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1-12 「傭兵登録試験」

 30話程書き溜めているので、一月は毎日投稿予定です。

ーオリガ王国 リョーリカの街 傭兵ギルド


 中庭から試験官が出ていってから10分程たった。

 

 先程の試験官が去った所から目深にフードを被った、ローブ姿の背の低い女性が入って来る。


「急な事だったので、お待たせしました。私はシルヴィア、冒険者ですが、臨時で傭兵試験官をする事になりました。因みに冒険者ランクはBです。」


 ランクBって、かなり高いんじゃ...。それにわざわざ冒険者を連れてくるって事は、魔導師の傭兵志願者って少ないのかな?


「それで試験内容ですが...私が初級魔法を放つのでそれをレジストすると言うのはどうでしょうか?」


 レジストって打ち消せばいいのね。それなら不可視の盾(インビジブルシールド)でいけそうね!


「構わない。」


「じゃあ始めます。」


『凍てつく大地に光を齎す猛炎の精霊ブリギッドよ。光を知らぬ者共に裁きの炎を!ファイアーボール !』


 え?詠唱?クリス姉ちゃんの魔法ではそんなの無かったよ!?

 ってもう炎の弾がすぐそこまで来てるっ!


『インビジブルシールド!』


 直ぐに詠唱なんて思いつくはずも無く、咄嗟に不可視の盾(インビジブルシールド)を呪文名のみ発音して発動させる。

 

 すると、炎の球は見えない壁に遮られ跡形もなく消える。


「え?今のは...?」


 シルヴィアさんがキョトンとして、首を傾げている。


「すいません、何か調子が悪かった見たいです。もう1度いきますね。」


 あ、無かったことにされた。それもそうか、呪文名は発したとは言え、向こうからしたらこっちも何もしていない様にしか見えないのだ。


『凍てつく大地に光を齎す猛炎の精霊ブリギッドよ。光を知らぬ者共に裁きの炎を!ファイアーボール !』


 すると再びシルヴィアさんは魔法を唱える。


『インビジブルシールド! 』


 またも不可視の盾(インビジブルシールド)で炎の球を掻き消す。


「......。」


「......。」


 二人の間に静寂が流れる。




「あの...。もしかして、あなたがレジストしているんですか?そのインビ...何とかで...。しかも詠唱省略で...。」


「あぁ。」


「......。」


「......。」


 またも二人の間に静寂が流れる。




「えっと...どうやって...?」


 え?レジストってこういう事じゃないの?!


「ファイアーボール...魔法を遮断する壁を貼って魔法を消している。」


「魔法を遮断する...ですか?」


 あれ、何かまずいことを言った...?


「それってつまりどんな属性の魔法でも遮断出来るんですか?」


「...全ての魔法を消した事が無いから分からんが、攻撃魔法であれば恐らく。」


 するとシルヴィアの目が輝き出し、今までの穏やかな喋り方と違って、少し興奮したかの様に聞いてくる。


「あの...もう1回いいですか?」


 もう1回というのはさっきのレジストの事だろう。


「あぁ。」


『渇いた大地に恵を齎す清水の精霊マクリルよ。潤いを知らぬ者共に裁きの(たき)を!ウォーターボール !』


『 インビジブルシールド!』


 不可視の盾(インビジブルシールド)で水球が弾けて消えた。


「す、凄い...!本当にどんな属性でもその魔法でレジスト出来るのですね...!」


 突然シルヴィアさんが興奮しながら、こっちに駆け寄って来る。

 その時、駆け寄った時の風でフードが捲れる。

 するとシルヴィアさんの薄緑の頭髪と頭から生える小さな羽根が見えた。

 ピクンと動いていて、可愛い。


「あ...すいません...これは...!」


「いや、構わん。」


 こんな可愛い耳を直ぐにしまっちゃうなんて勿体無い!


「見ての通り私は羽根耳族です。人族の中には亜人を見下したり、差別する方々が居るのでこうやって隠しています。見た事ない魔法を使われる黒騎士さんも...そう言う事なんですよね?」


