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1-10 「ゴブリンとドラゴン」

 30話程書き溜めているので、一月は毎日投稿予定です。

ーオリガ王国 リョーリカの街 東門


 夕暮れ前、私が東門に戻って来ると守衛のスタンプさんが既に戻っていた。


「あ、スタンプさん。もう戻ってたんですね!」


「お、ジャスミンちゃん!あぁ、ドラゴンの群れと言っても3体だけだったからね。僕とマッハで一網打尽さ!」


「凄い!ドラゴンを3体も倒しちゃうなんて尊敬します!」


 え、この街の守衛強過ぎでしょ!?


「ははは。ジャスミンちゃんもその内倒せる様になるよ!」


「いやいやぁ、私には無理ですよ...。さっきも採取は出来たんですが、5株だけとって怖くなって直ぐに切り上げて帰って来ちゃいました。」


「そんな事はないよ、慎重なのはいい事さ!最近は無謀な若者の冒険者が、いきなり魔物の討伐に乗り出して命を失う事が少なくないからねぇ...。」


 スタンプさんはそう言って街の外の方を哀愁のこもった目で見つめる。

 すいません、さっきやらかしそうになりました...。


 その後暫く、スタンプさんの武勇伝を聞いた後、採取アイテムを売るために冒険者ギルドへ向かった。





ーオリガ王国 リョーリカの街 冒険者ギルド


「あ、ジャスミンちゃんおかえり!何か素材は採れた?」


 冒険者ギルドに入ると同時、ミルさんが愁眉を開いて迎え入れてくれた。

 どうやら心配されていた見たいだ。


「はい。...っといってもこれを5株だけですが...。」


 そう言いながら予めアイテムボックスから小袋に移し替えておいたエポナ草を取り出す。

 オリハルコンの棍棒とかは出さない方がいいよね。どうやって手に入れた?とかの話になるだろうし。


「...ん?あれ?これって...エポナ草じゃないっ!!」


 いきなりミルさんが大声をあげると、ロビーに居た他の冒険者も集まり出し、「エポナ草だって...?」とザワつきだす。


 あれ?何かマズったのかな...?


「これ、どこで採ってきたの!?これは特殊な岩の側でしか生えない希少な薬草で、この街の周辺だと山岳地帯(・・・・)位でしか取れないのよ!」


「その...山岳地帯に生えていたので...。」


 あれ?山岳地帯は管理区域とかで入っちゃいけなかったのかな...?

 でも普通にエポナ草の採取クエストに採取場所が書いてたんだけどなぁ...。


「まさかジャスミンちゃん、山岳地帯に行ってきたの!?」


「は...はい。」


 集まり出していた冒険者から、「何てこった!」、「おぉ、神よ!いたいけな少女をお救い頂きありがとうございます!」などと聞こえて来る。


「あそこには凶悪な魔物ゴブリンが出るのよ!今回はたまたま出会わなかったから良かったものの、ゴブリンに見つかったら、終わりよ!」


 凶悪な魔物ゴブリン?私を脅かす為に誇張しているのかな...いや、確かに強かったけど...。

 でもドラゴン3体をたった2人で普通に討伐しちゃう様な守衛が住んでる街なら別にゴブリン位で目くじらを立てる様な事じゃないんじゃ...。


「あの...でも北の森の採取場所はドラゴンが出たと守衛さんが言ってて危ないかなと...。」


 そうだよ、ドラゴンと遭遇したくないからドラゴンよりもリスクの低いゴブリンの方に行っただけなんだよ。


「ドラゴンなんか(・・・)どうでもいいでしょ?バジョットさんが合格を出したジャスミンちゃんなら3体、4体と出てこない限り問題にならないわよ。」


 ドラゴン2体までだったら余裕で倒せる見たいな事を言い出しているんですが...。どうゆう事...?


「それよりも、問題なのはゴブリンよ!

 ゴブリンはその硬い皮膚で物理攻撃を殆ど受け付けず、倒すには魔法攻撃しか無いのよ。

 でもその魔法攻撃もゴブリンの凄まじい足の速さの前では詠唱を中断させられてしまう為、オリハルコン装備で身を固めた前衛がいる、B級冒険者以上のパーティが挑む様な相手よ?」


 あれ?私の知ってるゴブリンの脅威度と違う...。


「そ、そうだったんですか...知りませんでした。」


 ゴブリンを倒したとか、言わないで良かった...。戦利品は当分お蔵入りね...。




 その後、ミルさんにこってりと絞られ、バジョットさんに2時間の缶詰教育を受け、解放された頃には辺りはすっかり真っ暗になっていた。





ーオリガ王国 リョーリカの街 宿屋 翠星亭


 はぁ...今日はとっても疲れたよ...。


 宿に戻り、遅めの夕飯を食べた後、私は自分の部屋のベッドに腰を掛けて溜息をついた。


 ミルさんとバジョットさんに教えて貰った事を纏めると、この世界の魔物には冒険者ランクと同様に6段階に分かれており、E級のドラゴンが最弱で、ゴブリンはA級、そしてその上の特A級はなんとスライム(・・・・)などらしい。


