表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Powergame in The Hell   作者: 粟吹一夢
第一章
1/48

プロローグ(1)

 ――綺麗な星空だ。

 東京の郊外で生まれ、ずっとそこで育った俺が、こんなに輝いている満天の星空を見たのは初めてかもしれない。

 しばらく気を失っていたようだ。気が付くと俺は仰向けになって星空を眺めていた。

 俺は仰向けのまま首を左右に振ってみたが、見えるのは星空の続きだけだった。

 そして俺は気が付いた。俺の背中には何も無いってことを。ベットも地面も。

 ――やれやれ。俺は夢を見ているようだ。

 俯せになってみよう。何が見えるだろうか?

 俺は首から肩を回すようにして俯せになった。そこには星の数ほどは多くないが、もっと明るい街の灯りが輝いていた。

 俺は雲のように空に浮かんでいた。

 ――んっ? 俺の真下の道路で赤色灯が回転しながら輝いている。その赤い光で蟻ん子のように人間が集まっていることが分かった。俺は地上に降りることにした。

 でも、どうすれば降りることができるんだ?

 悩む必要はなかった。俺が降りたいと念じただけでゆっくりと高度が下がっていった。

 道路に救急車とパトカーが止まっている。そのすぐ側にはボンネットがへこんだ乗用車が止まっていた。交通事故のようだ。乗用車がぶつかった相手はどこにいるんだろう?

 俺が周りを見渡していると、救急車がサイレンを鳴らしながら走り出し、その場から去って行った。救急車がいたスペースに広がった視野の中にめちゃくちゃに壊れた一台のスクーターがあった。

 どこかで見たことがあるような……。

 警官が免許証らしきものを見ながら、パトカーのドアの窓から延ばした無線機に向かって大きな声でしゃべっていた。

「え~、免許証によると、被害者は『えいきゅうしんせい』。性別は男。生年月日は……」

 変わった名前だな。俺の名前も結構変わっていると言われる。

「永久真生」と書いて「ながひさまお」と読む。「まお」なんて女の子のような名前で小さい頃はよくからかわれたものだが、今は「真に生きる」という意味が気に入ってたりする。一方、名字の方の「永久」を「ながひさ」とはなかなか読んでもらえない。「えいきゅう」さんなんて呼ばれることが多かった。

 ――――えいきゅうしんせい? それって……。

 俺は思わず警官の側に駆け寄った。ちょうどその時、小さな子供が人の輪の中から抜けて、パトカーに駆け寄ろうとした。

「あ~、こらこら。ぼく! 危ないから来ちゃ駄目だよ」

 警官はその子供に向かって注意をしたが、すぐ近くまで来ていた俺は無視していた。

 俺はもう高校生だし、許してくれるのかな?

 俺は警官に近づき、警官が手に持っていた免許証をのぞき込んだ。そこにあった写真には――俺の顔があった。警官は俺の免許証を手にしていた。

「なんで俺の免許証を持っているんですか?」

 俺は警官に向かって話しかけた。――――って無視かよ!

 俺は警官の肩をつついてみた。――――が、できなかった。俺の手はまるで三D映像のように警官の肩を通り抜けていた。

 何なんだ、これは?

 俺はもう一度、警官に話し掛けてみたが、また無視された。俺の声が聞こえていないのか?

 いや、無視ってレベルじゃない。そもそも俺の姿すら見えていないようだ。

 俺は回りを見渡してみたが、野次馬の誰一人として俺に注目している奴はいない。ドラマで見たことがある現場検証をやっているまん真ん中に立っているというのに……。

 そう言えば、俺は……どうして、ここにいるんだ?

 確か……………………、高校二年生になって初めての金曜日の夜だった。

 俺は愛用の原付スクーターに乗っていた。……そうだ。俺は妹の美咲に、夕食前にアイスクリームを買ってこいと命令されてコンビニに行ってたんだった。

 えっ、妹に命令されたって? ――はははは。そうさ。俺は妹思いの優しい兄貴なのさ。

 ――というのは嘘で、命令をきかないとお袋にどんな告げ口をされるか分からないからな。一昨日だって、俺愛用のムフフな写真がいっぱいの大人の参考書の隠し場所をお袋に告ったらしい。定番のベッドの下ではなく、本棚に入れている本当の参考書の後ろに隠しておいたのに何で分かったんだ? ……美咲の奴、俺がいない間に俺の部屋をがさ入れしていやがるんじゃないだろうな。まったく。

 ――などと美咲に文句を言いたい事ばかりを思い出してもしょうがない。

 もう一度、気を失う前のことを思い出してみよう。……コンビニでアイスクリームを買った記憶は無い。そうすると……俺はコンビニに行き着いてないということか?

 スクーターに乗って、次の角を曲がるとコンビニが見えるという時に…………。そうだ。車のヘッドライトの光に目が眩んで、その後…………。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