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王家の血筋が強くなった理由

 

 あーーーーーーなんつーか、懐かしい光景だ。ラグエル卿んとこで見た、朝練の光景が目の前に。

 うんうん、これならあたし達は無事だ。王様、周囲を見る余裕なんかカケラも無さそう。

 

「異世界の方々は、凄くお強いのですね」

「うん、赤毛のおっさんが最強!んでも槍を持ってるおっさんも、もんのすっごく強いんだよ」

 

 身内自慢しました!

 

「それでさ、術士さんは、ナディーヌを放置して参加するつもりなのかなぁ?」

「うっ……」

「本当に、訓練好きだよねー」

 

 ローランさんは、そわそわしてナディーヌさんをどこかに置けないか吟味している。そんなに訓練がしたいかっ!医者が、患者放置ってダメじゃん!

 

「仕方が無いなぁ。あそこなら全体が見れるし王様から近いから、あそこまでナディーヌを運んで。

 後は、あたしがクッションになるヨ」

「いや…それは……」

「サミ、それでは貴方がお辛いでしょう?」

「大丈夫。あたし、かなり丈夫に出来てるから。

 いこっ!」

 

 ローランさんはあたし示した場所に歩き出し、ギュスターヴさんは慌ててどっかに走って行った。どこへ行ったんだろ??

 

「この木はいい感じ。よっかかれるし、日陰になるし、見渡せるし。ちょと待って。

 うん、ナディーヌ頂戴」

「サミ殿~~」

 

 ギュスターヴさんが、必死になって大量の布というか、もふもふを抱いて走ってくる。背後にも、同じような人達を二人ほど従えていた。

 

「こ、これを……」

 

 既に座っていたあたしを立たせて、とてもじゃないけど地面に置けないような美術品のような布と大量のクッションが置かれた。………えっと地面に置く事も悪だし、美術品の上にこんな普段着のあたしが座るのは、もっと悪じゃないでしょうか?

 

「汚れる……」

「サミ殿が汚れてしまいますし、いくらナディーヌ様が軽くても、やはり地面は固いですから体を痛めますよ」

「こ、こんな高そうな、貴重品そうな、立派なものに座れません、です…」

「大丈夫です」

 

 何が?

 

「こんなものは、また作ればいいのですし、洗濯すればいいのです。その為にあるものをその為に使わないのでは、この道具達が可哀相ですよ」

 

 説得力が物凄くあるけど……あたし的には、これは眺めるというか、それこそ美術館に展示しなくちゃいけないもんなんですけどーーー。

 

「サミ、貴方の体に負担がかかる方が悲しいわ。どうか気にしないで。早く見ましょう」

 

 麗しのナディーヌさんに言われてしまったら断れない。諦めて、もふもふのふわふわの美術品の上に座り手を広げた。

 

「サミさん、寒いと感じるようでしたら直ぐに私を呼んで下さい」

「うん」

「で、ではっ」

「頑張ってねー!」

 

 ローランさんは、あたしにナディーヌさんをそぉっと渡した後、ダッシュでおっさん達に合流した。本当に訓練好きの人って……。

 暫くの間、ナディーヌさんは王様を一生懸命見て、ギュスターヴさんは少し離れて立ったまま訓練風景全体を見て、あたしはおっさん達を見ていた。

 

「フェルナンが、あんなに必死だなんて…初めて見るわ」

 

 初めて見る必死?

 腕の中に居る人は、絶世の美人と言っていいほどの器量良し。加えて、性格も優しくて穏やかな感じの良い人だと思う。こんな最優良物件、ライバルは、はいて捨てるほどいそうだよねぇ?必死になって口説いたんだじゃないのか?あ、王様だから?最高権力者は、嫁を拉致放題?

 

「ねーナディーヌは、この国の人?」

「はい。田舎の弱小貴族の生まれですわ」

「田舎でも、ナディーヌの事をお嫁さんにって人がいっぱい居たんじゃないの?」

 

 ナディーヌさんの肩が震える。笑っているらしい。

 

「居ませんわ」

「え?」

「私は、自分の家からほとんど出た事がありません。大抵は、ベッドの中。だから、家に来られる方でもお会い出来た方はほんの少しです。

 それにね、サミ。子供を産めそうに無い女に、結婚を申し込む人は居ませんわ」

 

 あ、この世界の女の人は子供を産む事が仕事なのか…。それも、貴族じゃぁ長男を産まないとダメそうだなぁ。この話題、失敗した?う…話題変更。

 

「あれ?そうしたら、王様は?舞踏会とか出られないだろうし……どうやって出会ったの?」

「少し長くなりますが、聞きたいですか?」

 

 ものすっごく聞きたいです。「うん!」と元気良く頷きましたともさ!

