テレポート
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出発前に、ラジオ体操をした。
僕は、体だけは柔らかい。
ゴム人間とまではいかないが、中学時代のスポーツテストで、前屈だけはAランクだった。
ここは、16羅漢のある公園。これからは、ここから出発して、ここに戻る。
蓮の花の上に座禅をした、16体の阿羅漢の巨体の石像が、等間隔で円陣を組み、中央に立つ僕を見下ろしていた。
「どうしても行くのか」
「はい」
「お前の相手は、殺虫剤を100本使っても、勝てる相手ではないのだぞ」
「はい」
「戦いに負ければ、戻れなくなるのだぞ」
「分かっています。でも、このままだと世界は虚無の世界に飲み込まれてしまう」
「お前は非力なのに、なんの武器も持たずに。ほほほほ…」
「だからこそ、武器が欲しいのです。このまま黙って見ているだけですか?ただそこに、腰掛けているだけですか?僕に武器を下さい。力をお貸し下さい」
その時、僕の足元に『ショート・スピア』が現れた。
(※ショート・スピアは、時代・地域を問わず用いられた槍である。木の棒の先に、尖った穂先を取り付けたシンプルな武器であり、有史以前の狩猟生活の時代から存在している。刺突のほか、投かくにも用いられていた。戦場での兵器としても、集団戦、騎上戦、遠距離戦、あらゆる局面で使われ、銃火器の発明をみるまで地球上で最も普及した武器である。)
「これが、僕の武器ですか?」
「そうだ」
「防御は?」
「お前の体は、もうすでに透明なシールドに覆われているのだ」
阿羅漢の一人が言った。
「それと、仲間が欲しいです」
16体の石像が、一斉に笑った。
「ははははは。仲間だと?」
「聞き入れて貰えませんか」
「無理な相談だな」
「僕のレベルが上がれば…?!」
「そうだな。考えても良いだろう」
僕は頭を下げた。
「それでは、頼んだぞ」
その瞬間、僕の体はテレポートした。