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第9話

 ザワザワと人並みができた。

 何故なら畑山という男の片腕が謎の黒い空間に呑み込まれ、それを必死になって取り出そうとしている。

 その姿をクスクス笑う青島桐子。

「あら、ごめんなさいね。今助けてあげるわ。」と片腕をあげると空間はなくなり、その中から複雑骨折した腕がてできた。

「ぐわあああ!!」と叫ぶ畑山を横目に

「めぐみ先生、いいんですか?追わなくて?あの男、また何処かで悪さをしますわよ。」

彼女は一部始終見ていたらしい。

「...わ、私は。」言葉を濁らせると

「ふふ、まあ、答えも急ぐ必要はないしね。今はこの場を楽しむのが一番ですわね。」とツカツカと畑山の所へ向かうとまるで自分が支配者だと言わんばかりの冷徹な笑みで

「ねえ、加山って男の子知ってる?」と聞き出した。

「...知らん。」

「嘘ね。貴方の部下でしょ?まあ、枝の末端の男かもしれないけど。私そのヒト探してるの?今呼んできてもらえるかしら?」

「だから知らないと言っている。」

「そう、なら貴方には用済みね。」

 彼女の右腕に、電磁波がやどる。

 そしてそれを振りかざすと巨大な暗黒空間が生まれた。

「なんだ、これは...。」

「貴方たちの世界ではブラックホールと呼ばれているものよ。サヨナラ。武人さん。」

 その暗黒空間はまるで意識を持っているかのようにバクバクと口を開き、畑山に襲いかかる!

「畑山さん!」

 そのとき、部下の一人が駆け付ける。畑山を庇い手を大きく広げた!が、あってなく暗黒空間に飲み込まれてしまった。

 そしてそのまま、畑山に襲いかかる。

「フッ、さすがに異界の化け物じゃあなあ...。相手にならねぇわ。」諦めと称賛を、込めた感情を言葉を放つと同じにがぶりと暗黒空間に食い潰された。


 ザワザワ人だかりができる。

 動画をとっているものもいた。

 武骨の闇の世界の住人は立ちすくみ、そこから1歩も動けなかった。

「あら?もう終わり?だったら行くけど。」

「ま、待てや!」と一声かけた彼の頭上に暗黒空間が浮かぶ。

メキメキメキ!

 容赦なく食い潰す。

「何かしら?」と冗談めいた事を口にするのだが、誰一人答えられなかった。


 たまたま居合わせた野次馬の一人が動画を投稿サイトにアップした。

「これぜってーやべーから!どれだけ再生回数行くんだろう!これを期にユーチューバーになるのもありじゃね!」なんてはしゃいでいたがしかし、アップされた動画は、砂嵐しか写っていなかった。

「え?なんでだよ!...こんな事って!」

携帯をもったまま固まっていた。

 その彼の背後に彼女が向かう。

「おいたはダメよ。」

 それだけを告げ彼はコクコクと無言でうなずく。

そんな彼を無視して、私の方角までツカツカと歩いてきた。

「先生、良かったら私に付き合ってくださる?謙二とかいう男。私も興味がわいてきたわ。」

 私は裏切られた事もあり、何も言えず無言で彼女に付いていく。

「いい判断だわ。」

 妖艶な笑みを浮かべ、駅から放れていく。

 数人彼女に殺された。

 でも証拠は何処にも存在しない。

 まるで神隠しにあったように...。



 ●●●



 ハアハアハア!

 俺こと、謙二は駆け抜ける!捕まるわけには行かない!

 なぜならその100万なんてもうねーからだ!口説きたいキャバクラの女に注ぎこんじまった!

 そして、めぐみを裏切った!もう宛もない!