 

「あれは、フェルナンがまだ王になりたての頃でしたわ。その頃、この国は大変貧乏だったのです」

「は?」

「フェルナンのお父様の代まで浪費に浪費を重ねていて、国は民の為に一切機能していませんでした。

 それを、フェルナンは必死になって立て直していました。舞踏会は、特別な時以外一切禁止。王の服や食事は、ほとんど民と同じようなものに。そして、今まで贅沢していた分上がっていた税金を、徐々に下げていくつもりだと発布なされました」

 

 うっわ、そんなゴージャスな生活に慣れていた王様の息子さんが、どうしてそんな発想が出来たんだ??

 

「何で、そんな事を?」

「フェルナンのお母様は、商家の方なのです」

 

 あー、いわゆる庶子だ。きっと王妃様は別に居る。

 

「ずっと、お母様に育てられたんですか?」

「そう聞いています」

「だったら、なぜ?」

「フェルナンが、一番強かったからですわ」

 

 なるほど、庶子でも一番強ければ王様になれちゃうんだ。そういう意味では、この国って平等?

 

「でも、今まで王子様を推しておられた貴族の方々とか、贅沢がお好きな方々からの、反発が激しかったそうです」

 

 そりゃぁそうだろ。

 

「父の領地の近隣でも、いくつかの小競り合いがありました。父は、元々剣を磨く事を第一とし贅沢を好みませんでしたから、フェルナンの少ない賛同者でした。

 ですから、父の近隣に出向く時は私の家を拠点として、フェルナンは走り回っていました」

「出会ったんですね?」

「はい。一番最初にいらした時、ベッドに寝たままの私に、ご迷惑をかけてすまないと頭を下げてくださいました」

「…えっと、王様って頭をさげていいもの?」

「だめですわ」

 

 だよねぇ……。きっと、ナディーヌさんに見蕩れちゃった後、王様だって事忘れて頭を下げちゃったんだ。絶対間違いないヨ。

 

「揉め事が収まった後、プロポーズに来たのかな?」

「はい。でも、父と私に反対されましたわ」

「えっと、王様のプロポーズだよねぇ?御父さん、反対したの?あれ?ナディーヌも?」

「はい。父は、私を側室に置くのならば構わないと。私もその意見に賛成でした。王は、子をもうけなくてはいけませんから」

 

 あ……、血筋を残さなくちゃいけないんだ。そんで、ナディーヌさんは、病弱だった。

 

「王様は、なんて?」

「側室は、金の無駄ですって。それから、即位直後に医者を殺すような法は無くしたから、城には優秀な医者が居る。だから大丈夫だと、胸をはって言われましたの」

 

 それは…また…なんつーか、商人の母親様はかなり凄腕だったんじゃないかというか、素晴らしい子育てを成し遂げたというか、王様、王様って職業合わなかったんじゃぁ…。

 

「ナディーヌは、王様のことどう思っていたの?」

「あの方は、家に来る度に必ず私に色々なお話を聞かせて下さいました。家をほとんど出た事のない私にとって珍しい話ばかりで、とても楽しく大切な時間でした。私は、あの方が来るのをいつも楽しみに待っていましたわ」

「お城に来てから、たとえベッドの上の時間が多かったとしても、いっぱいの男の人に会ったよね?王様以上の人は居なかった?」

「あの方以上に、真面目で誠実な方はどこにもおりません」

 

 あーご馳走様でした。心の中できっちり両手をあわせましたヨ。らぶらぶだぁ~。

 

「サミは、どなたですの?」

「は?」

「術士様?赤毛の方?金髪の方?」

「えっと、何が?」

「サミの恋人は、どなたなのかしら?素敵な方々ですから、迷っている最中かしら?」

 

 首をぶんぶん横に振った。ナディーヌさんからは、見えないけど。

 

「どうして?」

「恋……あれですよねぇ…ずっと一緒に居たいっ!ってやつ」

 

 くすくす笑われています。

 

「そんな感情知りませんです」

 

 確かに、好きな人とか初恋だとかそんな時代もあった事はある。でも、あれは、恋って言うんだろうか?確かにフィクションものの小説を教科書としてもしょうがないだろうけど、ずっと傍に居たいとか、一緒に居るだけで幸せとか、そんな感情をあたしは知らないぞ。

 

「これからなのですね」

 

 そうか、これからなのか?

