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第3話

 今日は遊園地!

 つーかね!みんなでさわぐの久し振り!俺こと、風上優は年甲斐もなく朝早く起きて、歯磨きをしていた。

 するとチャイムがなる。

「優くーん!起きてるー?」

 ああ、隣に住んでる亜季の声だ。

 小さな声で「おじゃましまーす...。」なんていってドアを開け、玄関に入ってくる。

「おー、亜季!はえーな。」と返してやると、

「えー、ふつーだよ。」なんてほざきながら、靴を並べていた。

「っていうか、優くんが遅いんだって。もー、普段は私が起こしに行かないとダメなんだから。」

「お前なぁ、俺だって起きるときは起きるよ!つーか、お前だって受かれて忘れ物してんじゃねーの?」

「えー?そんなことないよ。...ちょっと待って。確認してみる。」

 少し不安になったのか、廊下に鞄をおいて、中を調べ始めた。

「おーい、大丈夫かー?」なんて聞くと

「うん!大丈夫だったよ!」なんて答えが返ってきた。


 よし!じゃあそろそろ出発か!

 キッチンのところにある菓子パンを二つ手で掴み、

「ほら亜季。」と投げ渡した!

「え!え!」と慌てて、クリームパンを両手でキャッチすると、袋をあけて、パクりと食べた。

 なんかその姿が小動物に見えて少し笑えた。

 ジーっと眺める俺に気付き、

「えー?何ぃ?」と膨れながらジッと睨む。

「んー、なんでも。」

「えー?だからなによぉ!」と俺を追いかける形で家を後にした。


 電車に乗り、隣町までつくと、でかでかと遊園地のポスターがはってあった。

 まー、このポスターやら広告を追っていけば、間違えることはないわな。


 駅の奥へ進むたびにガヤガヤ人が賑わってくる。

 キャーキャー声が聞こえてくる。

 そして、遊園地のエレクトリックなBGMが小さな音で聴こえてきた。

「ふふ、なんか楽しいね。」なんて亜季がつぶやく。

「...ああ、まあな。」なんて俺は照れ隠しで答えた。



 ●●●



 10時20分、遊園地の入り口前で亜季とウダウダ待っているとだ。

 ガッツりお洒落を決めてきた沙希が

「おはよー!」なんて走りながら現れた。

「ごめんねー!なんか電車が途中でとまっちゃってさぁ!」

「んー!大丈夫だよー!今日楽しみだね!」

「だねー!どこいく!最初からジェットコースター乗っちゃう?」

「えー!最初からー。違うのにしない?」

 なんて女子だけで盛り上がりだした。

 ハイハイ、俺は蚊帳の外ですよ。なんてふて腐れてたらニヤニヤした沙希がこちらへ近づいてきて、脇腹をコチョコチョ触ってきた!

