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Powergame in The Hell   作者: 粟吹一夢
第三章
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三姉妹(6)

 龍岳さんはお銚子に入ったお酒を手酌で飲みながら、別メニューの晩酌セットを味わっていた。

「ところで真生君は、あちらの世界では学校に通っていたのかな?」

「はい。高校二年生でした」

「私はあんたの死亡予定レポートを読んで知っていたけど、あんた全然高校生らしく見えないわよ。何か弾けるものが無いのよね」

 ――ほっとけや! 悪かったね。運動不足でちょっと腹も出ているよ。

「それでは霊奈と同学年ですね」

 幽奈さんが優雅な笑みを浮かべながら俺と霊奈を見比べた。

「霊奈が高校生? お前、ソウルハンターをしているんじゃないのか?」

「だから私は嘱託でやっているって言ったでしょ。ソウルハンターは人数が少ないから学生でもできるのよ」

 ――霊奈が俺と同い年だって……。俺は地界で自分が通っていた高校の同級生の女子を思い出してみた。…………霊奈の奴、……発育が良すぎだろう。

「ちょっと! 今、何を考えていたのよ? 何だか目付きに嫌らしさが充満していたんだけど」

 霊奈は読心術でも心得ているのか? それとも俺の目線があからさまに胸に向かっていることを見抜かれたのか?

 胸を抱き抱えている霊奈の邪険な目線が俺を突き刺していた。

 ――いかん。このままでは「変態はこの家から出て行け」と龍岳さんに引導を渡されるおそれがある。とりあえず反論をしておかなければ!

「馬鹿言うなよ! こんな純情少年を捕まえて変態みたいに言うな!」

「何言っているのよ! あんたは初めから全然純情そうに見えなかったんだけど!」

「それはお前に男を見る目が無いからだろ!」

「あんたが純情少年だったら世の中のすべての男が純情少年になってしまうじゃないの!」

「どういうことだよ? それじゃ俺は女たらしに見えるのか?」

「それもあり得ないわね。あんたに憧れる女の子がいたら視力検査を勧めるわね」

「何だと!」

 隣の席に座っていた俺と霊奈は箸と茶碗を持ちながら睨み合った。――俺には目から火花が出ているのが見えたぞ。

「あらあら、今日初めて会ったのに、もうそんなに仲良しになっているんですね」

 ――えっ! 

 気がつくと霊奈と至近距離で見つめ合っていた。霊奈もそれに気がついたようで、顔を赤くしながら自分の席に真っ直ぐ座り直した。

「幽奈! 私達のどこが仲良しなのよ?」

「そうですよ、幽奈さん。こいつがいちいち突っかかってくるんですから」

「おいおい。夜に大きな声は近所迷惑だ」

 龍岳さんに叱られて俺と霊奈は揃ってしょんぼりしてしまった。でも龍岳さんはすぐに笑顔になって俺の方を見た。怒った顔が怖いだけに笑顔を見るとほっとするような気がする。時には厳しく政敵を追及し、時には有権者に笑顔を振りまく……政治家としてこのギャップは効果が大きいんだろうな。

「ところで真生君。これから君は獄界の人間として生活をしなければならない。明日から霊奈と一緒に学校に行くようにしなさい。手続きの方が儂が一切やっておく」

「はい。分かりました」

「ああ、そうだ。幽奈」

「はい」

「龍真の制服はまだ残っていたんじゃないか? 真生君は龍真と同じ体格だから合うんじゃないかな?」

「お父様の部屋のタンスの中に仕舞っていますから出してアイロンをかけておきましょう」

「お兄様の制服をこいつに……」

 また霊奈が俺を睨んだがそれ以上愚痴を言うことはなかった。

 ――霊奈がこんなに大好きだった龍真さんってどんな人だったんだろう?

「龍真さんは俺に似ていたのかな?」

「お兄様とあんたとは全然違うわよ。お兄様は強さと優しさを兼ね備えた素晴らしい人だったから」

「何それ? 俺にだって優しさはあるぞ。強さっていうと自信が無いけど……」

「お兄様の優しさは海のように広く、強さは『獄門の番人』一番だったの。あんたとは太陽と豆電球くらいの違いがあるのよ!」

 ――散々な言われようだ。霊奈の奴、どこまで兄貴のことが好きだったんだ。……でも、その大好きだった兄貴の代わりが俺じゃあ、……霊奈の怒る気持ちも分からんでもない。

「ねえねえ。もう真生さんは私達の家族でしょ。龍真お兄様の代わりなんだから」

 妖奈ちゃんに龍岳さんも嬉しそうに頷いた。

「それじゃ、私は『真生お兄様』って呼んで良い?」

「いや、あの、『お兄様』っていうのは俺のキャラ的に向いていないと思うんだよな」

「確かにそうよね」

 ――霊奈! 一応、俺なりに遠慮して言っているんだから真正面から同意しないでくれる。

「向こうの世界では、妹から『お兄ちゃん』って呼ばれていたから、よければその呼び方で呼んでもらえないかな」

「分かった。それじゃあ『真生兄ちゃん』って呼ぶね。えへへ」

 俺の正面に座っていた妖奈ちゃんは本当に嬉しそうだった。妖奈ちゃんは喜怒哀楽がストレートに顔や態度に出るタイプみたいだ。でもその成分の九十五パーセント以上が『喜』と『楽』の成分のようで、その楽しそうな笑顔を見ているとこっちまで楽しくなってきてしまう。そう言う意味では天性のアイドルなのかもしれないな。

 それにしても…………この三人、本当に姉妹なんだろうか? 顔は似ているといえば似ているような気がするが、髪や瞳の色だけではなく性格も違いすぎる気がする。

「あの、幽奈さんや妖奈ちゃんは本当に霊奈の姉妹なんですか?」

「どういう意味よ?」

 ――何で霊奈が怒るんだよ?

「いや、髪の毛の色とか目の色とか全然違うなって思ってさ」

「間違いなく姉妹ですよ」

 幽奈さんがそう言うと理屈抜きで信じたくなるね。

「そうなんですね。獄界では兄弟でも髪や目の色が違うことって珍しくないんですか?」

「ええ、そうよ。私達は特に意識もせず不思議とも思っていないけどね。地界みたいに国が別れていないからじゃない」

 獄界では二千年以上前から地球が一つの国家だったんだよな。そうすると元々各地に別れて住んでいた人種の交流が活発になるから、その遺伝子情報がクロスオーバーで蓄積されてきているんだろうな。つまり幽奈さんは東洋系の先祖の、霊奈は西洋系の先祖の遺伝子情報を受け継いでいるんだろう。でも、そうすると……妖奈ちゃんの先祖はいったい何系なんだ? アニメ系?

「ところで、真生」

 また霊奈が俺を睨んでいた。

「さっきから気になっているんだけど、幽奈は『さん』付けで、妖奈は『ちゃん』付け。何で私だけ呼び捨てなのよ」

「だって、霊奈だって俺のことを呼び捨てで呼んでいるじゃんか。それに同い年なんだし良いじゃん」

「良いじゃんじゃないわよ」

「じゃあ、何て呼んでもらいたいんだよ?」

「そうねえ、……霊奈様が良いわね」

 霊奈様~! 似合わね~。幽奈さんなら様付けでも相応ふさわしいが、霊奈には姫様属性は無いだろう。

「何、笑っているのよ!」

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