 う~ん、苦手な話題だ。

 

「あ、もしかしてナディーヌは、この国の王様が強くなったっていうお話の原因を知ってる?」

 

 話題無理やり変更。いやいや、聞きたかったんだヨ。

 

「えぇ、少しだけですけどフェルナンから聞きましたわ」

「原因を作ったのって、精霊さん?偉大な魔法使いさん?どっち??」

 

 ナディーヌは、一生懸命爆笑をするのを堪えている風情。今まで黙って傍に居てくれていたギュスターヴさんは、率直に笑ってました。むぅ~。

 

「サミ、それをどなたから聞いたのかしら?」

「えっと…町の居酒屋…………?」

 

 ぐ、ぐるしいっ。も~、ギュスターヴさんが笑っちゃったら、ダメじゃん。おっさん達から聞いたなんて言えないし~。

 

「サミ殿、魔法使いに、そんな力はありませんよ」

 

 穏やかにフォローをしても遅いといい……っ?!!

 

「精霊さんいるのっ?!」

「はい、居ます。精霊の力無くては、魔法を発動させられませんから」

 

 精霊使役系魔法だったんだ。

 

「見える?」

「はい、力が強い魔法使いならば誰にでも見えます。弱い魔法使いだと、うっすらとした影が見える程度ですが…」

 

 はーーー見えないんだ。あたしには、見えないんだ。あのイラストやら、アニメやらに出てくる、女神様のようなお姿…くっ、見たかったよ~。

 

「あれ?魔法って、風、水、火、地系のものだけだよね?どうやって、ある一族特定で力を授けられたの??」

「サミ、当時の話を聞きましたか?」

 

 ナディーヌさんは、未だ少し笑いながら話してくれる。

 

「なんか、豪族同士の戦いが長く続いたとか?」

「そうです。地は荒れ、人の焼かれる匂いは消えず、酷い有様だったと聞いています。それに腹を立てた精霊達が暴れて、一層酷くなったとか」

 

 だめじゃん精霊。馬鹿な人間と同じ事してどうする。

 

「精霊達にも、それぞれ取りまとめをする長が居るそうなのです。その長達が集まり話し合いをした結果、この地を平定させる事を条件にフェルナンのご祖先に力を与えたと聞いています。

 ただ、この話も王家に伝わるお話しであって、それが本当かどうかは分からないのですけれど」

 

 この時代でも昔話なんだな。

 

「そのお話の中に、長精霊達が集まり呪文を唱えるシーンがあるのです。その結果、家系的に強い人間が生まれたと書いてありましたわ。

 ねぇ、ギュスターヴ、貴方なら何かが分かるのではないかしら?」

 

 ギュスターヴさんの方を見たら、ものすっごい考えている様子。

 

「それで、私が居るのにも関わらずお話しされたのですね?」

 

 あ、王家に伝わるお話……内緒の話だったのっ?!!

 

「えぇ」

「もしかしたら、精霊にも術が使えるのかもしれません。

 魔法というのは、先ほどサミ殿が言われたように精霊の資質を具現化したもの。精霊には、その属性以外の事は出来ません。

 そうですか……長……精霊は、我々よりもこの世界に近しい者……だからこそ、世界と話す方法を元から持っていた可能性が……」

 

 最後の方は独り言に近い。

 ギュスターヴさんは、真剣に考え始め…あれ?ため息つかれちゃったヨ。

 

「あぁ、今考えてもどうせ消えてしまうのでした」

 

 ギュスターヴさん苦笑。

 そうだねー魔法は、なくなるんだった。

 

「魔法が無くなったからといっても、精霊さんは相変わらず居るんでしょう?」

「さぁ、どうでしょう?

