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Powergame in The Hell   作者: 粟吹一夢
第六章
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復讐(4)

 以前に俺達を襲ってきた奴らと同じように、黒いサングラスを掛け、黒いスーツに身を包んだ男達だった。しかし前回の男達よりもかなり危険な香りがする。こいつらはかなりやばいぞ。

 霊奈もすぐに我に返り、立ち上がると右手から剣を出した。

 一方、総理は一気に形勢逆転とばかりに喜んで立ち上がって、俺達を指差しながら黒服達に指示をした。

「こいつらは官邸に不法侵入して来て、事もあろうに総理大臣を強請に来た不届き者だ。かまわん、処刑しろ!」

 しかし黒服達は総理の指示にまったく反応しなかった。それどころか黒服の一人が総理に向かってナイフを投げると、総理の来ていたバスローブの腰紐が切れてバスローブが床に落ち、総理はパンツ一丁の惨めな姿となった。

「な、何をする? 血迷ったか? 私は総理大臣の鬼崎だぞ!」

 霊奈は男達から注意を反らすことなく総理に冷酷な通告をした。

「こいつらはあんたが呼んだんじゃないでしょう? 万全の警備体制が敷かれている総理官邸にこっそりと入って来られるんだから、こいつらも私達みたいに誰かから鍵を預かっているんでしょうね。つまり、あんたじゃなくて別の誰かからの指示を受けていて、それは私達を始末するついでにあんたも道連れにしようとしているんじゃないの」

「えっ?」

「私達がここで言ったことを、派閥や『獄門の番人』のメンバーに話していないという保証ができる? それならそんなスキャンダルの元凶であるあんたの口を封じようとしても不思議じゃないわね」

「そ、そんな馬鹿な……。おい、お前達。私を助けに来てくれたんだよな?」

 総理は哀願するような目で黒服達に語り掛けたが、黒服の一人は無言で総理に向かってまたナイフを投げた。しかし、そのナイフは素早く総理の前に移動した霊奈が剣で弾き落として総理には届かなかった。

「これで分かったでしょう。あんたは所詮、捨て駒でしかなかったのよ。利用価値が無くなれば、あっさりと捨てられる運命だったのよ」

「そ、そんな……」

 総理の表情に再び恐怖の二文字が浮かんで来た。

「頼む。助けてくれ!」

「誰に言っているの?」

「お前達だ。この刺客達には言い訳は通じない」

「お前達?」

「失礼しました。あなた様方にお願いします」

 泣きわめきながら土下座をして俺と霊奈に助命を頼む男が一国の総理だとはねえ。ヘタレの俺から見ても情けねえ。

「私はあんたを許すつもりはないわよ。でも、あんたが自首をするっていうのなら命は助けてあげる。こいつらも刑務所までは追って来ないかもね」

「分かった。自首する。約束する。だから命だけは助けてくれ~」

 霊奈は一瞬俺の顔を見てから、三人の黒服達の方に向き直った。

「真生、行くわよ」

「ああ、分かった」

 俺も右手から大鎌を出して戦闘態勢に入った。

 油断は禁物だ。こいつらは「新月の蠍」の闇の騎士の中でも選りすぐりの奴らのようだ。ちょっとでも隙を見せるとこっちの命は無い。

 黒服達は短い槍のような武器を出して俺達に迫って来た。

 次の瞬間、霊奈に二名、俺に一名の黒服達が打ち込んで来た。二・三合打ち合うが、かなり強い。しかも女性の霊奈に対してそんな強い奴が二人がかりだなんて、霊奈を先に倒してしまおうという魂胆が見え見えだ。

 しかし、そこは霊奈だ。二人を相手に傷一つ負っていない。もっとも二方向から打ち込まれる槍を防ぐことに精一杯で、攻撃を仕掛けることはできない状態だった。

 ――霊奈を虐める奴は許さない!

 俺の心の中で声が響いた。…………そうだ。俺は霊奈を守らなければいけないんだ。

「霊奈!」

 俺に斬り掛かって来ていた黒服の槍をかいくぐって、俺は霊奈に襲い掛かっていた二人の黒服に斬りつけた。黒服達は一旦下がって三人が固まった。俺も霊奈の側に行った。

「霊奈! バラバラで相手しない方が良い」

「分かった」

 しかし、このまま力尽くで打ち合っても勝ち目は少ない。この不利をどうやって埋めるか?

