02
(side:T)
「音楽室ねぇ」
駿の話に篤人が返事を返した。
屋上に遅れて来るなり駿は先程聞いたというピアノの話をし出した。はっきり言ってあまり興味は無い。返事も碌にせずに弁当を掻き込んでいる傍ら、篤人は興味津々といった感じで聞いている。
「それは、つまり誰かが音楽室に閉じ込められていたということか?」
大悟もそれなりに興味はあるようで、弁当を食べながら話に参加している。箸使いがすげぇ綺麗。大悟の所作はいつも綺麗だと思う。品があるって言うかさ。
「確かに、そうなるね」
「いやいやー、そこは幽霊だろ!だって閉じ込められてるのにピアノなんて普通弾く?」
「確かに矛盾が生じるな」
「そうだね。ああ、あのピアノ本当に良かったんだ。できればもう一度聞きたいんだよね」
「人成らざる者の神秘的な旋律、みたいな?」
「やけに霊の仕業なのをごり押しするな」
「篤人ホラー好きだね」
「やっぱ夏はホラーっしょ!」
篤人が少し興奮気味に言う。二人は苦笑して同意を返していた。
大体いつもこいつらといるとこんな風になる。俺はあまり会話に混ざることはない。俺はそんなに言いたいこともないし、話を聞いてるだけで退屈はしない。昔からの付き合いだし、これでそれなりに上手いこといっているのだ。篤人が、拓海もそう思うよな、と言って俺の方を向く。
「定番だと思う」
「だよなー」
篤人は人懐っこい笑みを浮かべた。
生温い風が吹き抜ける。空は雲が疎らに見える、とても青い空だった。と思うとふっと影が差す。篤人が立ったことで光が遮られて人形の影が出来たのだ。
「なあ、今から音楽室行かね?やっぱちょっと気になるじゃん?鍵借りてさぁ、入ってみんの」
「肝試しをしたいなら夜の方がいいと思うが」
「幽霊なのはもう確定なんだね」
「いいじゃんいいじゃん、細かいことは気にすんなよ。な、行こうぜ」
二人とも渋い顔をしているが、手は弁当を片付けている。行くつもりなんだろう。案の定、二人とも首肯した。
「まあ、気にはなってたしね」
「これも一興だろう」
返事はしなかったが俺も弁当を片付けて立ち上がった。