 それは、その時にならないと分からないですね」

「あそこで剣を振っている術士さんも、見えているんだよねぇ?後で聞いてみよう」

「そうですね」

 

 うん、ローランさんにとっては当たり前の事だから、精霊さんの事なんて今まで話題にしなかったのかもしれない。

 

「サミ?」

「はい」

「なぜ術士様に、お聞きになるのかしら?」

 

 あ………。

 目の前には態々体をまわして、あたしを真っ直ぐ見ているナディーヌさん。うっ……やばっ。

 

「異世界の方が今見えていたとしても、これから同じように見えるかは分からないはずでしょう?」

「あ…そうですねー。き、気がつかなかったです…」

 

 浅はかな意見を言ってしまいました風情を演出。

 

「なのに、なぜ、ギュスターヴまで気づかなかったのかしら?」

 

 ナディーヌさん、めちゃめちゃ鋭いっ!

 そこで、剣を振り回して遊んでる三人っ!たぁすけろぉぉぉぉぉっ!!!!!!

 

「どうした?お嬢ちゃん?」

 

 ………来たヨ………ファビさん。

 

「サ、ミさ、んっ……」

「サミ」

 

 あーファビさんが来たのに気づいて、ローランさんも、ディックさんも来てくれたんだ。

 

「あ……あ~~」

 

 おっさん達を見たら閃いた!

 

「ナディーヌ」

「はい」

「あたしとギュスターヴさんの会話は、聞かなかった事にして忘れて下さい」

 

 必殺、開き直り!

 

「……サミ」

 

 ナディーヌさんは、気落ちしたような声。うーーーごめんなさい、ごめんなさい。歴史改ざんだけはしたくないんですーー!!

 

「あーーーーっ!人材派遣屋殿ぉぉぉっ!!」

 

 息切れ状態の声で、最高の音量を出したという風情の王様。

 

「は?」

「ナディーヌをっ!!」

 

 あーーーあたし男じゃないけど、やっぱりナディーヌさんを抱っこってダメダメだったぁ~?!

 

「フェルナン、サミは私の為にこうして下さっているのですわ」

「ナディーヌ……」

「貴方の訓練は終わりましたの?」

「い…や、け、剣士殿が、こちらに来てしまって……」

「んじゃ、素振り500な。俺が戻るまでに、ちゃんとやっておけよ」

 

 ファビさんが、ニンマリ笑ってる横で王様涙目。容赦ないんだよ、おっさん達は。だって、訓練大好きっ子だもの。

 

「フェルナン、頑張ってね」

 

 ナディーヌさんだけで、一日中素振りが出来るかもしれない。だって、王様ったら、すっげぇ元気になったヨ。王様の動力って、ナディーヌさんなんだねぇ。愛はすっごいな。栄養ドリンクなんかいらないヨ。

 

「お嬢ちゃん、どうした?」

「あはは…へましましたー。んでも、おっさん達から教わった方法でなんとか……切り抜けたい…なぁ…」

 

 目の前で、ナディーヌさんがじぃ~っとあたしを見ている。

 

「サミ」

「はい…」

「貴方が、再びここへ来て下さるのなら忘れます」

 

 あーーーそれも無理だ。だって、これ以上間違いを犯す訳にはいかない。この世界でのあたしの居場所は、おっさん達の時間だ。

 

「ダメなのですか?」

「ごめん…ナディーヌ。あたしは、もうここへは来れない……」

「どうしてもですか?」

「ごめん……ごめんなさい………でも、でもね、あたし、絶対、絶対ナディーヌの事を忘れないヨ。絶対だヨ!」

 

 ディックさんが、頭を撫でてくれた。くぅっ…相変わらず唐突な優しさでガツンとくるよぉ~。

 

「サミ………我侭を言いましたわ。ごめんなさい。

 えぇ、私も、貴方の事は絶対忘れませんわ。毎日、ちゃんと話しかけます」

 

 あたしと交換したハンカチを、ぎゅっと握っている。

 

「ん~~、そりゃぁ不味いんじゃねぇの?」

 

 ファビさんが、ご陽気な声でしんみりとした空気を破壊した。

 

「なぜですか?」

「だって、王さんが拗ねるだろ?」

 

 あーーー異世界からでも、恨みの波動を飛ばしてきそうだ。

 

