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Powergame in The Hell   作者: 粟吹一夢
第六章
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復讐(3)

「いきなり何を言うのだ? 龍真君は交通事故で死んだのではないかな」

「だから、あなたの息子さんがすべて話してくれたんですよ。今、私達はそれが本当なのかどうかをご本人に確認しに来たんです」

 霊奈は怒りを押し殺した声で話を続けた。

「三年前、鬼崎家で代々保管してきたエンマの分割データバックアップの一つが消失していることが分かった。我蘭が興味本位で持ち出して中のデータを確認しようとして誤って消失させてしまったようですね。そんなことがあったなんて初耳でした」

「…………」

「我蘭は家族に相談すると厳しく叱責されると思ったらしくて、同級生で友人だった龍真お兄様にどうすればいいのか相談をした。でも、お兄様は、霊魂管理庁に正直に申し出て、正式な手続きを踏んでエンマ本体から再度バックアップを取ることを勧めた」

「…………」

「我蘭は仕方なくあんたにすべてを白状して、お兄様が提案した方法を採ることをあんたに話した。でもあんたはそれを拒否した。エンマのバックアップデータを消失させるなんて、これまで聞いたこともない不祥事だわ。これを公にすることは、あんたの派閥はもとより神聖自由党にとっても大打撃になる。そこで当時、神聖自由党の幹事長だったあんたは職権を濫用して正式な手続きを踏まずに密かにエンマ本体からバックアップを取ることにした。そのことがエンマにどのような影響を与えるのかも検証することなくね」

「…………」

「あんたの計画は秘密裏に行われ成功した。そうすると自らの一族以外にこのことを知っているお兄様の存在が邪魔になってきた。お兄様が一言しゃべるとあんたは破滅だからね。あんたはお兄様を亡き者にしようとしたのよ」

「…………」

「その日、お兄様は、お父様や秘書の人たちがみんな出掛けた後の党本部の副幹事長室にいた。たぶん我蘭かあんたが話があるとか言って、お兄様を一人で待たせていたんでしょう。そしてあんたが指示をした『新月の蠍』の闇の騎士達が結界を張ってお兄様を殺そうとした」

「…………」

「お兄様が息絶えていたら結界の消滅とともにお兄様の遺体も消失するはず。あんたはお兄様が行方不明ということにならないようにお兄様の車を海に沈めて交通事故死を偽装したのよ」

「…………」

「でも、あんたはお兄様の実力を見誤っていたようね。お兄様は『獄門の番人』で一・二と言われた闇の騎士だったのよ。刺されたとしても咄嗟に急所を避けるようにすることもできたのよ」

「…………」

「お兄様は生きていた。結界が消滅してもお兄様は消失しなかったの」

「そ、そんな……」

「でも、お兄様は植物人間状態になってしまった。お父様はお兄様の肉体から出てきたお兄様の霊魂から直接話を聞いているの。……すべてね」

「御上副幹事長が……。しかし副幹事長は今まで何も言わなかったぞ」

「お父様も党のことを第一に考えて、すぐにあんたを追及することはしなかった。何よりもお兄様の霊魂が話したことだけで、あんたを追及する証拠がなかった」

「……そ、そうだ。何も証拠はない。殺された人の霊魂からソウルハンターが事情を訊いた内容が刑事裁判の証拠となるには、正式な手続きを踏んだ上、警察官か検事の立ち会いの元で事情聴取が行われる必要がある。副幹事長が自分の息子の霊魂から訊いたというのでは証拠にならないだけではなく中立性に乏しい。私を陥れる妄言だともいえる」

「そうよ。だからお父様はここにいる真生をあんたに会わせた。真生がお兄様の生まれ変わりだと言って、あんたに鎌を掛けたのよ。あんたが自分から尻尾を出すようにね。狙いどおり、あんたが命じた『新月の蠍』の闇の騎士が私達を襲ってきた。プライベートアーミーに指示ができるだけの地位にある党の人間で、真生がお兄様の生まれ変わりだということを知っていたのはあんただけだからね!」