「うお!なんだよ!わはは!やめーって!」

「えー、やだー!ってか、何ふて腐れてんのよ!今日は何の日かわかってんのー?」

「わかってるから!やめーって!ワハハハ!!」

「ん、じゃ、やめる。」

 やっと解放してくれた。

「お前なぁ!不意打ちはやめろよな!びっくりするじゃねーか!」

「んー?それブーメランでそのまま返してあげようか?普段あーゆーことやって優だからねー?」

「は?やってねーって。俺そんな子供じみたことしないもん。」

「いや、してるから。ねー、亜季ぃ?」

「え?あ、うん。してるよ。」

「うわ、亜季、お前なぁ、そういうのを真顔でいうのやめーや。」

「えー、だってやってるもん。」

「お前なぁ、少しは俺の味方をしろよー!」なんてじゃれあっていると、

「おい!風上優矢!亜季センパイからはなれろ!」

 なんて声が聞こえてきた。

 ん?誰だよと、振り替えると腕を組み、俺をにらみつける、黒髪ツインテールの女の子、と、その横にいた浩平だった。

 優芽ちゃんは少し、浩平のうしろに隠れながら

「おい!風上優矢!お前が近くにいるせいで、亜季センパイ困っているだろ!」なんて俺を指差しながら怒鳴り付けてきた。

 その仕草が可笑しくて、

「やーだねー!」なんて子供じみた事で挑発して、俺は亜季の首に手を回すと

 優芽ちゃんのやつ。

「あー!なにやってんだー!離れロー!」と、じたばた暴れだす。

 亜季は亜季で

「ゆ、優くん、な、なに?」なんて、顔を真っ赤にして、慌てながら聞き返してきた。

「ん、別にー?ちょっとねー!」とニヤニヤしながら、亜季を抱き寄せると優芽ちゃん、「ムキー!」とかいいながら、突進してきた。

 頭が俺の溝にのめり込み、「うげ!」と声をあげてしまう。

 地面にしゃがみこむ俺を見て

「どうだ!参ったか!」なんて腕を腰にあて、ヒーロー気取りのコイツは「あーきセンパイ!」と亜季に抱きついてきた。

「ちょ、ちょっと、優芽ちゃん...!」

「亜季センパイいい匂いするー!」

 と、亜季の体に自分の顔を擦り付けている。

 明らかに変態じゃねーか。

「このレズヤロー。」とボソリと呟くと

「む!何か言ったか!風上優矢!」

「べーつにー。」

「きー!その態度ムカツクー!」とまた俺をにらみつけると亜季が

「まあまあ、優芽ちゃん、その辺にしておいて。優くんだって悪気は...たぶんないし。」となだめる。

「ある!絶対コイツ悪意があるよ!」と騒ぎ立てるコイツは浩平の妹、優芽ちゃん。

 もーね。レズかってぐらい亜季の事を尊敬していて、憧れの存在らしい。

 で、まー、アニメや漫画が大好きで、少女趣味。

 さらに人見知りで、性格最悪。

 な、もんで、なかなか同級生と仲良くなれなかったらしい。

 そんな状況を打破するために浩平が俺たちに引き合わせたって訳だ。

 初めは大人しかったくせにじょじょに本性表して、今じゃこの有り様。

 もー!大人しくしてくれよ。


 なんて考えていると優芽ちゃん、俺のケツに蹴りを食らわせる。

 そうはいくか!優芽ちゃんの足をつかみ

「ふははは!甘かったな!優芽ちゃん!お前の技は見切っている!」

「なにー!風上優矢!卑怯だぞー!」

「いや、卑怯なの、お前だから!」

 なんてふざけていると「さ、いこいこ。」と沙希が浩平と亜季の背中を押して、遊園地に入っていった。

 おい!おいていくなよ!



 ●●●


 あれから一時間馬鹿みたいにはしゃぎまわった!

 最初にコーヒーカップに乗り、メリーゴーランド、ジェットコースター、お化け屋敷とラインナップが続き、さすがに疲れた。

 休憩。

 すると、冷たい何かが、俺の頬にぶつかる。

「うわ!なんだ!」

 振り向くとそこにいたのは沙希だった。

「ふっふー!楽しんでるー?」

 そして、片手に持っていたコーラを俺に渡してきた。それを受けとると口につけ

「おー、楽しんでるよー!」と適当に返事を返して、ゴクゴク イッキするとジーっと見つめてくる。

 で、俺に一言

「ふう、何かねー。こんな、いつものアンタ見てるとこっちは拍子抜けしちゃうよね。」と肩をすくむ。

「は?なんのこと?俺はこんなんだろ?」

「まーねー、こんなんだよねー。」

「...なに?俺の顔になんかついてる?」

「...べつに。」

「だからなんだよ、一体?」

「はぁ、気合い入れてきて馬鹿みたい...。」

「は、なんのことだよ?」

「別にー。...まあ、これが自然体か。ふふっ。」

「なんだぁ?急に笑ったり溜め息ついたりして?きめーな。」

「きもいって!人の気もしらないで!笑うな!」と沙希は俺に蹴りを入れてきた!

 いってーな。優芽ちゃんといい、なんで俺の回りの女は凶暴なんだ!

