1-11 「黒騎士誕生」
30話程書き溜めているので、一月は毎日投稿予定です。
ーオリガ王国 リョーリカの街 宿屋 翠星亭
朝、部屋に陽の光が差込み、目覚める。いつもより多めに休み、体力は全快だ。
手短に洗顔と朝食を済ませ、全身鎧の錬成に入る。
全身鎧のイメージは既に出来ている。
私は武具錬成を起動させる。
形状”禍々しいデザインの兜を除く黒い全身鎧”、
材質”オリハルコン”の
重量”服の様な軽さ”
特性”完全魔法耐性”を持った
武具”兜を除く全身鎧”を
出現方法”目の前に出現”
重量、特性共に大規模なチートを使用している為か、起きたばかりだと言うのに、かなりの疲労感と眠気が押し寄せる。
私は眠い目を擦りながら、アイテム鑑定を起動する。
『擯斥の暗黒鎧』
防御力+230
オリハルコン製のフルアーマー。その硬い装甲はあらゆる攻撃を防ぎ、完全な魔法防御耐性を誇るが、重量は殆どなく、メッシュ機構により軽快な着心地。
製作者︰マツリカ=スドウ
今錬成できる最高の物が出来上がった。
だけど、恐らくこれが今の魔力の限界だ。兜は翌日にまわして、今日は消耗品の買出しにいく。
翌日。
今日は残りの兜の錬成を行う。兜だけ分けたのは、兜には違う特性を付与する為だ。
私は武具錬成を起動する。
形状”分割式の禍々しいデザインの黒兜”、
材質”オリハルコン”の
重量”帽子の様な軽さ”
特性”変声機能”を持った
武具”兜”を
出現方法”目の前に出現”
続いてアイテム鑑定も行う。
『深淵の暗黒兜』
防御力+80
オリハルコン製の兜。その硬い装甲はあらゆる攻撃を防ぎ、高い魔法防御力を誇るが、重量は殆どなく、メッシュ機構により軽快な着心地。
その中からは時折、深淵からの呼び声がすると言う。
製作者︰マツリカ=スドウ
そう、”変声機能”を入れたかったのだ。
見た目は禍々しい黒鎧であっても、幼女の甲高い声で喋れば台無しだ。
そしてこちらにも”魔法防御が...”と説明があるので、どうやらオリハルコンには高い魔法耐性があるらしい。
因みに兜とブーツの底を盛っておいたので、身長160cm位には見える筈だ。
なお、”風刃改”は冒険者ジャスミン専用装備なので、”ウインドカッター”を仕込んだ指輪『風刃の指輪』も錬成しておいた。
これで準備は揃った。黒騎士の誕生だ。
早速私は傭兵ギルドに向かう。
この黒鎧は目立つのでアイテムボックスに入れておき、途中まで村人の服で行き、ギルド近くの裏路地に入って”早着替え”を行う。
ーオリガ王国 リョーリカの街 傭兵ギルド
ここが傭兵ギルドか...。
私は傭兵ギルドの看板を見上げ、扉を開く。
冒険者ギルド程では無いけど、フルアーマーは目立つ様でロビーの人達の視線を感じる。
しかし、物怖じしてはいけない、私は今冒険者ジャスミンでは無いのだ、威厳のある黒騎士をロールプレイしなければ...!
「傭兵登録をしたいのだが...?受付はここか?」
地の底から響く様な声で受付の金髪のお姉さんに声をかける。
「ひゃ!ひゃい、ここで大丈夫です!」
金髪のお姉さんが怯えながら答える。
ゴメンねお姉さん...これも世界平和の為なんだ...。
「じゃあ、頼む。」
「わ、分かりました!傭兵登録をする前に先ずは、登録試験を受けて頂か無ければなりません。それを受けて頂き、合格すれば傭兵登録が受理されます。」
「分かった。」
「それでは試験官をお呼びしますので、奥の待合室で暫くお待ち下さい。」
そう言い残し、お姉さんは逃げる様に奥へと走っていった。
待合室には既に2人の男性が椅子に座って待っていた。
一人はいかにも柄が悪そうなスキンヘッドで、スタッズのついた鉄の胸当てをしている。
もう一人はモヒカンヘアーで、肩には棘の付いた肩パッドを付けている。今にも汚物を消毒しそうな見た目だ。
え?傭兵の人ってこんな感じの人なの...これじゃあDQNの集まりじゃあ...。
クリス姉ちゃんには冒険者の話しか教えて貰ってないからなぁ...。
私が不安になっていると、モヒカンが私に話しかけてきた。
「おい、チビ!お前まさか傭兵の登録試験を受けに来たのか?」
あぁーやっぱり絡んできたぁ...。しかも、いきなり喧嘩腰。試験官まだかなぁ...。
「そうだ。」
「はっ!お前見たいなチビで、鎧着込んでる臆病者が傭兵何かなれっかよぉーー!!」
「がははははは!」
スキンヘッドと二人で大爆笑する。
まぁ10歳児何で...こんなもんじゃないでしょうか?私は華麗にスルーする。
「おい!何とかいえよっ!」
そしてモヒカンが私の兜を小突く。
あ、完全物理耐性付けてないから、ダメージがって...全く痛くないな。
そう言えば、この兜そもそもオリハルコン製だった。
「ってぇーな!何すんだよ!」
え?ちょっと待って殴られたの私何だけど?理不尽すぎないっ!?試験官はよっ!
「おめぇー、シカト決めてんじゃねーぞ!」
そう言ってスキンヘッドも近くに寄って来る。
今現在座ってる私の前に、DQN二人が立ってガンを飛ばしている状態だ。
あーそう言えば私って手加減して攻撃する方法を持ってない事に気付いた...。全部即死系の技しかない...。
単純な殴り合いだと10歳児に勝てる要素がないし、って殴り合いになったら兜を脱がされて...あぁ殴り合いはまずい!!試験官はよっ!はよっ!
私が考えを巡らせていると、モヒカンが私の兜に手をかけた。
だ、だめだよ!それ脱がしちゃ...!
「次、そこの黒いの入れ。」
その時、待合室の扉が開き試験官らしき人が声をかけて来た。
た、助かった...!
私はズレた兜を直し、待合室を後にする。
流石に試験官にビビったのか、DQN達は素直に手を離し、それ以上何も言っては来なかった。
試験官について行くと、中庭の様な所に出る。
そこで試験官がこっちへ振り向き、話し始める。
「試験は私と1体1の模擬戦をやってもらう。武器はあの木剣を使え。」
すると試験官は壁に立て掛けてある木剣を指差す。
また模擬戦か...剣術素人なので勘弁して欲しい...だって私は...。
「ちょっと待て。我は魔導師だ、それでも剣で模擬戦をやらないといけないのか?」
「なっ...お前魔導師なのか...?その風体で...いや、分かったそう言う事なら、俺では試験は出来ない。他の試験官を呼んでこよう。もう少しここで待っていてくれ。」
すると試験官は奥の方へ消えていった。
いよいよ次で転生編は最後になります。