 ただガムシャラに走り、気が付くと路地裏にたどり着いた。

 そこで俺は息をきらす。

 ああ...。なんでこんな事になっちまったんだろう。

 元はと言えばお袋の借金がいけねーんだ!そこから俺の不幸は始まった。何故か俺が働きに出され、その金を借金に返す処か、お袋はパチンコに使っていた。

 頭に来た俺はお袋を撲殺した。

 倒れこんだお袋。頭を抱える俺。

 何故か畑山に救いを求めた。

 畑山は承諾。変わりに畑山の事務所の一員になった。

 行く宛のない俺には好都合だった。

 が、反対するめぐみ。事情を知らない癖に!

 気がつけばめぐみをぶん殴っていた。それが、引き金になった。


 俺達の関係は歪な物になっていく。

 いつしか諦めたのかめぐみは何も言わなくなった。


 それもムカついた。

 ...俺はどこまでもガキのままだった。


人生最後の一服かもしれない。

タバコに火をつけ、夜空を見上げる。

 思い返してみるとロクな人生じゃなかったなぁ。

 少しだけ、暖かい涙がこぼれ落ちた。

 そして冷たい寒空の中、カツカツと死神の足音が響きわたる。

「だれだぁ?」

 振り替えると一人のクソガキがいた。

「俺は風上優矢。めぐみ先生の生徒だ。悪いけどアンタぶっ殺して、警察に突きだす。」

「ハン?だから何だ?テメーごときに捕まる俺じゃねーぞ!」

 自棄になった俺はポケットの中に隠し持っていた、ナイフを取り出す。

「悪いけど今の俺なら刺せるからな!」

「威勢のいいやつほどハッタリが多いけどね。」

「ハッタリだと思うのか?こらぁ!テメェぶっ殺してやる!」と俺が真っ正面から突っ込んだときだった。


 トスッと誰かが俺の背中にナイフを突き刺した。

 え?

 振り替えると別の少年が振るえながら、血塗れのナイフをもっていた!

ドクドクドクと俺の体から血が流れる。

その姿を楽しげに

「...やった。やったぞ!コイツを刺せば借金はチャラだ!」と爆笑していた。

なんだこいつは!本物の悪魔かよ。

血が抜けたのせいか、身震いを覚え、ただ、地面に倒れこんだ。


あー、これ、終わったなぁ...。

さみぃなぁ。

もうむりか...。

なんてぼやいていると

「加山あああ!」と大声をあげ、俺を刺した少年を思いっきりぶん殴った!

「テメェ!やっていいことと悪い事あんだろうが!」

「ハ...ハハ!お前に何が解るっていうんだよ!お前のせいで俺の人生メチャクチャだ!」

「自業自得だろうが!すぐ救急車呼ぶから!」と風上はポケットに手を突っ込み携帯を取り出すとそれを加山と呼ばれた少年が奪い取る。

「何すんだよ!返せよ!」

「こっちも騒がれたら困るんだよ!」と風上の携帯をぶち壊した。

「てめ!何てことするんだよ!」

「それはこっちのセリフだ!テメェのせいで人生メチャクチャだ!言わばこれは自業自得ってやつだ!ぎゃははは!」

爆笑したまま背を向けて走り出す。

風上は追いかけようとするが、振り返り

「おい!大丈夫か!?」なんて声をかけてきた。

「大丈夫に見えるかよ...。」

「すぐ救急車呼ぶから!」

「...いや、いいよ。俺は助からない。あー、なんて人生だったんだ。俺...。めぐみ怒ってるよなぁ。」

「当たり前だろうが!勝手に逃げんじゃねぇ!罪を償えばいいじゃねーか!この臆病者!」

「あー、誰に言ってるんだよ。」

「お前しかいねーだろ!まってろ!誰か呼んでくる!」

風上は走り出す。


はは...。コイツ馬鹿だろ。本当ならお前が刺されてたかもしれないんだぞ!なんて皮肉が言えないほど激痛に苛まれていた。

あー、いてぇ。

きっとこれで最後なんだろうなぁ...。

でも...まあ、しかたねーか。


これが俺の人生だって事だ。

どうしようも...ない、...じん..せ...。


そして俺の意識は途絶えた。


●●●


はは!ハハハ!

