特別編 「異空のサムライ」の航空機 ラジアネス編
ウレスティアン・タマゴ艦上戦闘機
「大空洋戦争」勃発時のラジアネス軍 飛行艦隊の主力艦上戦闘機。
開戦時にはすでに旧式化していたのにも拘らず、「大空洋戦争」の半ばまでラジアネス艦隊戦闘機隊の数的主力は本機であった……というのは、複葉構造故に低速時の安定性に優れた本機は、巡洋艦や輸送船を改造した簡易護衛空母上で運用するのに極めて適していたためである。任務も敵主力部隊との正面からの激突ではなく船団護衛任務及び、敵占領空域下における輸送船舶を標的とした交通破壊任務に限れば有用であった。
CAウイング艦上 攻撃/戦闘機(偵察機)
ウレスティアン・タマゴと並行して調達、配備が行われた艦上機。純然たる戦闘機として設計されたタマゴに対し、本機は一機で制空、迎撃、偵察、攻撃、観測を遂行し得る万能機として設計された。以上の任務を行うために複座方式が採用され、搭載量もタマゴに比して格段に増やされている。「大空洋戦争」勃発時点の飛行艦隊において、タマゴよりも本機を配備運用する飛行隊が多かったことからも、作戦機の主力として本機の方が有力視されていたのは明白であった。その艦隊首脳部の目論見は、大空洋戦争の前哨戦ともいえる「アレディカ戦役」で発生した「大虐殺」により、脆くも潰え去ることとなった。
後継たるBDウイング艦上攻撃機が配備されるようになっても、なおかなりの数の本機が護衛空母上で運用され、船団護衛および哨戒任務に従事している。地上の基地においても複座方式を生かして練習機、訓練支援機として使われるなど、息の長い機体であった。
ジーファイターα 艦上戦闘機
タマゴの後継として開発された新型艦上戦闘機。
「大空洋戦争」の前年に量産初号機がロールアウトしたが本機の調達は遅々として進まず、完成した本機も多くが数少ない艦隊型空母に集中配備された状態でラジアネス艦隊は運命の「アレディカ戦役」を迎えるに至っている。戦役の結果、この時点で就役していた百機全てが勇戦虚しく壊滅し、多くの熟練搭乗員もまた喪われた。
本機の配備数が限られた要因として、ときの政府の軍事予算抑制方針、当時の飛行艦隊首脳部の大艦巨砲主義的な思考もあるが、それ以上にラジアネス艦隊初の全金属製単葉機たる本機は、従来の複葉機に比してその離着艦速度の速さゆえ、平坦な全通型飛行甲板を有する艦隊型空母上以外での運用が限られたためである。本機を運用すべき艦隊型空母も数が少なく、その全てが「アレディカ戦役」で轟沈、あるいは大破の憂き目を見ることとなった。それでも陸上基地からの運用に支障はなく、生産性に優れ、速度と運動性においてレムリア戦闘機と辛うじて拮抗しうる本機は当時のラジアネス軍にとって貴重な存在であり、本機は苦闘を続けながらも長期にわたり主力機であり続けることとなる。
ジーファイターβ 艦上戦闘機
ジーファイターα型は、その設計作業終盤の段階で改良型の開発が計画されていた。エンジンを当時開発を開始したばかりの高出力型に換装し、機体にもより空力的洗練を図ることが、改良案の具体的な中身であった。ただし生産機の改良型への移行は計画開始時点では数年先のことと予想されていた。
しかし、ジーファイターα型の配備機の大半が「アレディカ戦役」で失われたことにより事態は一変する。軍は戦力の回復と強化の意図を以てジーファイター生産機の改良型への移行をメーカーに指示し、生産サイドも計画に基づく迅速な設計変更でこれに応じた。後にジーファイターシリーズ最多生産機数を誇ることになるβ型の誕生である。
α型からβ型への変更点は数多い。
高出力エンジンを搭載するために機首が延長され、同時に機首周りの空力的洗練が図られた。操縦席風防もまた全面的にバブルキャノピーが取り入れられ、全周視界の向上に寄与している。尾部においても低速時の横安定向上を図って垂直尾翼面積が増やされ、それは空母着艦時の良好な操縦性に繋がった。
エンジン強化と機体構造の改善により特に水平時の加速及び上昇力が飛躍的に向上している。操縦系の変更は旋回半径をやや悪化させた一方で旋回速度を向上させ、レムリアの第一線機には及ばぬまでも総合的には高い格闘戦性能を本機に与えた。レムリア軍戦闘機操縦士の残した手記の中には、本機の名を挙げて「しぶとい相手」と評する記述が少なからず存在する。




