堵する。


「この国の男共は腰抜けだな。落ちてる金貨も拾えねぇなんてなっ!」


「ふふふっ...。憲兵達が見ているので拾えないのかも知れませんよ?」


「それでも腑抜けだ。そんな腑抜け共に代わって俺が王になってやるよ!」


「まぁ、頼もしいですわね!」


 隻眼の男がとんでもない事をサラリと言っているのに、アマルティア姫はとても落ち着いている。


 そして、模擬戦が始まる。


 先ずは隻眼の男の力任せの一撃。

 アマルティア姫は華奢な身体にも関わらずそれを軽く受け流す。

 続いて隻眼の男が下段から切り上げるも、それも難なく受け流す。

 

 すごい...!何て綺麗な剣捌きだろう...!

 力任せの隻眼の男の剣に対し、殆ど力を込めず、腕のスナップだけでそれを交わしている。

 まさに”激流を制するは静流”を身を持って体現しているかの様だった。


 そして、隻眼の男が疲れ始め、悪態をつき始めた時、勝負が決まる。

 

「なっ...!」


 隻眼の男の木剣が、アマルティア姫が振り抜いた木剣に弾かれ、宙を舞う。


「勝負ありましたね...。」


 ────残心。


 それは女性の私も惚れ惚れする様な、一切の隙のない美しい残心だった。


 しかし、その芸術的な残心は、一人の粗暴な悪漢により打ち砕かれる。


「ふ、ふざけるなぁ!こんなおもちゃで、何が勝負だぁぁ!!」


 すると隻眼の男はさっきすぐ後ろに置いた大剣を握り、アマルティア姫へ向かって大剣を振り下ろす。


「死ねやーーー!!!」


 まずい!いくら何でもあんな大剣は木剣で防ぎきれないっ!


 刹那、アマルティア姫は消え、隻眼の男の後ろでまたも美しい残心をとっていた

 その直後、隻眼の男が呻き声を上げ倒れ、それと同時に騎士団が大慌てで駆け寄る。


 今気付いたけど、アマルティア姫はさっきの一撃で初めて移動(・・ )した。


 そりゃ、コレを見た事ある自国民は誰も挑もうとしない訳だよ...。

 ヤスの方を見ると、「だろぉ?」と言わんばかりに、両手を広げて首を竦めた。


 うん、やっと完全に理解した。

 アマルティア姫の婚約条件の厳しさに...。


 いつも読んで頂きありがとうございます。この章からキャラが一気に増えますので、何処かで一度キャラのまとめをしたいと思います。

 何かご要望等あれば、感想まで連絡下さい。

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