やったぞ!俺はアイツを刺した!これで無罪放免!

借金地獄から逃れられる!

走る!ひたすら走る!俺は迎えの車を待っていた。

「あら?何処に行くのかしら?」

誰かの声が聞こえる。

「ああ!誰だぁ!」

ナイフをそちらへ向けて、振り返ると弱そうな女だった。

「始めまして、青島桐子といいます。」とソイツは自己紹介を始めると

「悪いけど貴方には死んでもらいます。」と俺につげた。

「は?何でだよ!」

「貴方はある人の障害になるから。そして、貴方のやり方がとても不様で見てられないの。正直貴方は失敗作だわ。」

「は?はは!ただのメンヘラかよ!お前さあ!俺はさっき人を殺してきたんだぜ!一人も二人も変わらねーよなあ!」

俺は血塗れのナイフを見せ付けながらジリジリと近付いた。

が怯える様子もなく

「あら?それは奇遇ね。私も先ほど数十人ほど人を殺めてきましたわ?」とクスクス笑う。

「な、何言ってるんだ!てめぇ!きもちわりぃ!ぶっ殺してやる!」とギラついた刃物を強く握り、この女の腹部目掛けて走り出した!

その時だった!

「!!!!!」

ブアンと奇妙な音と共に現れた真っ黒の空間。

それはまるで俺を飲み込むように近付いてきた!

奇妙な空間に目を奪われてしまったため、俺は小石につまずき、勢いあまって地面に転けた。

すぐに振り替えるともう目の前に迫っていた。

「うわあああ!くるな!来るなあ!」

ブンブンとナイフを振り回すがお構いなしに大口を開く。


ガブリと俺は呑み込まれた。

うわあああ!

メリメリと骨が圧縮機にかけられたように潰されていく。

が、しかし、この暗黒の空間は遊んでいるのだろうか?

