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XXX  作者: 望遠鏡
音楽室のピアノの霊
1/5

01

この作品は乙女ゲームのバッドエンドをテーマにしているので、後味がとても悪いものになると予想されます。

また、そのため登場人物も性格が宜しくない人物ばかり登場します。


(side:S)





それは美しい調べだった。

音楽室へと繋がる廊下で耳にしたのは、どこか甘さを含んだ切な気なメロディ。エリーゼのために。その曲に違いなかった。

思わず骨折していない右の指が曲の音符に沿って動く。もうピアノが恋しいのかもしれない。この時期の左手薬指の骨折は痛かった。我が成宮学園では毎年秋に音楽祭が開かれる。クラス単位の合唱で優勝杯を争うそれは、毎年大いに白熱する。それは成宮が音楽関係が強いことに加え、優勝商品が豪華なのも関係しているのだろう。かくいう僕もピアノではそこそこ名を馳せている。そのため毎年音楽祭では伴奏を担当していた。去年までは。

だが誤ってピアノの蓋を右の手を置いたまま閉め、怪我をしてしまった。我が家のグランドピアノの蓋は重く、指五本とも怪我をして薬指に至っては骨が折れていた。全治一ヶ月半。二ヶ月後に音楽祭を控えていた身としてはその痛手は大きかった。僕の所属している三年一組では急遽伴奏者を探すこととなった。


曲が転調する。物悲しい曲調から明るさを含んだものへと変化した。軽やかで、繊細ささえも感じさせるそれに聞き惚れる。

誰が弾いているのだろうか。

自然足が音楽室へと向かう。しかし僕が数歩歩いたところで音はピタリと止んでしまった。名残惜しいと感じながらも、せめて顔だけはと思い音楽室の扉に手をかける。だがドアノブは不快な金属音を鳴らしただけで回ることはなかった。鍵がかかっている。内側から閉めてしまったのだろうか。いや、音楽室の扉には内側に鍵穴などなかった。

仕方なしに僕は音楽室を後にする。

時計の針は十二時四十七分。このままでは昼食を取る時間が無くなってしまう。職員室に行って顧問に音楽部の休部届けを出したら直ぐに屋上に向かおう。雨でない日は友人と屋上で昼食を取っている。今日は雲一つ見えないくらいに晴れているから、きっと皆屋上にいることだろう。職員室と音楽室は目と鼻の先だ。職員室のドアを開けるとドアから比較的近い椅子に部活の顧問の奥山が座っている。奥山は僕に気付くとああ、と言って少し唇を持ち上げた。


「藤田くん、手ぇ怪我したんだってなぁ」

「はい。ですから休部届けを出しに来ました」

「そうか、完治までどれくらいなんだ」

「一ヶ月はかかるでしょうね」

「そりゃあ大変だなぁ。音楽祭も近いのに災難だ」


僕は緩く微笑むのに留めた。奥山は休部届けの紙を受け取り、机の上に適当に置いた。奥山の机は少し散らかっていた。僕は軽く頭を下げると職員室を後にする。出る直前、ドアの真横にある鍵掛けに音楽室の鍵がかかっているのが見えた。

廊下に出ると生徒達の雑多な話し声や足音などが聞こえる。僕は足早に屋上へと向かった。




〈主な登場人物〉

・久本千里


・藤田駿(しゅん)


・金子大悟


・高井篤人


・大和田拓海


・ 羽山梨香



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