ゾンビの家
◆◆◆◆◆ゾンビは悪ではない◆◆◆
さて突然だが何を持ってゾンビをゾンビと呼ぶのだろう
人肉を貪るからゾンビなのか?
力が強いからゾンビなのか?
死体が動くからゾンビなのか?
朝日に弱いからゾンビなのか?
アンデットだからゾンビなのか?
体が腐っているからゾンビなのか?
何をゾンビと定義するのか、曖昧だ。
だが一般論で行くとゾンビは悪だと考えられている。
ゾンビ=悪
それは違う、ゾンビは悪ではない。
現に私が悪ではない事から容易に分かる。
では何故ゾンビが悪とみなされるのか?
それはゾンビが悪だからだ。
矛盾したな、しかしこれが本質だ。
人間だって悪と善がいる、ただそれだけの事だ。
◆◆◆◆◆◆◆他人の不幸は蜜の味◆◆
しかしそうなると、ゾンビとは何なのかと疑問に浮かぶ。
ゾンビとは何なのか?何を持ってゾンビをゾンビと呼ぶのだろうか。
ゾンビを定義つける“悪”が悪ではなくなった時点でゾンビの存在が曖昧になった。
ゾンビの代表的な定義である“ゾンビ=悪”が通じないのだ、曖昧になるのは仕方が無い。
ちなみに“ゾンビ=人肉を貪る”も違う。
これは単なる好みだ、人肉が好きなゾンビがいるというだけ。現に私は人肉はキライだ、焼いた肉でないと食わん。
ちなみに“ゾンビ=力強い”も違う。
力が強い弱いなどゾンビそれぞれだ、個人差がある。現に私の力は弱い、頭は強いがな。
ちなみに“ゾンビ=死体”も違う。
ゾンビは死体ではない、死体みたいな奴がいるだけだ。現に私は生きている。
ちなみに“ゾンビ=朝日に弱い”も違う。
それは単に夜型なだけだ、現に私は朝と夜を兼用している。
ちなみにゾンビ=アンデットも違う。
ゾンビは死体ではないからな。
ちなみにゾンビ=体が腐っているも違う。
腐っている奴もいるが、大抵は腐ってなどいない。現に私は綺麗好きだから常に体は清潔だ。
分かっただろうか?ゾンビの根本が違う、一般論の根本からずれた認識をされている。
何故?
それはゾンビのマイナスたる象徴が異様に過剰に取り上げられたからだ。
人は他人の悪い点ばかりを見る、まさに他人の不幸は蜜の味。
◆◆◆◆◆◆完璧な人間◆◆
ではゾンビのプラス面は?
そうだな…ゾンビがゾンビたる本質を知れば自ずと見えてくる。
私達が仲間をゾンビと定義する本質……
「ユウナー、飯できたぞー」
おっと、お呼びがかかったようだ、毎日朝食を作ってくれるタケゾーに感謝だな。
ちなみに私はゾンビだ、それもマイナスのカケラもないゾンビ。
完璧なゾンビだ。
いや、待てよ…マイナス面がないと一般論ではゾンビとは言えないのか……
なら私は完璧な人間だ。
◆◆◆◆◆◆◆ヤり手◆◆◆◆
近頃寒くなってきた秋、コタツ無しでは生きていけないほど寒い秋。
私は既にあったまっているコタツに入り込み、机に並べられている朝食達とご対面。
味噌汁、白米、目玉焼き、そしてモズク。
何故だか知らんがタケゾーの作る飯にはモズクがついてくる。別に文句はない、モズクは白米に合うし、何より箸が進む。いいご飯の友だ。
「ユウナ、今日は珍しく起きるの遅かったなー、寝坊か」
コタツに入り込むと同時に話しかけてくるこいつはタケゾー、好青年と言う名の悪魔だ。
いや別に悪魔では無いのだが、好青年は悪魔だと私の中で位置付けている。表が良いやつは裏は逆だからな。
「いや、さっきゾンビとは何かを一人で語ってた所だ」
「ゾンビな〜、俺たちの言うゾンビと一般的なゾンビってのじゃちょっと感覚が違うからな」
私のぼっち発言を軽く流し、話を合わせてくる辺りから、こいつはヤり手だと分かる。
「やっぱ“生肉”うめー!」
そして、それすらなかったことに食事を始める辺りから、かなりのヤり手だと分かる。
「ZIPやってるだろZIP〜」
ピッ
「……まぁいい、私も食べるとしよう」
そんなマイペース好青年タケゾーの様子を見て、何と無く私は箸を手にとった。
◆◆◆◆◆◆フラグ◆◆◆◆
「アーシュラ男爵こーらーしめろー、ふっふーふふふーZIPでぽんっ!…あーまたハズレかよー」
今現在、七時前。
居間には静かにモズクを食べる私と、一人はしゃいでいるタケゾーの二人。
私はタケゾーだけでお腹いっぱいなのだが、実はあと一人この家には同居者がいる、まだ来てないがな。
「もうそろそろマジンガーZIP始まるから来るかな」
朝食を取り終えたタケゾーは、台所に食器を置きに行きながら、そんなフラグとも言えるセリフ…いやフラグだな。
◆◆◆◆◆◆◆ソーナンス◆◆◆◆
トテトテという音が似合う小走りでやって来る人影。そして無言でコタツにスッと入り込むと、それとほぼ同時にマジンガーZIPのテーマが流れる。
〜三分経過〜
「いやー、今日も笑かしてもらいました〜イエス!モズク!って またモズク⁉もう飽きたッスよ!」
とか言いながらも朝食にかぶりつくヨーコ。相変わらず朝からハイテンションだ。
「飯食い終わったら台所に置いとけよー」
「分かってるますッスー、オッケー牧場ー、うわっ!マジまいうー」
ヨーコはガツガツ慌ただしく、朝食は次々と口の中に消えていく。先に食べていた私すら追い越しそうなスピードだ。
「ごちそうさまっした!サマンサ!」
追い越された。
女子とは思えない大胆な食いっぷりで完食したヨーコ、毎日見ているとはいえ呆れがある。
「全く、もっと静かに食べることはできないのか?」
「いやー、無理ッス てへ☆」
無理だそうだ。ヨーコに対して 静か って言葉は最も意味のない言葉、この返しも大方予想がついた、呆れるほどにな。
「それにしてもユーナちゃん食べるの遅いッスねーナメクジの親戚ッスかー?いや…恋人かな?…んー?んー?」
腕を組んで頭を右へ左へ傾ける、妙な所で悩むな。
そんなことを思いながらも、親切心の塊である私は懇切丁寧に返してやる。
「私は親戚でも恋人でもない、第一恋人だとしても遅いとは限らないだろ」
「お〜それもそうッスね!でも似た者夫婦とかってあるッスよ?」
妙な所で疑問を持つな。そんなことを思いながらも、親切心の凝灰岩である私は懇切丁寧に返す。
「私は似た物夫婦ではない、第一ナメクジと夫婦になった覚えはない」
「それもそうッスね!なら親戚ってことッスか?」
「私の血族は一寸もたがわずに人だ」
「なら何で食べるの遅いんダロワイヨ?」
「私はただ静かに食べているだけだ」
「静か=遅いってことでしょー?ならナメクジちゃんッス」
「…ヨーコの言ってることが奇想天外過ぎて私の理解を超える」
「えー そうなんスか?ソーナンス?」
純粋無垢な瞳、単純な好奇心、そして奇想天外な質問。それらにたまに恐ろしさを感じる——
「ソーナンスって何でソーナンスって名前なんだッス?」
——いや今現在感じている。