 シルヴィアさんは、お互いの秘密を共有出来るのが愉しいのか、嬉しそうに聞いてくる。

 こ、これは違うとは答え辛い...。


「まぁ。そんな所だ。」


 濁しておく。


「わぁ、やっぱり!」


 シルヴィアさんは満面の笑で微笑んだ。


「所で傭兵登録の試験結果はどうなった?」


「あ!すいません、つい珍しい魔法を見たのでプライベートな実験に付き合わせてしまいました!」


 そう言ってシルヴィアさんは申し訳無さそうに、頭を下げる。


「それでは受付の方へ行きましょう。」


 そう言うと、再度フードを目深に被り、受付へと先導する。




 受付へ着くと、待合室に居たモヒカンとスキンヘッドが立っていた。

 えぇまだ絡んてまくるの?勘弁してよ...。


「おっ、その様子だと合格したみたいだな!」


 さっきまでの態度とはうって変わって、棘が無い話し方でモヒカンが話しかける。


「そんなに睨まんでくれ、さっきはすまんかった。実は俺達は傭兵で、このギルドの試験官何だ。お前を試す為に、わざとああ言う態度を取ってたんだ。」


 え?どういうこと?


「傭兵ってのは仕事柄、色んな国や種族の奴と組んで戦争しなきゃなんねぇ。当然考え方の違い何かもあって、腹が立つこともある。

 だが、だからって仲間通しで争ってちゃあ連携も出来ないし、勝てる戦争も勝てない。

 だから喧嘩っ早い奴はお断りしてるのさ。」


 つまりあそこで私がキレてたら失格だったと。成程、傭兵も色々考えられてるんだなぁ。


「でもよ、おちょくってるこっちもヒヤヒヤしたぜ...!あんたのその鎧かなりイイもんだったし、殺気も半端無かったから、キレて殺されるかと思ったぜ!」


 いやいや、その割にはかなりノリノリだったよね?


「兎も角、合格おめでとさん!戦場で会ったらよろしくなっ!」


 そう言ってモヒカンとスキンヘッドは去っていった。




 受付へ着くなり、傭兵登録を開始する。

 今回は名前はジャズと名乗り、登録証を受け取る。傭兵ギルドの登録証は腕輪状になっていた。


 その後受付で一通り傭兵の説明を聞いた。


 受付での説明を纏めると。


 傭兵は冒険者と同じ様にE〜A、特Aまでのランクがあり、冒険者と同様に特A級はギルドランクとは別に国から指名されるランクだそうだ。

 A級上位の傭兵は国の騎士団からスカウトが来たり、国王のボディガード等のおいしい仕事にヘッドハンティングされるそうだ。

 その代わりに優秀な人材を引き抜かれた傭兵ギルドへは、減税から始まり、国からの高額の支援があるらしい。


 さらに傭兵には”所属”があり、任意の傭兵団に所属したり、自分で傭兵団を設立する事が出来る。私はまだ所属が無いので、”所属なし”だ。

 傭兵団にもランクがあり、所属している傭兵団のランクやギルドの評価等で決まるらしい。


 そして、傭兵の仕事は主に”戦争の手伝い”、”A級以上の魔物の討伐”なんかもある。


 ”戦争の手伝い”に関しては、どの国の手伝いをしてもいい権利が傭兵にはある。

 ただし、”国家契約”を結んだ場合はこの限りではない。”国家契約”はその国との専属契約の事で、契約を結ぶ事により、その国の依頼しか受けれなくなる代わりに、報酬に契約金が上乗せされる仕組みだ。

 当然私は”国家契約”は結ばない。

 常に戦況を見極め、幇助する国を選択していかなければならないからだ。

 

「...以上が傭兵ギルドのシステムとなっています。何か依頼を受けていかれるのであれば、カウンター横の掲示板に詳細がが書かれていますので、この後ご確認ください。」


「あぁ。分かった。」


「あの、ジャズさん?その...良かったらこの後、軽食でも食べに行きませんか?あの...ま、魔法の事とか、色々お話したいので...。」


 シルヴィアさんが受付のお姉さんの説明が終わるタイミングで、話しかけてくる。

 だけど魔法の事は深く突っ込まれると確実にボロが出る。そもそもあれ魔法じゃないんだよね...。


「すまんが、これから依頼の確認と準備をしたい。」


「あ、そ、そうですよね!傭兵になったばかりで忙しいですよね!す、すいません、そんな時に!」


 そう言ってシルヴィアさんは受付の奥へ小走りで去っていった。

 ゴメンね、シルヴィアさん...。

 羽根耳触らして欲しかったな...。



 そして私は掲示板でめぼしい依頼を探す。

 そこで、気になる一つの依頼を見つけた。


 ”オリガ王国騎士団との合同軍事演習 募集傭兵ランク:フリー”


 国とのパイプは必須だ。コレを受けない手は無い。

 私はこの依頼を受付で受けて、帰路についた。

 今回で「転生編」は終了し、次回から「オリガ王国編」に突入します。

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