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Powergame in The Hell   作者: 粟吹一夢
第二章
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獄界(9)

 スクーターは富士山の麓に一番近い場所に建つ西洋の城のような建物の前まで低空で飛んで行った。どうやらこの建物が地獄の本部棟のようだ。入り口には「霊魂管理庁」と書かれた看板が掛かっていた。

 霊奈は俺をつれて「捜索課」という看板の掛かった事務室に入って行くと、部屋の一番奥に置かれた立派な執務机に向かって座っている人物の前に立った。執務机には「捜索課長」という机上札が置かれていた。

 霊奈は捜索課長に事の顛末を報告した。捜索課長は見るからに黒人なのだが背広の胸に付けた名札には「小浜おばま」とあった。小浜課長は更に上に報告することを告げて、霊奈には本日はもう帰宅して良いと告げた。

 俺と霊奈は捜索課の部屋を出て建物の玄関に向かって歩き出した。

「それで俺の事を上司に報告して、この後はどうなるんだ?」

「とりあえず、あんたが地獄に行く必要はなくなったということは確かな事実として確認できたから、エンマにおけるあんたの属性データを修正する必要があるということを霊魂管理庁のエンマの管理部門に連絡をしたの」

「俺の属性データ?」

「あんたは地界から来た霊魂だったのよ。それが獄界で肉体を得て生き続けることになったから、獄界でのあんたの寿命予想をエンマが漏れなく行うためには、あんたのデータを現状に合致させる必要があるということよ」

「ふ~ん。それは誰がやるんだ?」

「さっきあんたを検査した時にエンマ自身が実行済みよ。ただしそれは飽くまで仮データだから、霊魂管理庁の複数の管理職の決裁を得た上、本データに変更する許可をエンマに与えることになるわね」

「けっこう面倒なんだな」

「エンマの機能を特定の人間が恣意的に運用することを防ぐためには仕方が無いのよ。エンマが一度下した予想が勝手に書き換えられるようにしなければならないからね」

 俺と霊奈は霊魂管理庁の玄関前に停めていた霊奈のエア・スクーターの所にやって来た。

「地獄の見学も以上よ。さて…………、あんた、これからどうする?」

地獄に行かなくても良くなったということは……、んっ、……待てよ。俺は借り物とはいえ肉体を得たんだから…………死んでないということだよな。

「あの~、霊奈」

「何?」

「……俺って生き返ったということだよな」

「そういうことになるわね」

「だったらさ、元の世界に戻してくれないかな」

「はあ~、あんた、やっぱり馬鹿なのね」

 霊奈は呆れた様子で俺の顔を睨んだ。

「な、何だよ。確かに勉強は苦手だが、今日、初めて会った女の子にそんなに何回も馬鹿呼ばわりされる筋合いは無いぞ!」

「何回言っても憶えられないあんたのことを『馬鹿』以外に的確に言い表す言葉を知らないわ。あのねえ、さっきも言ったでしょう。肉体を有したままトランスポイントを通過することはできないって。元の世界に戻るには、また霊魂だけになって行くしかないわよ」

「…………ということは、また、こっちでも死ななきゃ駄目ということか?」

「私達ソウルハンターのように訓練を積めば、幽体離脱をして元の世界に戻ることができるわよ。でも霊魂になって元の世界に戻ったって、さっきと同じように向こうの世界の誰とも話すことも接することもできないのよ」

「そうか……」

 どうやら獄界で生き返ってしまった俺は獄界でしか生きられないようだ。

「それじゃあ、俺はこれからどうしたら良いんだ?」

 誰も知り合いもおらず、帰るべき家も無い世界にいきなり放り込まれた俺は途方に暮れてしまうしかないだろう。このままホームレス生活を送るしかないのか?

「そうねえ……。仕方が無いわね。それじゃあ、とりあえず私の家に来る?」

「えっ、霊奈の家に……。ひょっとして一人暮らし?」

 ――主人公が一人暮らししている家に空から美少女が落下してくるっていうお決まりのパターンがあるくらいだから、その逆もあって良いよな?

「私に一人暮らしをしててほしいの? ……どういう設定でどういう期待をしているのかしら?」

「べ、別にちょっと確認してみただけだよ」

「とにかく、あんたを獄界に連れて来たのは私だし……。お父様に事情を話せば、二・三日は置いていただけるわよ」

「二・三日だけかよ」

「その間にあんたが住める家を探してあげるわ。それじゃ行きましょう」

 俺は霊奈が運転するエア・スクーターの後部座席から振り落とされないように苦労しながら、富士山山麓から、俺の知っている地図では東京方面に向かって飛んで行った。

 遠くに都会の夜景が見えてきた頃、俺はエア・スクーターの後ろの席から霊奈に話し掛けた。風圧がほとんどなく風を切る音もしなかったから、声を張り上げなくても話はできた。

「なあ、霊奈」

「何?」

「霊奈のお父さんって、さっき政党員って言ってたけど議員さんなのか?」

「そうよ。お父様は神聖自由党の副幹事長をしている国会議員よ」

 国会議員で政党の副幹事長! 新聞くらいはたまに読む俺も政党の副幹事長が偉い人だってことは分かる。しかも政権与党の副幹事長といえばすごくない? 

 ――霊奈って意外とお嬢様なんだな。自分の父親を「お父様」って呼んでいたし……。俺、どんな大豪邸に連れて行かれるんだろう? 逆「玉の輿」ルートのフラグが立ったのかも……。

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