 どうやら魔物の脅威度が私の知っている小説知識とは逆転した世界らしい...。

 ゴブリン、スライムが最弱とか書いたの誰よ...。


 そして冒険者は、主にB級までの魔物をターゲットにしており、A級からは国の騎士団や傭兵団の仕事らしい。

 でも一部、この国に一人だけ居るという特A級の冒険者だけは別格で、国から直接特A級の魔物の討伐依頼をされるらしい。


 因みにバジョットさんに、「ドラゴンが怖かったのでゴブリンの居る山岳地帯に行った。」って言ったら呆れられた。

 そして、余りに常識を知らない為、「もしかしてドワーフなのか?」とも言われた。

 何やらドワーフは小さいが怪力の持ち主で、有名な鍛冶師を多数輩出している為、見たことも無い最先端の武器を使っていたりするそうだ。



 まぁ、過ぎた事は忘れて、さっきの武具錬成の続きをやろう。

 私は武具錬成を起動する。


 形状”横2m×縦1mで湾曲した”、

 材質”インビジブルメタル”の

 重量”重い”

 特性”完全魔法耐性”を持った

 武具”タワーシールド”を

 出現方法”3m手前の空間に固定した状態で出現”

 属性”パーマネント”

 

 武具錬成により、目の前の空間に透明な盾を出現させる。流石にかなり眠くなったけど、かなり錬成を使っているせいか、前の拒絶の皮の軽鎧の時の様に、意識を完全に失う事は無かった。


 盾を出した辺りを手で触ってみる。目では見えないが、確かにそこには金属の様なヒヤッとした感覚があった。

 これで魔法攻撃も防げる様になった。

 今の鎧では防げるのが物理だけの為、今後必要な場面は出て来るだろう。

 それにこの鎧で防げるのは物理攻撃だけで、物理現象そのものを無効にする事は出来ない。

 現にゴブリンに一撃を貰った時、私は吹っ飛ばされて岩に激突した事でかなりのダメージを受けてしまった。

 鎧はあくまで最終手段。攻撃が当たる前に未然に防げるのが理想だ。


 そして私は不可視の盾(インビジブルシールド)の属性をインスタントに書き換えた。

 するとさっきまであったひどい眠気が一気に楽になった。

 どうやら、インスタントで発動する場合とパーマネントで発動させる場合の魔力消費は大きく違い、パーマネントで発動した後にインスタントに属性を書き換えると魔力の大部分が戻る様だ。

 これからは戦闘前準備でパーマネント、戦闘中はインスタントで武具錬成を使うのがセオリーだろう。


 これで傭兵(・・)となり、戦争終結に向けて動き出す最低限の材料は揃った。


 私が現時点で考える戦争終結までのシナリオはこうだ。

 まずどこの国にも所属しない傭兵団を作り、全世界に力をアピールしつつ、領土を攻められている国と連携を取りながら戦争を仕掛ている国を片っ端から叩いていく。

 そして戦争が止まった後、抑止力としてどこの国にも所属しない傭兵団を残し、軍事国家を監視する。

 まさに”拒否権”を恐れることなく活動出来る”国連軍”の完成だ。


 だが現在いくつか駒が足りない。


 まず一つは、傭兵団だ。世界を相手取って戦争を調停する為の屈強な軍隊が必要だ。


 次に、その傭兵団を世界に派遣する為の”足”だ。この世界は輸送機はおろか、飛行機自体ない。戦争が始まったという連絡が入っても、傭兵団が駆けつけた頃には既に植民地化されてしまっていてもおかしくない。

 その為には転送アビリティを持った人物が必要だ。幸い既に転生済みなので探し出し、合流すればいい。

 

 そして最後に一番重要なのが、傭兵団や各国との人脈を束ねる”顔”だ。

 残念な事に今の私は10歳程度の幼女だ。どんなに雄弁を奮おうとも、舐められる。誰もついては来ないだろう。

 そこで全身鎧だ。

 顔を隠し、力で持ってそのカリスマを植え付けるのだ。

 全身鎧を着ていても身長は誤魔化せない。

 が、性別と種族は誤魔化せる。

 バジョットさんが疑った様にドワーフみたいに小さくても強い種族はいるので、これなら問題は無い筈だ。


 私は翌日から全身鎧の錬成に入った。

 10話使ってしまいましたが、次回やっと黒騎士登場です。

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