また口を大きく開き、まるで食事の動作をする。

その瞬間を狙って体を反転させ、脱出した。

「あら?案外しぶといものね。次は何をしてくれるのかしら?」

クスクス笑いながら女は近づいてくる。

粉々になった骨の傷みで狂いそうになる。

が、何とか立ち上がり、ヨロヨロと歩きだした。

その瞬間だった。

まるで地面にマンホールの落とし穴があったかのように暗黒の空間が存在した。

「うわあああ!」

俺はそのままストンと飲み込まれ、シュレッダーのようにメキメキと押し潰されていく。

そしてそのまま、意識は途絶えた。


●●●


仕掛けた暗黒空間に加山はうまくはまってくれた。

それが気に食わないのか青島桐子は振り替える。

...ちょっとやばいかな。

私こと、風上由衣は流石に危機感を覚えた。

私は

「あらぁ?誰かしら、無粋な真似をするのは?」

青島桐子は振り替える。

電磁波が通った腕を掲げた少女がそこにいた。

「青島桐子、やはり貴女が一番危険ね。私はずっと貴女が害をなす存在だと思っていた。...でも貴女、何者?」

「フフ、知りたい?」

「ふざけないで!」

「まあ、冗談はこの辺にして...、貴女を巻き込んでしまった罪もあるし、いいわ教えてあげる。」

そして彼女はスカートの裾を摘まみ丁寧に挨拶をした。

「お久しぶり、そしてヒトの体では始めましてかしら?私は青島桐子、貴女をここへ招いた"世界"そのものよ。」

「え?」

その瞬間、全ての答えが見えてしまった。

「私の正体は"世界"、貴女をこの世界へ導いたもの。」

「...じゃあ貴女が私と契約した世界だっていうの?」

「ええ、そうよ。」

「...なんでそんなことしたの?全然理解できないんだけど!」

「そうかしら?まあ、厳密にいうと貴女には手伝ってもらったというか...。」

「勿体ぶらないで教えて!」

「フフッ、私ね、風上優矢に一目惚れしたの。」

「え?」

「彼が生まれた時から見守ってきたわ。どんどん成長していく彼が愛しかった。でもね。」

「...。」

「...でもね、彼交通事故で亡くなってしまったの。だから私は掟やぶりの時空転移を使うことにした。そしたら、適任者がすぐそこにいたわ。」

「...それが私ってこと?」

「ええ、そうよ。貴女、風上優矢にかばってもらったこと、とても後悔してた。私も風上優矢に生きていてほしかった。だから利害の一致。本来、貴女が轢かれたパラレルワールドに貴女を送りこんだ。

結果、貴女が風上優矢と接触しないかぎり、世界の確変はおきない。

そして私の嫉妬もなくなった。」

「...どういう事?」

「貴女ね。風上優矢に近づきすぎなのよ。いつもベッタリでどれだけ嫉妬したかわかる?」

「...ようは体よく私に呪いをかけたっていうわけね。」

「御名答、よく解ったわね。」

「ただ、本来出会う事のない出合いが風上優矢に起きてしまった。」

「亜季に出会ったことね。」

「そう、彼は本来決められた進むべき未来から大きく外れ、誰も知らない未来を歩む事になった。そうなると"宇宙"はすぐに気づき流れを正そうとする。」

「それが強制力?」

「そう、あれは私の力では遠く及ばない"宇宙"の力よ。人々が生まれ死ぬまで、宇宙が全て管理している。勿論私地球の存在も同じよ。

それを正しい道に戻すため、強制力が働くの。何度目かの過去で風上優矢が事故で亡くなったでしょ?あれは辻褄併せの解りやすい例ね。

宇宙が風上優矢を殺したと言っても過言じゃないわ。」

「そう、なら犯人は宇宙と言うことで決定つけていいわね。」

「ええ、そうね。ただ、まだ話の続きがある。風上優矢が強制力で罰せられたあと、次に罰せられるのは私。そう地球が宇宙に罰せられるの。風上優矢が殺された数日後、グランドクロスで私地球は崩壊してしまう。そう、貴女たちの住む場所はなくなってしまうわ!」

「はあ?ふざけないでよ!何よ!それ!」

「だってそれが宇宙の法則だもの。もし、回避する方法があるのなら、飯塚亜季、あの子がたどり着いたこの終着駅で、宇宙である神を欺くしか方法はないわね。」

「...やっぱり飯塚亜季、あの子か鍵になるのね。」

「ええ、そうね、もし、グランドクロスを逃れられる方法といえば、それしかない。運命はあの子の行動で決まるの。どのような結末になろうともね。」

彼女はフフと薄く笑った。

それをなんの意味を、なしているか知るよしもなかった。

そしてそれが全ての始まりだった。


●●●



同時刻

「最近、優くんとお喋りできないな。」

飯塚亜季がひとり空を見上げ、ぼやいている時の事だった。

不意に小石につまずきそのままよろけてしまった。

「あわわわ!」

その時誰の手に掴まれ、態勢を調える。

「あ、ありがと。えっと..。」

なんて変な挨拶をしてしまった。

顔を見上げるとこの世の者とは思えない絶世の美男子がいた。

「ふふ、僕は黒井宙(ソラ)っていうんだ。君は?」

「え?私?私は飯塚亜季...。」

「そう、亜季ちゃんだね?それより怪我は大丈夫かい?」

手を差しのべる彼の姿が魔性の者に見えて逆に恐怖してしまった。

「え?だ、大丈夫です。私はこれで!」とそそくさと走り出す。

それをクスリと笑う。

「相変わらずだね?亜季ちゃん。」

彼は妖艶な、笑みを浮かべ、反対の方角を歩きだした。



第10話へ続く。

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