 まともな女っていやぁ、亜季ぐらいだよ。

 遠くで優芽ちゃんと風船を貰っていたが、俺の視線に気付いたのか

 亜季が俺らに手を降った。

「俺も手を降り返すと、ニコニコ笑顔で

「二人ともー。次何に乗るのー?」と聞き返してきた。

 ったく子供なんだから。

「おー、ちょいまてって!今行くから!」俺は立ち上がるとみんなの所へ戻っていた。



 ●●●


 さすがに夕暮れ時。やっぱり何も変わらない。

 いつも通りの過去だった。


 遊園地に来ると沙希は優くんに告白しない。

 何故か意気消沈しちゃうんだよね。でも、12月3日優くんが殺されるのは変わらない。

 そして、犯人は解らずじまい。


 優芽ちゃんは沙希と浩平くんとで、ジェットコースターに乗るみたい。

 私と優くんはさすがに疲れて、遊園地の中をプラプラ歩いていた。

「なんか、久しぶりだな。こういうの。」

 優くんがつぶやく。

 私は「うん。」とそれだけ返事した。

 とてもい心地のいい時間。

 を壊すように大声が聞こえてきた。


「あれぇ!優じゃね!」

「は?誰だよ?」優くんは振り替える。

「俺だよ!俺!栗山!今横山さんたちと遊びにきてんだけどぉ、お前こんなところで何やってんだよ!ぶはは!」

「は?そりゃ、こっちのセリフ!お前らこそ遊園地なんて似合わねーよ!」と優くんは栗山の太ももに蹴りを入れるとそれをかわす。

「あぶねー、これだから狂犬は怖いねぇ!」

「誰が狂犬だ、こら!」

「おめー、以外いねーだろ。つーか、そろそろケンカ卒業したらぁ?今時はやんねーよ!ぎゃはは!」

 栗山くんはお腹をかかえて笑い出すと、

「おぉい!栗山何してんだよ!早くいくぞ!...ってあれぇ!優?...とあのときのねーちゃん!」

 と確か、横山という大男がこちらへ向かってきた。

 優くんはむすっとして

「...ああ、横山くんね。なんすか?」なんて不貞腐れながら言うと片手で、私を背中に隠した。その姿をみて

「ガハハ!もー、お前らに何もしねーよ!ねーちゃん!あんときは悪かったなぁ!」と謝ってきた。


 え?なんのこと?


 キョトンとした私に優くんが

「あのさあ、コイツ怖がってるから。悪いけど...。」何て言うと

「...おー、おお。そうか。それは悪かったな。まあ、優!また何処かで見かけたら飲もうや!」なんてクイッと飲むジェスチャーをすると仲間のほうへ戻っていた。

 そのあとを着いていくかのように栗山くんが

「おー、じゃあな優!また何処かで合ったら声ぐらいかけろよ!」なんてニヘラニヘラ笑みをうかべ、

「ちょ!横山さーん!待ってくださいよぉ!」と急ぎ足でかけていく。

 その姿を見つめ、優くんが、

「...おー、なんか嫌な思いさせちゃって悪かったな。」と一言呟いた。

「ううん、大丈夫だよ...。それより。」

「ん?なんだ?」

「あの人たちとはいつ出会ったの?」

「は?お前忘れちゃったの?あんな出来事!」

「え?あ、あ!うん!ごめんね。...あの出来れば教えてほしいな。」

「ったく、まあ、お前がいいっていうならいいけど、まー、なんつーの?あれは6月の話でお前が栗山の事、ガン無視してたらアイツキレて、お前の事さらったじゃん?そこまで大丈夫?」

「あ、うん!続けて?」

「で、俺と浩平でお前の事助けにいったとき、栗山のバックが横山っておっさんだったの。まー、そんな話だけど、まー、無理に思い出す必要ねーって。過ぎたことだ。忘れろよ。」

「う、うん。」

 私は優くんに従うように頷いた。

 当然理解なんてしていない。

 ...おかしい。

 何かがおかしい。


 だって私が拐われたのは12月。それは何回過去に戻ってきても変わらないから。

 もし、私が不貞腐れてあんな態度をとらなくても、11月になると栗山くんは、私に声をかけてくる。

 そして私は何らかの形で拐われるのだ。


 でも、この過去では私は6月に拐われた事になっていた。

 何かがおかしい。


 そんな私を気遣って優くんが

「大丈夫か?」と声をかえてくれた。

「...うん、大丈夫だよ!なんか心配かけちゃった、ごめんね。」

「そっか。まあ、お前が大丈夫ならいいか。」

「うん!次は何に乗る?」

「あー、そうだな!ゴーカートみたいなやつあるじゃん!あれいいんじゃね!」

「うん!優くん早くいこ!」と優くんの手を繋ぎ、駆け足で、走り抜ける。


 その時だった。


「ひさしぶり。」

「え?」

 私は立ち止まる。そして振り替えるとあの時の少女がいた。


 人混みの中、ここだけが、時間が止まったように感じた。

 この娘がフードを脱ぐと

「ふふっ、おねーちゃん。遊ぼ?」と私に回り込み声をかけてきた。


 第4話へ続く

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