「大丈夫です。フェルナンも一緒に思ってくれますわ」

「や、あたし、王様から思われても……」

「サミ、毎日、お互いが思っていましたら、お会い出来なくても、いつまでも忘れませんわ。えぇ、絶対に」

「えっと…嬉しいですけど…ものっすっごく嬉しいですけど。

 ナディーヌ、なぜ?」

「サミが、術士様と剣士様達を連れてきてくださったのですわ。それに、サミは、私の初めてのお友達です」

 

 えっと、実際はギュスターヴさんが召還してくれたんだけど。またボロ出しそうだったから頷いた。それに、友達ってのは、王妃様の友達なんてすっごい贅沢だけど、うん、出会ってほんの少ししか時間が経っていないけど、ナディーヌさんは、外見だけじゃなくて、すっごく優しい人で、うんうん、あたし大好きだヨ。

 

「だぁかぁら、ほら、王さんが聞いてっぞ」

 

 あーーいつの間にか王様が傍に来ていて、恨めしそうにあたしを見ている。

 

「ったく、素振り終わってねぇだろ?」

「だが、ナディーヌがっ」

「しょうがねぇなぁ。あんた、王妃さんを守りたいんだろ?」

 

 王様は速攻背筋を伸ばし、しっかり頷く。

 

「もし、俺が王妃さんを襲ったとしても、あんたにゃ俺を撃退出来ねぇよな?」

「うっ……」

「最低限、俺と対等に戦えるぐらいにならねぇとなぁ。

 術士ぃ~、魔法をなくすのって、明日あたりかぁ?」

「あぁ、明日の昼頃にでもと思ってる」

「そうしたら帰るんだよなぁ?」

「そうだろうな」

「んじゃ、俺と槍んヤツは、明日までここに居るからよ。お前はもう抜けろ」

 

 ファビさんの言葉に、ローランさんの目が泳ぐ。あーーーったく、本当に訓練好きってのはっ!

 

「お前は、やることが沢山あんだろ?

 ギュスターヴこいつを捕まえとけ。絶対ここに来させるんじゃねぇぞ」

 

 ギュスターヴさんが、笑いながら頷く。

 

「ほら、ついでに王妃さんを連れていきな。今夜は、サミと一緒に一晩過しても大丈夫なぐらいの体調にさせておけよ」

「ありがとう!!」

 

 名前をいえないのは不便だなぁ。

 

「サミ」

「ん?」

 

 傍でずっと頭を撫でてくれていたディックさんが、ナディーヌさんを持ち上げる。正統派お姫様抱っこだ。

 横で、王様がわたわたしているのは、無視だねぇ。うんうん、王様ってディックさんにも負けたのか?

 

「ほら、術士」

「分かった…」

「お前、手抜きをするなよ」

「分かってる」

 

 ナディーヌさんを渡されたローランさんは、もんのすっごく不服そうだけど、しっかりナディーヌさんを抱っこして歩き出した。

 

「ほら」

 

 目の前にディックさんの手が現れた。

 

「お前、立てないだろ?」

 

 う…体が固まってる。

 

「うひゃぁっ?!」

 

 あ、あたしも抱っこですかっ?!お姫様じゃないのにお姫様抱っこ……あたしには似合わないよぉ。

 

「あーお前、ずっりぃ~~」

 

 ファビさん…何がずるいんだか。ローランさんと王様に、あれだけ言っておいて…。

 

「気づかないお前が、抜けてるんだ」

「ちぇぇ~~」

 

 王様と城勤めの兵士さん達は、一晩中ファビさんとディックさんにしごかれて、現在天国の門一歩手前。

 ローランさんは、ギュスターヴさんと一緒に魔法を無くす準備をしていた。

 あたしとナディーヌさんは、消化の良い食べ物と美味しいジュースを飲みながら一晩中話をしていた。

 朝、おっさん達三人とギュスターヴさんは変わらない様子で、王様とラキル卿はぼろぼろになって、あたしとナディーヌさんは寝不足で、そんな皆と一緒に朝食を食べた。

 あたし達が、ここに居るのは、あと少し。

 

妖精と精霊がちゃんぽんになっていた、過去の自分のお話。

だめじゃん!!

読み直して初めて気づく…だめじゃん自分!!

意識して修正しましたw


王様は、30歳ぐらい、ナディーヌは、20歳ぐらいです。歳の差カップルですねーw


そして、楽しそうな王様一家のお話は、寝物語の方で詳しく出ます。

お楽しみにm(__)m

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