 ――霊奈を虐める奴は許さない!

 俺なら三人の黒服を相手に少なくとも防戦はできるはずだ。それだけの自信はあった。

 そうだ。俺が盾になって霊奈を守りつつ、攻撃は霊奈の剣に期待しよう。

「霊奈。お前は俺が守る! 俺がこいつらをくい止めておくから、お前は後ろから隙を見て斬りつけろ!」

「真生!」

「一撃で倒せ!」

 俺は三人の黒服達に突進をして無我夢中で大鎌を振り回した。さすがに三人の強敵を相手にするのはきつい。しかも後ろに回られないようにしながらだ。腕や足にいくつか切り傷を付けられた。霊奈は俺の背中にいて敵の隙をうかがっている。

 ――大丈夫だ、霊奈ならやってくれる。

 俺が振り回した大鎌が黒服の一人の顔面近くを通り過ぎ、それを避けた勢いでその男の体勢が崩れた。霊奈がその隙を見逃すことはなかった。俺の背中を蹴って、俺の身体ごとその黒服を飛び越えて背後に立った霊奈は、その黒服が振り向く前に上段から一気に切り倒した。

 さすがだぜ、霊奈!

 これで二対二。すぐに俺の側に戻って来た霊奈は心配そうに俺に声を掛けてきた。

「真生。大丈夫?」

「ああ、何とかな」

 これからはタイマン勝負だ。残った二人の黒服に俺と霊奈は差しで勝負を挑んだ。

 しかし、これが本当に俺なのか? 俺は龍真さんの肉体が有していた潜在的な力に感心するしかなかった。自分が考えるより速く身体が反射的に動いていた。俺は下手に考えないようにした。身体に任せて動くことが龍真さんが有していた能力を全開で発揮できると思ったからだ。

 俺は黒服が持っていた槍の剣先が一瞬下がったことを見逃さなかった。素早く上段から切り下げた。黒服の身体は真っ二つに切断されて倒れた。

 霊奈はまだ残り一人の黒服と打ち合っていた。お互いに息が切れていたが、こうなるとやっぱりスタミナに差がある女性の霊奈が不利になってくる。俺は大鎌を構えて助勢に加わろうとした。

「真生! 手出しをしないで!」

 霊奈は黒服から目をそらすことなく叫んだ。

「本当はお兄様の仇の総理を切ってしまいたいところだけど、命は助けると約束したから……。その代わり、こいつを切ってお兄様の仇を討ったつもりにしたいの。だからこいつは……私が倒す!」

 俺は黙って一歩後ろに下がって、いつでも霊奈を助けることができる位置をキープしながら霊奈の戦いを見守ることにした。

 霊奈はもうほとんど体力が残っていないはずなのに凄まじい勢いで黒服に剣を打ち込んでいった。その気迫に押されたのか、黒服は防戦一方になりながら徐々に後退していった。そして、壁際に追い込んだ黒服の槍を弾き落とした霊奈は、黒服の喉元に剣を突き付けた。

「あんたには恨みは無いけれど、こうしないと私の怒りを持っていく先が無いの! 生まれ変わる時には、……こんな職業を選ぶんじゃないわよ!」

 霊奈が袈裟懸けに黒服を切り捨てると、断末魔を残して黒服は倒れた。

 戦いは終わった。結界が消滅し始めると、倒れていた黒服達も消えていってしまった。

 霊奈は剣を持ったまま、俺に背中を向け立ち尽くしていた。後ろから俺が近づくと、霊奈の肩が震えていた。

「霊奈……」

 俺が声を掛けると、霊奈は剣を落として振り返り俺の胸に飛び込んで来た。

 霊奈は泣いていた。何も言わずに俺の胸で泣きじゃくった。

 ふと部屋の片隅で震えていたはずの総理に目をやると、クッションを頭に抱えたまま失神してしまっているようで、失禁をしてしまったのかパンツが濡れていた。

 こんな奴に大好きな龍真さんを殺されたんだ。霊奈のやり場の無い悔しさは痛いほど分かった。俺は霊奈の肩を優しく抱いて、霊奈の気が済むまで泣かせてあげることしかできなかった。

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