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Powergame in The Hell   作者: 粟吹一夢
第三章
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三姉妹(5)

 ――幽奈さんとか妖奈ちゃんはどうなんだろうか? 幽奈さんが武器を振り回す姿は想像できないんだが……。

 そう思いながら幽奈さんの方を見ると、幽奈さんは心配そうな顔をして俺を見ていた。

 幽奈さんのような、おしとやか系の女性にはこれまでまったく縁がなかった俺には、幽奈さんの放つ「優しいお姉さま」オーラに耐性がなく、幽奈さんに見つめられているだけで目眩が起きてしまいそうだ。幽奈さんに会えただけでも獄界で生き返った意義はあったかもな。

「それで真生さんはこれからどうされるおつもりですか?」

「それは俺の方が訊きたいんですけど……。俺、どうすればいいんでしょうか?」

「私が真生を獄界に連れて来たわけだし、真生が獄界で生活できる環境が整うまではうちで責任を持って世話をしてあげなきゃと思って……。お父様、どうかしら?」

 霊奈が龍岳さんを見つめながら言った。

「うむ。これも何かの縁だろう。真生君、この家に住めば良い」

「本当ですか? ありがとうございます」

 地獄で仏とはこのことだ。見た目はちょっと強面の龍岳さんの顔が観音様に見えてきたぜ。

「それじゃ明日から、あんたの家を探してあげるわ。若い娘が三人もいる家に盛りの付いた犬を放し飼いにしておくわけにいかないからね」

 ――だから誰が盛りの付いた犬だ。それに家を借りるって俺はまだ何の収入源も持ってないぞ。霊奈の奴、優しいのやら冷たいのやら、さっぱり分からない奴だな。

「まあ、いきなり別の世界に来てしまって真生君も戸惑うしかないだろうから、しばらくここにいれば良い」

 ――さすがは龍岳さん。俺は心の中で霊奈にアッカンベーをしてやった。

「幽奈。二階の龍真の部屋が空いているだろう。真生君には龍真の部屋を使ってもらおう」

「はい。毎日お掃除はしていますから、いつでも使うことはできますよ」

「お兄様の部屋をこいつに……。それは……」

 霊奈は明らかに嫌な顔をした。――こいつはそんなに俺のことが嫌いなのかね。

「良いじゃない、霊奈。どうせ空き部屋なんですから」

「そうだよ。それに妖奈もお兄様が帰って来てくれたみたいで嬉しいかも」

「まあ……、二人がそう言うんなら……」

 幽奈さんと妖奈ちゃんの多数意見に霊奈も渋々従った。

 ――そういえば、霊奈や妖奈ちゃんが「お兄様」と呼ぶ龍真さんっていったい誰なんだろう? あの黒ローブの男が出した大鎌が龍真さんの携帯武具だって話もしていたよな。

「あの、……龍真さんって誰なんですか?」

 俺は龍岳さんの顔を見ながら訊いたが、答えたのは霊奈だった。

「私達の兄弟よ。幽奈の弟で私の兄。三年前に交通事故で死んでしまったけど……」

 霊奈は本当に悲しそうな表情を見せた。死んで三年経っているというのに、三姉妹の中で一人だけその傷がまだ癒えていないようだった。

「そうなのか…………。でも、本当に良いんですか? その……息子さんの部屋を俺なんかが使わせてもらって」

「かまわん。龍真が死んでもう三年になる。龍真の物はほとんど処分をして部屋には何も無い。気兼ねなく使ってもらえば良い」

 幽奈さんや妖奈ちゃんは嬉しそうだった。俺を龍真さんの代わりとして歓迎してくれているようだった。でも霊奈には……歓迎されていないことははっきりと分かった。少なくとも龍真さんの部屋を俺に使われることには抵抗感があるのだろう。

 龍岳さんもそんな霊奈の様子に気がついたようだ。

「霊奈。龍真はもう戻って来ないんだよ。お前もソウルハンターなら三年前に死んだ霊魂が今はどうなっているかくらいは分かっているだろう」

「…………はい」

「儂は真生君は龍真の代わりに神様が使わしてくれたんじゃないかと思えてならないのだ」

「えっ!」

「愛する息子に先に旅立たれた儂の気持ちも分かっておくれ。霊奈」

「あっ…………ごめんなさい。私なんかよりお父様の方がずっと辛かったはずなのに……」

 ――俺が龍岳さんの息子の代わり? 俺なんかで良いんだろうか? 龍岳さんが俺に何かを期待しているのであれば期待はずれになる公算が強いと思うのだが…………。でも、俺も行く所も無いんだから追い出されるまではご厚意に甘えるしかない。

 ぐぅ~――。

 ――まったく空気の読めない奴だ! 俺の腹の虫が応接間に響き渡った。

 とりあえず当面のねぐらを確保できたことで一安心した俺の体が次の要求を突き付けてきたようだ。……霊奈の奴、また俺を睨んでやがる。龍真さんは腹の虫を鳴らす事もなかったのか? 生理現象だから仕方無いだろう。

 妖奈ちゃんもお腹を抱えながら幽奈さんに向かって言った。

「そうだ。幽奈~。妖奈もお腹減った~」

「はいはい。それじゃ、ご飯にしましょうか。真生さんもどうぞ」

「えっ、でも急に来てしまって大丈夫なんですか?」

「ええ」

「幽奈は料理の天才だから、一人分くらいすぐ追加できちゃうんだよね」

 俺はみんなと一緒に廊下の奥にあるキッチンダイニングに行った。

 政治家の家だからお手伝いさんがいるかと思ったが、夕食の準備は幽奈さんの役目のようで霊奈と妖奈ちゃんも盛りつけや皿配りを手伝っていた。

「それじゃ、真生君はそこに座りたまえ」

 自分の部屋で着流しに着替えて来た龍岳さんの指示どおりに俺は食卓に座った。龍岳さんが長方形のテーブルの短辺に座り、龍岳さんから見て右側の長辺に、龍岳さんに近い方から幽奈さん、妖奈ちゃんが座り、龍岳さんから見て左側の長辺に龍岳さんに近い方から霊奈、そして俺が座った。

 夕食は、ほかほかご飯と味噌汁、トンカツに芋の煮っ転がし、サラダ、お新香というメニューで、ちゃんと俺の分もあった。

「いただきま~す」

 妖奈ちゃんの元気な声で夕食は始まった。

 しかし……、この料理の美味さは何だ。どのおかずも三つ星だ。

「これって、全部、幽奈さんの手作りなんですか?」

「ええ、料理は好きなんです」

 うちはお袋もパートで働いていたから、食事は冷凍食品かスーパーの総菜がほとんどだったからなあ。こんなに美味い手作りの食事は久しぶりだ。

「真生さん。お代わりもできますから遠慮なさらずにね」

「はい。ありがとうございます」

 気がつくと俺のお茶碗は既に空っぽだった。俺は一応遠慮がちにお代わりをお願いした。

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