「知らん! 言い掛かりを付けるのも好い加減にしたまえ!」

「どうしてもしらを切るつもり」

「そうだ。お前達が言っているのは状況証拠だけだ。私が龍真君を襲わせたという確かな証拠は無いではないか」

 確かにそうだ。状況から言えば、このおっさんが真っ黒なんだが、プライベートアーミーに命令を下した証拠なんて何も無い。我蘭が吐いたことも、あれは霊奈が剣で脅かしたからだと言われれば覆ってしまう。

 霊奈も下唇を噛みながら総理を睨んでいたが為す術は無いようだ。……甘かったかもしれない。自分の息子が吐いたことを突き付ければあっさりと認めると思ったんだが、さすが総理にまで昇り詰めている男だ。一筋縄ではいかない。

 出直してくるか? ……いや、もうこうなった以上、出直しはできない。こっちから総理に喧嘩を売っておいて、すごすごと引き下がることは龍岳さんの進退にも関わることだ。

 どうする?

 ――――んっ?

 まただ。俺の体の中から何かが湧き上がってくるのを感じる。

 俺は思わずソファから立ち上がり、俯いて自分の体を確認すると、俺の体が青白く光っているのが分かった。

「真生! どうしたの?」

 隣に座っていた霊奈も立ち上がり、心配そうに俺の側に寄って来た。俺は意識はしっかりと持っていたが、何故か口を利く事ができなかった。

 俺の体から発せられていた青い光はどんどんとその輝きを増して眩しいほどになると、俺の前で光の固まりを作り始めた。そしてそれはゆっくりと人の形に変わっていった。

 その光の中から浮かび上がってきたのは、俺も写真で見たことがある男性の姿だった。

「……お兄様!」

 霊奈はもちろん、総理もその姿を見て腰を抜かすほど驚いていた。

「お、お前は……、そ、そんな馬鹿な……」

 光の龍真さんはするどい視線を総理に向けながら右手を差し出し、総理を指差した。その目は明らかに怒り、非難し、軽蔑していた。

 ソファから滑り落ちた総理は腰を抜かしたように床に座り込んでしまった。

「わ、私が悪かった。……頼む。許してくれ。仕方がなかったことなんだ~」

 総理はまるで幽霊を見ているかのように恐れおののきながら、光の龍真さんに何度も土下座をした。

 これは……もしかして俺の霊魂に吸収されたという龍真さんの霊魂なのか? 自分を殺した張本人を前にして、その怨念が一時的に龍真さんの霊魂を解放したとでもいうのか?

 もしこれが龍真さんの霊魂だとしたら、ソウルハンターでもない総理にも見えているのだから強烈な霊エネルギーが発せられていることになる。

「お兄様、お兄様の霊魂なのですね。霊奈です。私とお話をしてください!」

 霊奈は光の龍真さんに近づき抱きしめようとしたが、すり抜けてしまってそれはできなかった。龍真さんは一転、優しい笑顔になって霊奈を見つめた。

「お兄様……」

 霊奈の目からは大粒の涙が止めどなく流れ落ちていた。

 龍真さんは右手を挙げて霊奈の頭を撫でるようにすると、次第に光が暗くなってきた。

「お兄様。行かないでください! 戻って来てください、お兄様!」

 霊奈の必死の願いも虚しく、俺の体から出ていた青白い光が消えると同時に龍真さんの姿も消えてしまった。

「お兄様……」

 霊奈は床に崩れ落ちて項垂れながら泣いていた。

 俺は霊奈に掛けるべき言葉が思いつかず、霊奈の側に跪いて霊奈の肩に手を添えてやることしかできなかった。

 総理を見てみると、恐ろしくて顔を上げることもできないようで、土下座をしたまま打ち震えていた。

 ――その時!

 突然、部屋に結界が張られ、三つの黒い影が浮かび上がってきた。

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